目次
■信号機のない横断歩道には、どう対応する?
●「歩行者優先」はマナーではなく、道路交通法の決まり!
クルマと歩行者の衝突事故は、被害が大きくなりやすく、死亡事故に繋がる場合も少なくありません。
実際、警察庁は「2017年から2021年までの過去5年間で、自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故は5,052件発生しており、約7割の3,588件は歩行者が横断中の事故によるもの」(うち約半分が横断歩道外、約半分が横断歩道もしくは横断歩道付近)と発表しています。
交差点では歩行者はもちろんのこと、信号や標識をしっかりと確認しなければいけません。しかし、信号機のない横断歩道をクルマで通過する際は、どうすればよいのでしょうか。
前述した通り、ドライバーは横断歩道手前での減速・停車義務があり、道路交通法第38条「横断歩道等における歩行者等の優先」にて、以下のような記載があります。
「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」
つまり、横断歩道では、横断しようとしている、あるいは横断中の歩行者等がいるときは必ず一時停止をしなければなりません。また、横断歩道付近に歩行者がいる時は、いつでも停止できるように徐行する必要もあります。
これは、信号の有無に関わらず守らなくてはいけません。あたりまえのルールと思われがちですが、実際に横断歩道付近での重大事故が多く起きているのも事実です。全てのドライバーは「横断歩道は歩行者優先」ということを忘れてはいけません。
●ちゃんと一時停止してますか?
本来、信号の有無に関わらず、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合には、横断歩道の直前で一時停止し、通行の妨げをしないようにしなければなりません。しかし、実際にはどれほどのクルマが一時停止をしているのでしょうか。
2022年10月にJAFが公表した、「信号機のない横断歩道における歩行者優先についての実態調査の結果」によると、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止したクルマは、対象の車両7,540台のうちの約4割である3,003台だったようです。つまり、いまだに約6割のクルマが止まっていないことが分かります。
ちなみに前2021年の調査の結果によると、同条件下で一時停止したクルマは約3割でした。比べてみると増加の傾向にあると言えますが、それでもまだまだ低い数値なのは否定できません。
また、JAFが2017年に、「ドライバーが信号機のない横断歩道で一時停止しない(できない)と考えられる理由」をアンケートにて調査した結果、「自車が停止しても対向車が停止せず危ないから(44.9%)」「後続車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから(41.1%)」「横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから(38.4%)」といった回答が多かったとしています。
こうした数字は、ドライバーの日ごろの意識が反映されるもの。一人一人が安全運転を意識するだけで、改善できるものです。
ドライバーは「横断歩道における歩行者優先」をしっかり守るのはもちろん、歩行者も横断をしようとする際にはドライバーに横断する意思表示をするなど、交通ルールを前提にそれぞれが安全な行動をとるように心がけましょう。
(梅村 ゆき)
※2021年12月11日の記事を2022年11月15日に追記、再編集しました。