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■バンパーの形状、ライトまわりの変更などでスポーティなエクステリアに変身
フォルクスワーゲン・ポロは、Bセグメントのベンチマークとして欧州を中心に定番モデルとして君臨しています。「MQB」を使う現行型は6代目、初代は1975年に全長3500mm台のコンパクトカーとして誕生しました。
すでに派生モデルを含めると世界累計2050万台(ポロ単体では、1800万台)に達し、日本でも累計30万台を達成しています。男性のみならず女性からの支持も多く集めているのも特徴です。
現行型は、2018年3月に日本デビュー。「MQB」をベースに、ホイールベースの伸長もあり、走りから居住性、先進安全装備まで全方位磨かれています。
現行型(マイナーチェンジ前)のエクステリアは、ややぽっちゃりとした印象で、インテリアは質感や先進性も磨かれているほか、2020年の一部改良で最新のコネクティビティも用意されています。
2022年6月に受けたマイナーチェンジでは、とくにエクステリアの刷新が目を惹きます。バンパー形状の変更により、マイナーチェンジ前よりも全長が10~25mm(グレードにより異なり)ストレッチされ、全長は4085mmとなっています(全幅と全高、ホイールベースは変更なし)。
改良前より一気にシャープになった外観は、フロントバンパーの形状変更やLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」をはじめ、LEDストリップがヘッドライトの下縁に沿って縁取られるというユニークな形状になった効果も大きそう。
リヤビューも二分割化された立体的なテールランプの採用で、よりスマートになったように映ります。
●タッチコントロール式エアコンディショナーパネルやデジタルメータークラスターを標準化
インテリアもより先進的で上質感のある仕上がりになっています。先進性に寄与しているのがデジタルメータークラスターとタッチコントロール式エアコンパネルの採用。ナビゲーションでは、9.2インチの純正インフォテイメントシステム「Discover Pro」が用意されています。
エアコンパネルは、軽く触れるだけで操作できます。一方で、繊細な操作に対しては従来のダイヤル式の方が向いているように感じられます。また、「Discover Pro」は、日本製ナビに慣れた身では操作に慣れを擁するものの、ユーザー(オーナー)になれば習得できそう。
一方で、初めてだと操作に戸惑うのは間違いなく、操作に慣れが必要なナビゲーションをやめてしまい、スマホ連携ディスプレイオーディオに特化するような割り切りもそろそろ必要かもしれません。
走りの面では、マイナーチェンジ前と大きく変わっている印象は受けません。エンジンは改良前の「DKL」から「DLA」型の最新世代の1.0TSIエンジンに変更されています。
なお、マイナーチェンジ前の「TSI R-Line」は、1.0Lではなく1.5Lでしたが、マイナーチェンジを機に全車最新の1.0TSIに変わっています。
「R-Line」をのぞき先代と同じ排気量の1.0Lながら、ミラーサイクル燃焼プロセス、バリアブルターボジオメトリー機構の採用をはじめ、ガソリンエンジンPMフィルターも搭載され、厳しい環境規制にも準拠。最高出力は95PS/5000-5500rpm、最大トルクは175Nm/1600-3500rpmで、スペック自体はマイナーチェンジ前と同値です。
新エンジンの主な狙いは、パワーやトルクの向上ではなく、排ガス対策にあります。さらに、WLTCモード燃費は17.1km/Lになり、改良前の16.8km/Lから若干の向上も図られています。組み合わされるトランスミッションは、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)の7速DSG。
●軽快でスポーティなハンドリングが魅力の「TSI R-Line」
今回、筆者が試乗したのは、スポーティグレードの「TSI R-Line」でした。同エンジンは、音・振動面で3気筒であることを感じさせない静粛性だけでなく、山岳路でもパワー不足を抱かせません。
スペックこそ変わっていませんが、改良前よりも若干トルク感が増し、エンジンのレスポンスもより高まっているように感じられます。7速DSGは、発進時や極低速域に少し「間」があるような変速マナーで低いギヤでは、変速のラグもわずかに感じさせます。
一方で、年々と変速フィールが改善されているのも確かで、機構的に宿命となるゆえの若干のクセを感じさせるものの、2ペダルモデルとして十分に高い完成度に達しています。
スポーティな走りを楽しむ際は、DCTならではのダイレクト感のある変速フィールが美点になり、ハイペースで山道や高速道路などを駆け抜ける時などは、Bセグメントのコンパクトカーの中でも切れ味鋭い走りを容易に引き出せます。「TSI R-Line」は、マイナーチェンジ前と同様、引き締まった足まわりになっています。
一方で、専用スポーツサスペンションや電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」が標準化されているのに加えて、唯一となる215/45R17タイヤを履いていることを考えると十分に納得できる範囲に収まっていて、タイトコーナーや高速コーナリングもラクにクリアするスポーティなフットワークは、「R-Line」の名に恥じない印象を受けます。
先進安全装備では、アダプティブクルーズコントロール「ACC(全車速追従機能付)」と同一車線内全車速運転支援システムの「Travel Assist」は、「TSI Style」以上に標準で、装備面と価格面で最もバランスが取れているのが「TSI Style」。
価格は324万5000円で、その下の「TSI Active」の282万1900円よりも42万円ほど高くなりますが、高速道路を使ったロングドライブが多いのなら大いに価値があります。一方で、街乗り中心であれば「TSI Active」を選ぶ手も十分にありそうです。
なお、半導体などの部品不足により初めてレスオプションが設定されています。「TSI Style」「 TSI R-Line」に設定される「Side Assist Plus」レスオプションは、マイナス2万8600円となるだけでなく、より早い納車が期待できるそうです。
フォルクスワーゲン・ポロが分類されるBセグメントは、日本のコンパクトカーとも競合するはずで、マイナーチェンジを受けたポロは、スタイリッシュになったエクステリア、最新のエンジンなどにより洗練された雰囲気と鋭い走りを享受できます。
高速道路を使って巡航する際の快適性や運転のしやすさなども大きな美点です。一方で、ライバルのプジョー208は、バッテリーEVも設定していて、ルノー ルーテシアは燃費もいいフルハイブリッドを追加しています。フォルクスワーゲン・ポロは、ガソリンエンジン車のみという品揃えで、新しもの好き(日本の輸入車ユーザーには多い?)には少し物足りなさも抱かせるかも知れません。
●ボディサイズ:全長4085×全幅1750×全高1450mm
●価格帯:257万2000円〜329万9000円
(文:塚田勝弘 /写真:フォルクスワーゲン、塚田勝弘)