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■あなたのクルマは大丈夫? 知っておきたい「25年ルール」
●日本でのクルマの盗難とアメリカの「25年ルール」の関係
毎年、ニュースなどで目にするクルマの窃盗事件。警察庁によると、2013年以降減少傾向にあるとされており、2020年には5210件程度に留まっているようです。自動車盗難件数のピークであった2003年は6万4223件を記録していたので、比較すると実に90%以上も減少していることがわかります。
このように、クルマの盗難件数はピーク時に比べると大きく減少していますが、近年の犯行にはある傾向があり、特定の条件下では、クルマの窃盗は依然として多発しているようです。
日本損害保険協会が2020年11月に行った「第22回自動車盗難事故実態調査」によると、車両本体の盗難件数が最も多かったのはトヨタ・ランドクルーザー(プラドを含む)、2番目に多かったのはトヨタ・プリウスとレクサス・LXとされています。
2019年度の調査と比較しても、3位までの顔ぶれに変化はなく、特定の車種に盗難被害が集中していることがわかります。
また、車両本体の盗難件数の多い上位13車種はすべて日本車であり、その中の12車種はトヨタ車(レクサスを含む)という、特徴的な内訳になっています。さらに、これらの車種のほとんどは1990年代、あるいはそれ以前に製造されていたクルマという共通点があることも分かります。
では、なぜ「古めの日本車」が盗難被害を受けやすいのでしょうか。この背景には、アメリカの「25年ルール」と呼ばれる制度が関係しています。
通常、アメリカでは右ハンドル車の輸入を認めていないので、日本やイギリスで走っているクルマをアメリカで乗ることはできません。ただし特例として、製造から25年が経過していれば、アメリカ国内におけるクラシックカーとして認められるため、右ハンドル車であっても輸入できるようになります。
海外では、トヨタを初めとする日本車の需要が高いこともあり、不正な輸出という形で、製造から25年が経過した「古めの日本車」が多く被害を受けているのでしょう。また、スカイラインなどのアメリカに輸入されていないスポーツカーは、ファンからの需要も高く、取引額の相場が上がっていることからも、狙われやすくなっているようです。
また、アメリカではクラシックカー認定されると、関税や排ガス規制が対象外になるのに比べ、日本では年式の古いクルマに対して税金を重くする重課制度があるように、両国は古いクルマに対する対応に違いがあります。
さらに、日本の場合、車検は2年に1回は行うものなので、古いクルマであっても比較的優良な状態で保たれている傾向にあります。そういった双方の事情が、アメリカ市場における「古めの日本車」の相場の急騰、つまり近年のクルマの盗難事件の原因に繋がっていると考えられます。
●盗難防止対策は?
前述したように、日本のクルマは海外からの需要も高く、盗まれると海外に輸出されてしまうこともあります。
「第22回自動車盗難事故実態調査」によると、2020年度に自動車盗難が最も多く発生した場所は、契約駐車場(屋外)で40.5%。次いで37.3%が自宅(屋外)とされています。よって、自宅に駐車していても安心はできません。大切な愛車を守るためにも、事前に対策をしておきたいところです。
「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」によると、盗難防止対策のひとつとして、盗難防止機器の活用が有効とされています。センサーが衝撃・振動・音等の異常を感知し警報音を発する警報装置、ハンドル固定器具、タイヤのホイールロック、GPS追跡装置等の盗難防止機器を活用しましょう。
また、確実な旋鍵はもちろん、イモビライザーの装着も効果的とされています。そのほかにも、駐車場を利用する際は、防犯カメラや照明等の防犯設備が充実した箇所を利用することを心がけることも大切です。
犯人はあらかじめ狙いを定めて下調べをし、犯行の機会をうかがっています。車両盗難に遭わないためにも、普段からの防犯対策が重要です。なお、「25年ルール」に該当する車種を所有するオーナーは、より一層の注意が必要でしょう。
(梅村 ゆき)