「あおり運転」の厳罰化から2年後も被害経験者は51.3%、対処法は「道を譲った」が最多

■あおり運転の2022年実態調査を紹介

ここ数年、「あおり運転」が社会問題となっています。急な割り込み、不要な急ブレーキ、車間距離の不保持などによる危険な妨害運転のことで、2020年6月30日には罰則が設けられた改正道路交通法も施行されました。

2022年あおり運転実態調査
「あおり運転」の厳罰化から2年後も被害の経験者は51.3%

罰則の設定から2年が経ったわけですが、実際にあおり運転の被害は減少しているのでしょうか? また、もし被害に遭った場合、一般のドライバーはどんな対象法を行っていることが多いのでしょうか?

損害保険を扱うチューリッヒ保険会社では、全国のドライバー2230名を対象とした「あおり運転実態調査」を実施。

2018年から毎年行い、5年目となる今回の調査では、あおり運転をされた経験があると回答したドライバーは51.3%で、依然として半数以上いることが判明。

また、被害内容は「車体を接近させる挑発行為」が75.0%で最も多く、対処法では「道を譲った」が43.3%で最多であることなどが分かりました。

●あおり運転をされた経験があるドライバーは51.3%

今回の調査は、2022年6月11日〜6月13日の期間に、1週間に1回以上運転している全国のドライバー2230名を対象として、インターネットによるアンケート形式で行われたものです。

調査では、まず、「あおり運転をされた経験」があるかどうかを質問。その結果は以下の通りです。

2022年あおり運転実態調査
あおり運転をされた経験はあるか(出展:チューリッヒ保険会社)

「ある」 51.3%
「ない」 48.6%

調査を行ったチューリッヒ保険会社によれば、あおり運転をされた経験のあるドライバーは「2018年の調査開始時(70.4%)以降、減少傾向ではあるものの、依然として半数を占める」といいます。

また、調査では、近年のあおり運転に関する報道を受けて、「あおり運転を受けないよう以前より注意して運転しているか」といった質問も実施。

その結果、「意識するようになった」または「強く意識するようになった」と答えたドライバーは合計で77.0%に。あおり運転に対する関心が高まっていることがうかがえます。

2022年あおり運転実態調査
あおり運転の厳罰化で危険運転が減少すると思うか(出展:チューリッヒ保険会社)

さらに調査では、前述のあおり運転の厳罰化を盛り込んだ改正道路交通法により、「危険運転が減少すると思うか」といった内容も質問しています。

結果は、「危険運転が減少すると思う」と回答したドライバーが63.0%と過半数を超えている一方、「危険運転が減少しない」と答えた人も23.0%で一定数いることが判明。

また、「減少しない」理由には「危険な運転をする人の心理や行動は変わらないと思う」が最も多い結果となったそうです。

●あおり運転被害は「自動車に激しく接近」が75.0%で最多

調査では、次に、「あおり運転に遭遇した時に受けた被害」についても質問しています(複数回答可)。その結果、トップ3は以下のようになりました。

2022年あおり運転実態調査
あおり運転の被害には激しく接近し、もっと速く走るように挑発する行為が多い

1位:「あなたの自動車に激しく接近し、もっと速く走るように挑発してきた」 75.0%
2位:「車体を接近させて、幅寄せされた」 21.5%
3位:「必要のないハイビームをされた」 20.0%

2022年あおり運転実態調査
どんなあおり運転をされたか(出展:チューリッヒ保険会社)

ほかにも、「前方を走るクルマに、不必要な急ブレーキをかけられた」「左側から追い越しされた」「執拗にクラクションを鳴らされた」がいずれも17.3%で同率4位に。

「急ブレーキや急ハンドルで避けなければいけないような、進路変更をされた」が16.0%で5位となっています。

●対処法は「道を譲った」が43.3%で1位

また、調査では、「あおり運転を受けたときにとった対処法」についても質問。トップ3は

2022年あおり運転実態調査
あおり運転を受けたときにとった対処法(出展:チューリッヒ保険会社)

1位:「道を譲った」 43.3%
2位:「何もしなかった」 37.0%
3位:「他の道に逃げた」 14.5%

で、主に「やり過ごす」対応をとったドライバーが目立つ結果となっています。

●きっかけで多いのは「車線変更をした」

調査では、さらに、あおり運転を受けたことがあるドライバーに対し、「あおり運転をされたきっかけと考えられる運転行動」についても聞いています。その結果、トップ3は以下の通りです。

2022年あおり運転実態調査
あおり運転をされたきっかけと考えられる運転行動(出展:チューリッヒ保険会社)

1位:「車線変更をした」 24.4%
2位:「スピードが遅かった」 17.1%
3位:「速度制限で走っていた」 14.6%

また、4位には「合流をした(14.6%)」が入っていることから、あおり運転のきっかけと考えられる上位の運転行動は、スピードや進路変更にまつわる行為と感じているドライバーが多い傾向にあるといえます。

●被害にあわないための工夫で最多は「車間距離」

調査は、ほかにも、あおり運転を受けたことがあるドライバーに、「あおり運転をされないように工夫していること」についても質問しています。その結果、トップ3は次のようになりました。

2022年あおり運転実態調査
あおり運転をされないように工夫していること(出展:チューリッヒ保険会社)

1位:「車間距離をしっかりとる」 55.5%
2位:「ウィンカーは早めに出すようにしている」 40.0%
3位:「周囲をよく見て、相手に譲るようにしている」 35.5%

2022年あおり運転実態調査
あおり運転をうけないための工夫で最多は「車間距離」

周りのドライバーを気遣い、刺激しない運転を心がけている人が目立つ結果になったようです。

●ドライブレコーダーの普及で被害は減る?

あおり運転の対策としては、よくドライブレコーダーを装備することがいわれますが、実際に一般のドライバーの利用状況はどうなのでしょうか?

2022年あおり運転実態調査
ドライブレコーダーの利用者数は増加傾向

その点について、調査では、自分のクルマに「ドライブレコーダーを取り付けているか」どうかも質問。結果は

「はい」 54.7%
「いいえ」 45.3%

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ドライブレコーダーを取り付けているか(出展:チューリッヒ保険会社)

と、利用者が非利用を上回ることに。ちなみに、この結果は、前年より4.8ポイント上昇しており、ドライブレコーダーの利用者が増えていることが分かります。

ちなみに調査では、「ドライブレコーダーの普及であおり運転が減少すると思うか」も質問。

「減少すると思う」「どちらかといえば減少すると思う」の合計が69.6%となり、ドライブレコーダー普及への期待が大きい結果となりました。

●あおり運転は最大で懲役5年、100万円以下の罰金

2020年6月30日に施行された改正道路交通法では、他の車両などの通行を妨害する目的で、車間距離不保持や急ブレーキ禁止違反などの違反を行った場合、最大で3年の懲役、または50万円以下の罰金に処せられます。

2022年あおり運転実態調査
あおり運転で捕まると厳罰が処せられる

また、妨害運転により著しい交通の危険を生じさせた場合は、最大で5年の懲役または100万円以下の罰金を課せられるほか、あおり運転で捕まると、免許は取り消しになります。

このように、かなりの厳罰が処せられるあおり運転ですが、今回の調査をみる限り、なかなか減らないのが現状のようです。

2022年あおり運転実態調査
一時の感情的な理由などで行う危険な妨害行為が重大事故につながる

あおり運転については、たとえば2017年におきた「東名あおり事故」(東名高速で妨害運転をうけた夫婦がトラックに追突されて死亡)など、痛ましい事故も数多くあります。

重大事故に繫がるだけに、一時の感情的な理由などで危険な妨害行為を行うなどの卑劣な運転は、もっと減って欲しいですし、できればゼロになることが理想ですね。

(文:平塚 直樹 *写真やイラストはすべてイメージです)

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この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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