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■世界の自動車メーカー勢力図に大きな影響を与えるFCAとPSAの合併
2020(平成32)年7月15日、「FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)」と「PSA(プジョー・シトロエン)」が、対等合併後の新たな新会社グループ名を「ステランティス」とすることを発表。正式な経営統合は翌2021年1月16日に行われました。FCAとPSAはいずれも長い歴史をもつ企業であり、世界の自動車メーカーの勢力図に大きな影響を与えることになります。
●フィアットが、クライスラーを傘下にしてFCA設立
FCAは、イタリアを代表する自動車メーカーのフィアットが2014年にクライスラーを買収して結成されました。FCAのブランドは、フィアットを中心にランチア、アルファロメオ、クライスラー、ジープなど多彩な自動車メーカーから成ります。
フィアットは、1899年に養蚕業を営んでいたジョバンニ・アニエッリを中心に9人の実業家によって設立。ドイツメーカーの後を追って、イタリアを代表する自動車メーカーへと成長しましたが、1970年代のオイルショックで経営危機となり、新車が出せない状態が続きました。しかし、1980年発売の「パンダ」と1983年の「ウーノ」という小型車がヒットして立て直し、1990年代には完全復活しました。
一方のクライスラーは1998年に経営悪化に陥り、ダイムラー・ベンツと合併しましたが、アライアンスの成果が出せないまま2007年に関係を解消。その後、2009年に事実上倒産し、その年にフィアットの傘下に入り、2014年にFCAグループの一員となりました。
●プジョーがシトロエンを傘下にしてPSA設立
PSAは、プジョーが経営難に陥っていたシトロエンを1976年に傘下に収めることで結成されました。PSAは、シトロエン、オペルなどを傘下に収める自動車メーカーグループです。
プジョーの起源は、粉焼きや穀物製粉機、金属製造業などを行っていたプジョー一族ですが、自動車メーカーとしての創業は1896年です。最初のクルマは1893年の「タイプ3」、その後の第1次世界大戦中には、戦車や飛行機のエンジンを製造します。戦後、本格的なクルマづくりに取り組み、1960年に「404」、1968年には上級モデルの「504」が好評を得て、フランスを代表する自動車メーカーへと成長します。
一方のシトロエンは、アンドレ・シトロエンが特殊な歯車「ダブルヘリカルギヤ」の製造で成功した資金をもとに1919年に創業し、「タイプA/10CV」というモデルの発売を始めました。シトロエンの大きな成果は、欧州初の大量生産システムを導入して低価格で高品質なクルマの供給を実現したことです。しかし20世紀後半になると経営難に陥り、1976年にプジョーが傘下に収めたことでPSAが誕生しました。
●「VW」「トヨタ」「ルノー・日産・三菱アライアンス」に続く世界4位の自動車メーカーの誕生
ステランティスは、ラテン語の「星たちとともに輝く」という意味です。新しい社名は、企業ブランドとしてグループ全体で共有しますが、フィアットやアルファロメオ、プジョー、シトロエン、オペルなど全13ブランドの名称やロゴに変更はなく、引き続き使用するとのこと。
コロナ前の2019年の実績では、FCAとPSAを合わせると世界販売台数は800万台近い規模になり、VW、トヨタ、ルノー・日産・三菱アライアンスに続く世界4位となり、一大勢力のひとつになります。
自動車メーカーの再編は、ステランティスの誕生である程度落ち着きそうです。あとはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の開発をめぐって、自動車メーカーとサプライヤー、ソフトウェア企業、電子部品企業との垣根を超えた提携、再編が加速しそうですね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)