トヨタとスバルの電気自動車が採用した「ハゴロモメーター」は2020年代の流行になるか【週刊クルマのミライ】

■ユニークなトップマウントメーター

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ブラック部分全体がメーターというわけではなく中央に7インチのディスプレイが置かれている。

トヨタスバルが共同開発した電気自動車、「トヨタ・bZ4X」と「スバル・ソルテラ」は電気自動車でありながら、エンジン車から乗り換えても違和感の少ないドライブフィールを狙っていることが特徴です。電気自動車が、”新しいもの”好きの乗り物から普及フェイズに入っていくことを象徴しているような乗り味ともいえます。

とはいえ、そのドライビングシートに腰をおろすと、最新の電気自動車らしいユニークな光景が目に飛び込んできます。

それがステアリングホイールの上方に配置された「トップマウントメーター」です。

従来的なクルマであれば、メーターはステアリングホイールの内側に視線を送ることで確認するレイアウトとなっていますが、bZ4X、ソルテラではステアリングホイールの上から覗き込むような位置関係になっています。

こうしたコクピットの作り方はフランスのプジョーも採用していますが、けっしてその真似をしたわけではありません。bZ4X、ソルテラにおけるトップマウントメーターというアイデアのルーツは、初代プリウスにあるといいます。

覚えている方も少なくなっているかもしれませんが、初代プリウスではセンターメーターを採用していました。そのメリットは視線移動を少なくすることにあります。専門用語を使うと「遠視点」を意識したデザインのメーターと表現できます。ドライバーが前方を見ているピントのまま、メーターの表示内容を確認しやすいよう配慮したメーターということです。

bZ4X、ソルテラのトップマウントメーターも遠視点を意識したデザインであり、それは初代プリウスの時代から研究してきた結果ともいえるのです。バイザーレスのデザインとしているのも、遠くを見ている感覚のままメーターに視線を移しやすい工夫といえるでしょう。

●「ハゴロモデザイン」という新提案

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メーターパネルを支えるような立体的な造形が「ハゴロモデザイン」の真骨頂だ。

写真で見ると、大きなブラックパネルでメーターが構成されているように思えますが、じつはメインの表示部分は7インチサイズで、パネル中央付近に凝縮された設計となっています。

第一印象では、小さな液晶ディスプレイで、大きなメーターに見せるコストダウン的アイデアかと思いましたが、設計上の狙いとしてはパネル中央に表示を集めることで情報を確認しやすくするためということです。

そんな視線移動をサポートしてくれるのが、メーターパネルをダッシュボード上で支えていることを表現している形状でしょう。ステアリングホイールの向こう側に見えるマウント部分が、メーターに向かってギュッと凝縮していく意匠は、自然とディスプレイ中央へ視線を送るのを助けてくれます。

この非常にユニークな意匠について、インテリアデザイナーの方に質問したところ、「ハゴロモデザイン」と呼んでいると教えてくれました。

ハゴロモ(羽衣)といえば、古来からの伝説で、天女が空中を自由に飛行するための衣服です。まさに、未来的であり、日本的な表現がメーターデザインに込められているというわけです。

●ドラポジに違和感はなかった

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bz4xを運転する筆者。シートを上げ、ステアリングを低めとしてメーターを見やすいポジションとしている。

さて、デザイン的な意図は理解したとして、実際に遠視点メーターは有効なのでしょうか。

最初は違和感がありました。とくに筆者はドライビングポジションが低め気味で、ステアリングホイールを高めにする傾向にありますので、普段のポジションではステアリングホイールがメーターを隠してしまいます。トップマウントメーターに合わせてステアリングホイールのチルトを低くし、シートの座面も高めにセットする必要がありました。

この段階では「メーターの視認性のために、普段と異なるポジションを強要されるのは本末転倒だなぁ」と思ったというのが、正直なところです。

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自然と視点が高くなるので回り込んだワインディングでも乗りやすい。

しかし、走り始めるとあっという間に違和感はなくなります。先行車や信号など道の先の様子を確認しつつ、メーター表示を確認するときにほとんどピントを変える必要がないのは疲労軽減につながりそうと感じ、トップマウントメーターの印象はよくなっていきました。

そうした好印象がさらに強まったのがワインディングです。今回の試乗コースでは、回り込んでいて出口が見えないようなタイトなコーナーのあるルートも走ったのですが、そうしたシチュエーションにおいて遠視点に有利なポジションというのは非常に乗りやすく感じました。

普段、低めのドライビングポジションにしたくなるのは、ロールによって視線が左右に動くのを嫌っているためという部分もありますが、フロアにバッテリーを敷き詰めることで低重心な電気自動車は、体感的にロールが抑えられているため、高めのドライビングポジションが気にならないのでしょう。だとすれば、電動化時代には運転姿勢を含めたコクピットの作り方、ポジションの取り方へのアプローチが変わってくるのかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也