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■新型「ワゴンRスマイル」のスタイリングを深掘りしてみた!
2021年8月27日に発売されたスズキの新型「ワゴンRスマイル」は、人気のスライドドアを採用した新規モデルとして受注状況も好調のようです。そこで、エクステリアデザインを担当した四輪デザイン部の新居氏に、スタイリングの意図についてお話を伺ってみました。
●流行ではないクルマらしさを表現する
──はじめに、デザインコンセプトである「マイスタイル マイワゴン」の中身について教えてください。
「エクステリアとしては、シンプルで明快であることですね。ボディの上にしっかりキャビンが載った、クルマとしてのカタマリを表現したい。このクルマはデザインをメインに開発しましたが、だからといってトリッキーなモダンデザインにするのではなく、素材のよさで勝負するということです」
──ワゴンRより45mm高く、スペーシアより90mm低いパッケージはどうやって決まったのですか?
「スズキとして新たにスライドドア車を追加するとなった際、スペーシアより100mm程度下げるのがいいのでは、という提案が開発の初期段階であったんです。実際に試してみると、パッケージとしても、あるいは商品の差別化の面でも、この1695mmが適当だと判断しました」
──キャビンに対しボディ面がかなり厚く見えますが、この比率の意図はどこにありますか?
「そこもスケッチを描く前に検証したところで、実はベルトラインの高さはスペーシアと同じなんです。実際にはあと50mm下げてみるなど何度も検証したのですが、使い勝手に加え、いわゆるチョップトップ風にも見えて、この比率が面白いじゃないかという結果になりました」
──フードはフロントに向けて少し下がっています。最近はベルトラインと同じ高さにした商品も見られますが?
「ベルトラインをそのまま延ばすと、縦横比の点から少々縦長に見えてしまうんです。ヘッドランプの高さも含めていろいろ試しましたが、真正面から見たときに、今回のデザインテーマではこのバランスがいちばん良かったのです」
──フードが短いことと、左右が絞られていることもあってか、フロント部に若干「寸詰まり感」がありますね。
「そこは非常に時間をかけたところです。当初はよりフェンダーが強調されるよう、もっと絞ってランプを「ヨリ目」にするなども試しました。「丸目」はわずかな違いでいろいろな表情が出るので、デザイナー間でも意見はさまざまでした。最終的には、顔の幅のバランスとしてこれがベストとなりました」
●意外に難しい丸形ランプ
──その「丸目」ですが、そもそもなぜ丸形のランプを選んだのでしょう?
「ほかにも多くの案がありましたが、大きくは女性をメインターゲットにしたかったことです。ただし、男性ユーザーを拒否するような表現はNG。当初案は真円だったのですが、スケッチを進めるうちに微妙な楕円に変化しました。いま思えば、真円だとあまりに表情が決まり過ぎるんですね」
──ランプ回りやグリルではメッキを多用しましたが、その狙いは?
「実は当初、ランプ回りもボディ色でデザインを進めていたんです。一方で、用品としてメッキパーツの開発が行われていたのですが、その中でこれがいいじゃないかという話になった。ボディ色も悪くはなかったのですが、コスト面も解決したことでメッキを採用したわけです」
──女性を想定したクルマとしてはホイールアーチの表現が大きく、前後のバンパーに届くほどです。
「これは初期のスケッチから提案されていたものです。先のコンセプトのとおり、このクルマは単に温かみを狙うのではなく、強いカタマリ感を意図していて、ゴリッとしたボディとしたい。その点、ホイールアーチも単なる円ではボヤけた表情になってしまうんですね」
──リアランプを丸形にしなかったのはなぜですか?
「フロントランプは丸形ですが、クルマとしては決して丸いイメージではないんです。弊社のラパンなどはボディ断面も含めて丸をモチーフにしていますが、このクルマはドアの見切りも含めてまったく違う。もちろん丸形も試しましたが、やはり収まりがよくなかったです」
──最後に。各社で個性を競っているトールワゴンタイプですが、今後も商品の差別化は可能だと思われますか?
「たとえばスペーシアだけでも標準、カスタム、ギアと3種もの表現があるように、他社さんも含めれば出し尽くしたとも言えますよね。そういう意味では非常に難しいのですが、逆にチャレンジングでもあります。このクルマでは「写真より実車の方がいいネ」という声を多くいただいているのですが、そうした高い次元で勝負できるような差別化を目指したいですね」
──小手先ではない領域での差別化ですね。本日はありがとうございました。
【語る人】
スズキ株式会社
四輪デザイン部 四輪先行デザイングループ
新居 武仁
(インタビュー:すぎもと たかよし)
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