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■日本向けの新スタッドレスタイヤ「アイス・ゼロ・アシンメトリコ」も発表
●ピレリの150年は1872年、ゴム製品の会社から始まった
2022年、ピレリが150周年を迎えたそうです。東京三田にある、在日本イタリア大使館にてそれを記念したお祝いと新製品の発表会が開催されました。
ピレリと言えば、我々スーパーカー世代には超憧れのタイヤでしたね。カウンタックに装着されるP7が、とにかくその速さを支える象徴であり、カウンタックは買えずとも、P7だったら買えるかも。日本車に合うサイズが有るのだろうか?と妄想しつつ日々自動車雑誌のページを捲っていたものです。
扁平タイヤというのもピレリから知ったように思います。当時は日本人の履物は必ずしも靴とは限らず、下駄や摂田、草履なども珍しくなく、日本人の足は「甲高扁平足」などと大人は話していたようで、扁平と言えば文化的でない人の足を指し、よろしくない表現だったようですが、スーパーカー少年たちにとっては、扁平と言えばかっちょいいスポーツカーの足元のみを想像していたのです。
今現在、ピレリは大手タイヤメーカーのひとつであることは間違いないでしょうが、創業から150年を迎えたとお聞きして「あれ? 150年前って自動車用タイヤが普及している頃ではないな」と思うかたも多いことでしょう。
ピレリは1872年1月28日、創業者であるジョバンニ・バティスタ・ピレリがミラノに「G.B.Pirelli&C.」を設立したのが始まりだそうで、当時からゴム製品を製造する会社でした。
と言っても、創業当時はタイヤではなく、工業や機械に使用されるゴム製品を中心に生産していたそうで、その後、電気伝送ケーブル分野で大きく成長します。
タイヤ分野では、1890年に二輪用タイヤを生産開始、1901年に自動車用タイヤ「Ercole(エルコーレ)」を発表し、1907年には「北京-パリ大陸横断ラリー」で他チームを20日以上引き離してゴールした「Itala(イターラ)」にピレリタイヤが装着されていたそうで、ピレリの名声が高まったと言います。
海外進出も早く、スペインやアルゼンチンなどにも工場進出し、第一次世界大戦、第二次世界大戦など、時代に翻弄されながらも軍事需要などもありながら、大衆車への採用、モータースポーツでの活躍など順調にタイヤ部門は拡大していきます。
1971年にタイヤP7、1985年にはP Zeroを発売、F1への復帰など、高性能タイヤのイメージを強めつつも、経営面では紆余曲折あったのだそう。
そうして、2015年、古くからの株主というカムフィン、ケムチャイナ、Ltiが上場廃止を決定し、産業用タイヤ部門を切り離して、コンシューマー向けタイヤに絞り込んで2017年に再上場を遂げます。
後半はだいぶ端折りましたが、ピレリカレンダーを始め、文化やスポーツ分野へも積極的にサポートを続けています。
●日本の降雪事情に合わせて開発されたアイス・ゼロ・アシンメトリコ
そんなピレリが今回発表したのは、日本向けスタッドレスタイヤ、「ICE ZERO ASIMMETRICO」です。日本市場を最重要視した製品で、その名の通り、日本のスタッドレス需要でもっとも重視されるというアイス性能を高めた製品になっています。
近年、サマータイヤとウインタータイヤの間に、一年中使えるオールシーズンタイヤが増加傾向にあり、その分、ウインタータイヤはより「冬向け」を強くすることができ、「ICE ZERO ASIMMETRICO」もウインター性能を重視した設計となっているとのこと。
技術的には、従来の3Dサイプに2Dサイプを組み合わせ、アイスブレーキ性能を向上。スクエアブロックとダブルサイド・トゥ・サイドグルーブが氷雪、ウェット路面などに対応するとともに、ユニークなトレッドパターンを見せてくれます。
また、新しいコンパウンド(ゴムの材質)の採用で雪、氷、ウェットでのグリップ力を向上、低温時の安全と経年劣化に強くなったとしています。
ところで、イタリア大使館の庭園の奥、ちょっとした雑木林のような場所には赤穂浪士の四十七士を祀った碑があります。この地は元々伊予松山藩松平家の中屋敷だったそうで、大石主税(ちから)ら十士(10名)赤穂浪士が切腹した地でもあるそうです。イタリア大使館となってからの1939(昭和14)年、当時の在日イタリア大使によってこの碑が建てられたとか。日本の歴史、文化に対してのリスペクトでしょうか。
「ICE ZERO ASIMMETRICO」は中国の工場で生産され、一部は中国やカナダで販売されるものの、日本向けに開発され、そのほとんどが日本へ輸出されるのだそうです。
日本の少年たちがイタリアのスーパーカーに憧れたり、イタリアの大使が日本文化に敬意を払ってくれたり、なにかと関わりを感じます。日本向けの製品を製造するというのも単なる商売というだけでない、繋がりがありそうで、日本の冬に見合った性能を発揮するタイヤに仕上がってるのではないか、と予感させてくれました。
(文・写真:クリッカー編集長 小林和久)
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