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■16代目クラウンはクロスオーバーからデビュー
16代目となる新型クラウンが、クロスオーバー/セダン/スポーツ/エステートという4つのバリエーションを用意するという、誰も予想していなかったカタチでデビューすることが話題となっています。
4バリエーションを用意するということが、クラウンの革新と挑戦というDNAを表現しています。
そんな新型クラウンですが、まずはクロスオーバーからローンチになることも明らかとなっています。
クラウンクロスオーバーは、SUVの車台に4ドアクーペボディを載せたような、まさにドラスティックな変革を体で示すようなスタイルが特徴。価格帯は435万円~640万円と、従来よりも身近な設定になっています。
パワートレインは、2.4Lターボハイブリッドと2.5Lハイブリッドの2種類。2.4Lターボ版は「デュアルブーストハイブリッド」と名付けられたもので、燃費性能よりもパフォーマンスに振った電動パワートレイン。すでに次期型のレクサスRXに採用されることも公言されているハイブリッドシステムです。
もう一つの2.5Lハイブリッドは、RAV4やハリアーといったトヨタのSUVモデルではおなじみのシステム。クラウンクロスオーバーの場合は、バッテリーに最新のバイポーラ型ニッケル水素電池を使うなどアップデートしています。
こうした背景もあって、新しいクラウンクロスオーバーは、ハリアーの兄貴分ではないかという見方もあります。昭和の、クラウンが売れに売れていた時代には、「社長はクラウン、部長はマークII」といったヒエラルキーをわかりやすくするブランドイメージもありました。
思えば、マークIIとクラウンというのは、搭載エンジンが被っているなどメカニズムでの共通性もありました。ハリアーが売れまくっている2020年代に、ハリアーとクラウン(クロスオーバー)がペアとなったブランディングというのは、温故知新的な戦略として、たしかにアリなのかもしれません。
つまりメカニズム的に、新型クラウンクロスオーバーはハリアーのそれを応用しているのではないか、という見方もできるのです。
●RAV4などでおなじみGA-Kプラットフォームなのか?
ハリアーとRAV4は同じ部署チームによって開発された、実質的な兄弟車であることはよく知られています。
その基本となるアーキテクチャは「GA-Kプラットフォーム」と呼ばれるもので、エンジン横置きを基本とした純エンジン車とハイブリッド車に対応したプラットフォームとなっています。
はたして、新型クラウンクロスオーバーも同じプラットフォームを使っているのでしょうか?
「新型クラウンクロスオーバーはGA-Kプラットフォームを使っている」と断言しているメディアも少なからずあるようです。
しかし筆者がトヨタのエンジニアに、新型クラウンクロスオーバーのアーキテクチャはGA-Kプラットフォームであるかどうかを質問したところ、「GA-Kプラットフォームとはいえない」という答えが帰ってきました。
●リヤ・マルチリンクのプレミアム系プラットフォーム
トヨタが公開している、クラウンクロスオーバーのプラットフォームを説明する図版によると、前半分はSUVプラットフォーム、後ろ半分はSDN(セダン)プラットフォームという風になっています。
この図版と、取材した範囲での得た情報を合わせると、新型クラウンクロスオーバーのプラットフォームというのは、ハリアーなどのSUVモデルで使われているGA-Kプラットフォームのフロント周りを利用しながら、リヤを新設計したものといえるのです。
実際、リヤサスペンションの形式をみても、ハリアーなどはダブルウィッシュボーンですが、クラウンクロスオーバーはマルチリンクとなっています。しかも、クラウンクロスオーバーは全グレードでDRS(後輪操舵システム)を前提としたリヤ周りとなっているのです。
こうした点からすると、単純に新型クラウンクロスオーバーはGA-Kプラットフォームに基づいていると断言するのは適切ではないかもしれません。
ただし、ホイールベースが同じ長さで、リヤサスペンションの形式も新型クラウンクロスオーバーと同じとなっている次期レクサスRXについては、「GA-Kプラットフォーム」を採用しているといった表現がなされています。
リヤにマルチリンクを採用したGA-Kプレミアムというべき改良型プラットフォームを採用しているのが、新型クラウンクロスオーバーと理解すべきです。
いずれにしても、レクサスと同じアーキテクチャを採用しているとなれば、トヨタのフラッグシップとしてのクラウンというキャラクターにぴったりのメカニズムともいえるでしょう。
●クラウンスポーツはBEVだけとは限らない
さて、新型クラウンをハードウェアの構成的な視点で見たときに、話題を集めているもう一つのバリエーションがクラウンスポーツです。
こちらについては、単純にいまどきのスポーティなSUVルックであることからも人気が高まりそうという評価もありますが、なによりそのスタイルが事前にチラ見せされていた経緯が注目ポイントです。
クラウンスポーツの外観は、2021年12月にトヨタが一挙に15台ものBEV(電気自動車)を並べて見せたときの一台「クロスオーバーEV」とほぼ同じといえるからです。半年ほど前に、シレッと次期クラウンになるボディを見せていたということに気づいた人はほとんどいなかったことでしょう。
そして、クラウンスポーツ=クロスオーバーEVだとすれば、クラウンスポーツは電気自動車として発売されると考えるのが自然です。そのため、クラウンスポーツはボディサイズなどからbZ4Xの兄貴分になるのではないか、という見方もあります。
ただし、クラウンスポーツはBEVオンリーの設定になるとは現時点では誰も公言していません。むしろ新型クラウンにBEVが設定されるということについて、トヨタは積極的にアピールしていない印象です。
もしクラウンスポーツがBEVだけになるのだとすれば、グローバル化するクラウンにはBEVがあるとアピールするほうが得策に感じますが、なぜでしょうか。
2021年12月に、このカタチのBEVが出ると発表しているのですから、まさか「クラウンのデザインスタディを見せただけで、実際に登場するBEVとは無関係」なんて無責任なことはないでしょう。ですから、クラウンスポーツにBEVが用意されるのは確実と信じたいところです。
その上で、クラウンの開発に関わったエンジニアから聞いた話をまとめると、クラウンスポーツは新型クラウンファミリーの中で、もっともスポーティな走りが楽しめる存在として設定されているといいます。
名前の通り、クラウンのスポーツ版という位置づけであるとすれば、BEVの設定もあるのでしょうが、クラウンクロスオーバーと同じ2.4Lターボ「デュアルブーストハイブリッド」を搭載する仕様もあると考えるほうが自然と予想されます。
はたしてクラウンスポーツはどのようなパワートレインを搭載してデビューするのでしょうか。