■水素カートリッジ1本あたり、一般的な家庭用電子レンジが約3~4時間運転できる電力量を想定
世界中で水素利用が模索されている中、FCVをはじめ水素の使用を推進しているトヨタは、2022年6月2日、子会社のウーブン・プラネットとともに、ポータブル水素カートリッジのプロトタイプを開発した、と発表しました。
水素カートリッジは、手軽に水素を持ち運びでき、生活圏の幅広い用途で水素エネルギーを使用できます。
静岡県裾野市に建設されるWoven Cityをはじめ、多様な場所での実証を通じて、実用化に向けた検討を推進するとしています。そして、水素が日常生活で気軽に使えるエネルギーになることを掲げています。
2022年6月3日(金)~5日(日)に富士スピードウェイで開催される「スーパー耐久シリーズ2022」の第2戦で、水素カートリッジのプロトタイプも展示されるそう(水素カートリッジの展示は6月4日、5日のみ)。
写真では重そうに見えますが、ポータブルサイズであるため、パイプラインなしで生活圏に水素を持ち運ぶことが可能で、プロトタイプのサイズは、直径約180mm、全長約400mm。質量(目標)は約5kgとしています。
気になるのは、水素がどれくらい持つのか?という点でしょう。一般的なFCシステムで発電する場合、水素カートリッジ1本あたり、一般的な家庭用電子レンジが約3~4時間運転できる電力量が想定(今後検討する高圧水素タンクの前提で電力量は約3.3kWh/本を想定)されているそうです。
なお、プロトタイプですので、今後、仕様やデザインの変更の可能性があります。
質量目標(タンク満タンで5kg程度)はバルブ、プロテクター部をのぞく重さで、用途にあわせて今後、複数の種類を検討しているそうです。
トヨタとウーブン・プラネットでは、カーボンニュートラルの実現に向け、様々な選択肢を検討する中、水素を有力な選択肢のひとつと位置づけています。水素は、使用時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーで、風力や太陽光、地熱やバイオマスなど、再生可能エネルギーを使って水素を製造すると、製造工程においてもCO2の排出を抑えることが可能です。
製造時のCO2排出量により、化石燃料由来の水素は、グレー水素、CO2を回収し、貯留したり使用したりするなど、CO2排出を抑えたブルー水素、再生可能エネルギーなどを使いCO2を出さずに製造するブルー水素などがあります。
トヨタとウーブン・プラネットは、Woven Cityと近郊で、水素の「つくる」「運ぶ」「使う」という一連のサプライチェーンの実証をENEOSとともに行う予定としています。
トヨタとウーブン・プラネットは、次へのステップとして、水素がより身近なエネルギーとして生活の様々な場面で安全に使用されることで水素の使用量と使用用途が拡大し、さらなる水素需要の創出につなげるだけでなく、新たな水素サプライチェーンの構築を目指すとしています。
Woven Cityでモビリティや様々なアプリケーションなどに使用することを検討し、Woven Cityに住む発明家をはじめとした住民とともに、さらなる水素カートリッジの可能性を模索するそう。
水素カートリッジは、今後のWoven Cityなどでの実証を通じ、高圧水素タンクを採用する前提で設計、開発を推進し、より使いやすい水素カートリッジとなるように改善していくと表明しています。
(塚田 勝弘)