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■やっぱりナマのクルマはいい!
2年ぶりのリアル開催となった東京オートサロン2022。「やっぱりナマのクルマは色気があっていいなあ」などと感慨に浸る余裕もなく、鬼の編集長コバヤシから出された宿題「東京オートサロン2022で見かけた私のベスト3」の拙者分をまとめてみました。
●第3位:ベッドフォードCA(RANGERS)
東ホールを取材中、カラクリ感満載なたたずまいに心をわしづかみにされた1台。イギリスのベッドフォード・ヴィークルズが作ったベッドフォードCAというクルマのキャンパー仕様だそうです。1968年製。
恥ずかしながら私はベッドフォードという会社を知りませんでした。お店の方に聞くとボクスホールの子会社だったそうで、商用車を主体に作っていたとか。当時はありふれたクルマだったのかもしれませんが、今となっては超レア車。しかも現代のキャンピングカーも顔負けの仕掛けが満載です。
開けっ放しにできるようにドアはスライド式、パンパンに張ったシートは助手席が回転してベッドになりますし、後部には大工さんが作ったのではと思わせる収納やキッチンも。ルーフは開いてテントになるのですが、トップ部分には採光用の窓やベンチレーションも備わっています!
出展元のレンジャーズは、こういった味のあるクルマを仕入れ、お客さんの要望に応じて改造して納品されているとのこと。私はイギリスに「雲ひとつない快晴」というイメージがあまりないのですが、たとえ空が鈍色に曇っていても「屋外で遊んでやるぜ!」という英国人の意地のようなものを感じる1台でした。
●第2位:JIMNYキムンカムイ(NATS)
毎回、時流を捕えたカスタムカーを投入してくる日本自動車大学校ですが、今回もまさにタイムリーな1台。開発中とも噂されるジムニーの5ドアを「待ってられない」とばかりに自分で作っちゃいました。しかもバリバリのリフトアップ&キャンパー仕様で!
実物はジムニーシエラがベースで、張り巡らされたアウターロールケージがかっこいい。基本となるラダーフレームは燃料タンク直前でカット、ボディパネルはBピラーでカットして400mmストレッチし、リアドアを取り付けてあります。
下をのぞくとリフトアップするためのリンク機構もしっかり取り付けてあり、そのままオフロードに持っていけるんじゃないかという感じ。NATSオリジナルのオーバーフェンダーもここだけ艶出しされていて、マットなボディとコントラストを生んでいます。
本家のスズキ自動車は今回、東京オートサロン2022には出展していませんでしたが、もし出展していたら絶対のぞきに来たよなあと思えた1台。5ドアがどんなクルマになるのかというイメージを掴むうえでも、非常に有効なクルマでした。
●第1位:日産フェアレディZ(日産自動車)
カスタムカーの祭典で市販車両を1位に挙げるのも気が引けたのですが、今回のZはやはり別格でした。Z35を名乗らないとか、値段が高いとかいう声もありますが、このクルマがなければトヨタの豊田章男社長が各社にスピーチのバトンを渡すこともなかったし、筆者個人がFRスポーツの楽しさを思い返すなんてこともありませんでした。
クルマの出来栄えは6月の発売を待つとして、私は1月14日(金)午前10時、このクルマを見るために日産ブースに集まった人たちの姿に1位をあげたい。取材とはいえ、皆さんいつになく幸せそうで、フェアレディZという偉大なアイコンが継承されることを祝福しているかのようでした。
21世紀も5分の1が過ぎた今、「V6ツインターボ6速マニュアル」なんて言葉に酔うことができる自分を発見できたことは幸せです。まだまだクルマで夢は見られるんですね。
(文・写真:角田 伸幸)