■シビック タイプRへの期待感がさらに高まった
2021年8月に、1.5L直列4気筒ターボエンジンを搭載したモデルが登場したホンダ・シビック。
2022年6月には2L直列4気筒エンジンと駆動・発電を行う2つのモーターを組み合わせたハイブリッドシステム、e:HEVを搭載したシビックe:HEVを追加しました。
1.5Lターボ車には6速MT車を設定するなど、スポーティさを押し出しているシビック。今回は、追加されたばかりのシビックe:HEVに試乗することができたので、インプレッションを紹介します。
シビックは1972年に初代モデルを販売開始し、今年で50周年を迎えるグローバルモデルです。いつの時代も一歩先のニーズを捉えて、常に進化し続け世界で累計約2,700万台も販売されています。
そんな筆者も初めての愛車が3代目の通称ワンダーシビックでした。ZC型1.6L直列4気筒DOHCエンジンを搭載したSi…ではありませんでしたが、スポーツ走行は十分楽しむことができました。
今回試乗したシビックe:HEVの車両本体価格は394万200円と、自分が乗っていたシビックと比べるとかなり立派な価格となっています。ボディサイズも全長4,550mm×全幅1,800mm×全高1,415mmと大型化していますが、立体駐車場に対応しているのは魅力です。
2Lガソリンエンジンと2つのモーターを組み合わせたe:HEVと呼ばれるハイブリッドシステムは、ステップワゴンをはじめ、CR-V、アコードなど多くの車種が搭載していますが、シビックには新開発のシステムが搭載されているのが注目のポイントです。
シビックのe:HEVは、新開発のエンジンと進化したハイブリッドユニットを採用しています。まずエンジンですが、熱効率に優れたアトキンソンサイクルに加えて、燃料をシリンダー内に直接噴射する直噴システムを新たに採用しました。
この結果、燃料を無駄なく燃焼させることができ、従来のe:HEV用の2Lエンジに対して、高トルク化とエンジンモードでの走行可能領域の拡大を実現し、WLTCモード24.2km/Lという優れた燃費性能を実現しています。また、低回転域から高回転まで幅広い領域でエミッションを抑制し、燃費や排出ガスのクリーン性能。そして静粛性を向上させています。
一方のハイブリッドユニットは、PCU(パワーコントロールユニット)の軽量化と高出力化を実施することで、力強い駆動を実現しています。また、IPU(インテリジェントパワーユニット)は内蔵するリチウムイオンバッテリーに高さの低い新しいセルを採用しました。
これにより、バッテリーモジュールの重量あたりのエネルギー密度を高めつつ、パッケージ効率も向上させています。さらに、重量物であるIPUの配置を工夫したことで、車体の低重心化とボディの高剛性化を実現しました。
そしてサスペンションのショックアブソーバーの専用設定やバネ下重量比率の低減によって、一体感のあるハンドリングや挙動にぶれのない安定感のある走りを実現しています。
●とにかく静粛性が高いシビックe:HEV
シビックe:HEVに乗って、まず感じたのは静粛性の高さです。元々e:HEVは、街乗りなどでは積極的にモーターによるEV走行をするハイブリッドシステムです。その反面、エンジンが掛かったときの振動と騒音は若干気になる点でした。
しかし、シビックに搭載されたe:HEVは直噴されたエンジン。そして高出力化されたPCUによって、エネルギーフローメーターを見ていても、いつエンジンが掛かったのかわからないほど高い静粛性を実現し、振動を抑えています。
バッテリーを搭載したシビックe:HEVですが、トランク容量などの利便性はガソリン車からスポイルされていないのが特徴です。
また、外観では、フロントアッパーグリルとドアガラスまわりのサッシュのグロスブラック化。さらにドアミラーもブラックにするなど専用デザインを採用していますが、個人的にはもう少しe:HEVであることを強調してもいいかもと感じました。
街乗りでの高い静粛性、そしてフラットな乗り味は、従来のシビックというモデルのイメージを覆すほどの上質さを実現しています。その反面、ワインディングなどを走行すると、ドライバーの意志にマッチしたハンドリング性能や加速性能、そしてロールを抑えたスポーティな走りを楽しむことができます。
シビックe:HEVは、高級車とスポーティモデルという相反するキャラクターを1台に凝縮した、新感覚のハイブリッド車というモデルに仕上げられています。
ハイブリッド車というと燃費重視で走りは味気ない!と言われていましたが、シビックe:HEVはエンジンとモーターそれぞれの特性を活かし、シーンに合わせた走りを演出することができます。
2020年8月でインサイトやアコードなどが生産終了とアナウンスされていますが、正直シビックがここまで走りやデザインの質感をアップすれば十分カバーできると言えるでしょう。
半導体不足やコロナウイルス感染症などによって、自動車メーカーは選択と集中をせざるをえない状況です。そんな中、スポーティなイメージはそのまま、全方位の質感を向上させたシビックは、様々なニーズに応えることはできるでしょう。
(文、写真:萩原 文博)