■EVを売りっぱなしとせずに、EVの顧客生涯価値最大化を目指す
2022年3月23日(水)、三菱自動車とDeNAは、物流車両や営業車、自治体の公用車、カーシェア、レンタカーなどの商用EV分野のコネクテッドカーの協業モデルの検討をスタートさせました。
両自動車メーカーとインターネット企業のそれぞれの強みを最大限に生かすため、自動車メーカーのデータ主権や既存の車両システムは維持しながら、EVの車両データ管理や各種サービス事業者との連携は、クラウド事業者が担う水平分業型の産業構造の構築を目指すとしています。
また、この新たな機能分担を通じて、商用EVのLTV(ライフタイムバリュー)を最大化させる新しい経済モデル(サーキュラーエコノミー)にも挑戦する構えです。
自動車メーカー各社が力を入れるコネクテッドカーは、現在は車両とクラウドが専用通信機器やモバイル通信を介して接続されています。通信フォーマットや車両データの規格は、各社で異なっているのが実状です。
また、従来の自動車メーカーによるコネクテッドサービスは、個人向けが中心で、対象は自社ブランドの車両のみであることが多く、通信フォーマットや車両データの規格が各社で異なることは、大きな問題には至っていません。
しかし、カーシェアリングやレンタカー、EVを蓄電池として電力連携させるピークカットやEVと電力網を統合し、EVを電力供給システムの一部として利用する「VGI(Vehicle-Grid Integration)」などのサービスのように、さまざまな車種やメーカーのEVを束ねるコネクテッドサービスを展開する際は、規格の違いがサービス事業者の大きな負担となり、事業上の制約となります。データを提供する自動車メーカー各社にとっても、第三者のサービス事業者にその都度対応していくことは非効率。
そのため、商用車向けのコネクテッドサービスを本格的に普及させるためには、車両、クラウド、サービスといった各階層間で分業化するのが合理的といえます。実際に、欧米ではこのような水平分業化が進みつつあるそうです。
三菱自動車は、国内唯一の軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」を使い、国内外の物流会社などと共に、さまざまな実証実験に参画し、商品力の強化とEVのさらなる普及に取り組んでいます。
また、車両のコネクティビティ機能の強化を掲げ、「With Partners」という考え方に基づき、異業種との積極的なパートナーシップを検討しているとしています。
一方のDeNAは、自動車メーカー各社のEV情報をクラウドで管理し、データサイエンスを活用したデータ分析(効率性、環境性、経済性、製品寿命など)を実施。
各社のEV情報を共通形式でサービス事業者に提供するシステムを開発しています。両社は今後、モビリティビジネスにおける自動車メーカーとインターネット企業の協業により、自動車メーカー主導の垂直統合型から異業種連携による水平分業型への新たな産業構造変革に挑戦するとしています。
両社は、この新たな産業構造を通じて「EVの共同利用やエネルギー活用など、多用途化による日常の稼働率向上」「バッテリーの劣化により変化するEVの車両性能とユーザーの利用用途とを高精度にマッチングさせることによる車両寿命の延伸」「車両としての役割を終えたEVバッテリーの再利用」など、多用途化と長寿命化により、EVの顧客生涯価値を最大化させる新たなサーキュラーエコノミーの実現を目指す構えです。
サーキュラーエコノミーとは、従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取組に加えて、資源投入量、消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動のことです。
両社のこうした取り組みがコネクテッドサービスのさらなる利便性向上などにつながるか注目です。
(塚田勝弘)