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■長く広く、そしてより低いプロポーションが美しさを作る
今年4月13日、9年ぶりにフルモデルチェンジされた新型プジョー「308」のスタイルが評判です。フロントの牙のようなライト「セイバー」など、新しいデザイン言語はすっかり定着しましたが、この308は評論家など玄人筋からも評価が高いのです。その理由はどこにあるのか? 今回は3つの視点から紐解いてみます。
まず最初に挙げるべきは、独自のプロポーションでしょう。全長4420mm×全幅1850mm×全高1475mmのスリーサイズは、先代より145mm長く、45mm広く、しかし高さは5mmのアップに止まります。このワイド&ローのスタンスは、実用的なCセグハッチバックとしては斬新と言えるでしょう。
たとえば、最大のライバルである「ゴルフ8」と比べても125mm長く、60mmも広いのに、高さは同じなのです。一回り大きいボディが高い存在感を与える上に、その低さが万人にスポーティな印象を想起させるワケです。
さらに、フロントグリルも「208」に比べてずいぶんと低さを強調しており、それによってノーズはあたかもFR車のような長さが感じられます。また、サイドビューでは、リアに向けて大きく下降するルーフラインが一層の低さを演出しているのです。
●シャープさとボリューム感の融合
次に、メリハリのあるボディワークです。まず、ボンネット左右を大きく削ぐ最近のプジョー車に共通した造形はフロントビューにシャープさを与えているし、やはり208に準じたリアパネルの広い凹面は非常に強い凝縮感を作っています。
サイド面では、前後の深いキャラクターラインと大きく張り出したフェンダーが話題。中でもリアランプからの「つまみ上げたような」深いラインは先代でも見られた造形ですが、新型では比較にならないほどの立体感を持っています。
ちなみに、このサイドのキャラクターラインはフェンダー部のみで前後がつながっていませんが、それによってボディ中央部は丸くボリューム感のある面を残すことができたのです。恐らく、208のようにキャラクターラインを前後に通してしまうと、この大柄なボディとしてはサイド面が弱く見えてしまうと考えたのでしょう。
●徹底した細部、ディテールへのこだわり
そして最後はディテールへのこだわりです。まず、より幅広くなったフロントグリルは、細かなドット構成による奥行き感や新しいエンブレムが話題ですが、さらにその外側には横桟模様のパネルが加わっています。また、深く埋め込まれたフロントランプとの「段差」には美しいモールパーツが輝いています。
さらに、例の「サーベル」に平行して引かれたバンパーのライン、アンダーグリル周辺のブラックパーツなど、とにかく新型のフロントパネルは複雑と言ってもいいほど多くの要素で溢れ、徹底した作り込みが施されているのです。
これはリアも同じで、ライオンの「かぎ爪」をモチーフにしたランプは丁寧に3ブロック構成とされ、しかも外側に向けて張り出した立体感が印象的。また、そのランプの上のクオーターパネルには「こんなところにも?」と思えるような繊細なラインが引かれていて、とにかく芸が細かいのです。
こうした細部の作り込みは最近のDS車にも見られますが、細かな造作を積み上げて行くことでボディ全体にある種の質感や個性を与えるのは、もしかしたら最新フランス車の流行なのかもしれません。
以上、新型プジョー308の好評ぶりをを3点に絞って検証してみましたが、かつての「306」や「307」はもちろん、先代と比べてもずいぶんと造形要素が増えた印象です。これは、ボディの大型化も含め、車格としても成長している証と言えそうですね。