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■レギュラー仕様車にハイオクは使えるの?
●そもそもなぜハイオクが良いと言われているのか
「プレミアムガソリン」とも呼ばれるハイオク。レギュラーガソリンに比べ価格やオクタン価が高いことから、レギュラー仕様車に給油することで「パワーや燃費が上がるのではないか?」「エンジンの洗浄効果があるのではないか?」などの噂が広がっているようです。
そもそも日本で売っている自動車用のガソリンには、レギュラーとハイオクの2種類がありますが、両者の大きな違いとして、「オクタン価」の高さが挙げられます。
オクタン価とは、エンジン内の異常燃焼のひとつであるノッキング現象の起こしにくさを示す指標のことで、この数値が高いほど燃えにくい、つまりノッキングが起こりにくいとされています。そして、このオクタン価の数値によってハイオクかレギュラーかの区別がされており、レギュラーはオクタン価89以上、ハイオクはオクタン価96以上と決められています。
よって、ハイオクのメリットとして、レギュラーよりも高オクタン価であることの恩恵を受けやすいという点が挙げられます。
また、ハイオクにはノッキングや汚れの対策のために、添加剤や洗浄剤が加えられていることが多いです。レギュラーよりもオクタン価および、価格が高い理由はここにありますが、これらの差が「レギュラー車にハイオクを入れるとパワーアップするのではないか」という噂が生まれた理由とも推測できます。
●「レギュラー車にハイオク」はパワーアップに繋がる?
では、実際にレギュラー仕様車にハイオク入れることでクルマはパワーアップするのでしょうか。結論は、NOです。
正確には「指定されたガソリンを入れることが最も効果的」です。
確かに、ハイオクの持つ、レギュラーよりも燃えにくく不本意な燃焼が起きにくいという特性を考えると、最大限のエネルギーを効率よく引き出すことが可能なのではないかと考えられます。しかし、基本的にはレギュラー仕様車はレギュラーで最適な燃焼をするように設計されているため、ハイオクを入れたとしても、大きな効果は得られません。
次に、ハイオクによる洗浄効果についてはどうでしょう。
前述した通り、ハイオクには洗浄剤が含まれていることから、燃焼室の洗浄効果や燃費向上の期待をうたう石油会社も一部存在します。
実際に、エンジン内部には燃焼の過程で発生する燃えカスなどの堆積物が溜まっていくので、洗浄されることで寿命が伸びたり、パワーダウンを防げるといったメリットもあります。とはいえ、この点に関しては、レギュラー仕様にハイオクを入れ続けるより、市販のガソリン用の添加剤を用いたほうが、より効果的に解決できるでしょう。
また、燃費性能への影響はガソリンの違いだけではなく、車格や重量、エンジン性能など、そのクルマ全体が関係していることも忘れてはなりません。それぞれの仕様にあったガソリンを使用することが重要です。
なお、レギュラー仕様車にハイオクを入れても、現代のクルマにおいて故障する心配は必要ありません。正しい給油を行うことが前提ですが、大切なのは上記の効果を「価格差に見合ったパワーアップと捉えるか」という人それぞれの価値観でしょう。
●なぜ噂が広まったのか?
「レギュラー仕様車にはレギュラー」「ハイオク仕様車にはハイオク」という大前提がある中、なぜ「レギュラー車にハイオク入れるとパワーアップする」といった噂が広まったのでしょうか。
ある中古車販売店スタッフは、「ハイオクには洗浄効果のある物質が含まれていることがあり、旧車や過走行のエンジンを積んだクルマは、最近のクルマに比べ、燃焼室にカーボンやデポジットなどのカスが溜まりやすい傾向にあるので、ハイオクを入れることで、同時に洗浄効果もより期待できます。もしかすると、そういったクルマを所有するオーナーたちの間から、『エンジンのケアに効果的なのでは』と噂が広まったのかもしれません」と話しています。
このように、一部のクルマにおいては、レギュラー仕様車にハイオクを入れることで、「パワーダウンを防ぐ」という効果が得られる場合もあるようです。
もっとも、ガソリンを変えたからといって、そのクルマの規定値以上に燃費やパワーが上がるというわけではありません。なぜなら、クルマのエンジン設計は、使用するガソリンに合わせて最大の効果を発揮するよう作られているからです。
「レギュラー仕様車にハイオクを入れるとパワーアップする」という間違えた噂に惑わされることなく、指定されたガソリンを正しく給油することを心掛けましょう。
(梅村 ゆき)