■約四半世紀の歴史のなかで初の左右非対称デザインを採用
グッドイヤーのスタッドレスタイヤ「アイス・ナビ」は、1997年にはっ水シリカゴムを配合したモデルとして初めて登場しました。以来25年に渡って連綿とシリーズを綴ってきた「アイス・ナビ」シリーズが、2021年にフルモデルチェンジ。8代目となる「アイス・ナビ8」となりました。
「アイス・ナビ8」ではシリーズ初となる左右非対称デザインを採用。各種性能を向上してきました。
「アイス・ナビ8」最大の特徴は、アシンメトリックNAVIパターンと呼ばれる左右非対称デザインを採用したことにあります。
アシンメトリックNAVIパターンでは、アウト側の剛性を向上することによって、あらゆる路面での旋回性能を向上。ランド比(トレッドの溝に対する接地面の比率)を従来型アイス・ナビ7に比べて2%アップすることで、氷上路面とドライ路面での密着性を向上することに成功しています。
そのほか、多方向にラグ溝やスロットを配置することで氷上ブレーキ時の引っかき効果を向上しているほか、ストレートグルーブ(縦溝)を4本バランス配置することで排水性を向上、ハイドロプレーニング現象を抑制しています。
スタッドレスタイヤの命とも言えるのが、トレッドをカミソリで切り込んだようなサイプと呼ばれる部分です。サイプが多いとそれだけエッジ効果が高まりますが、増やしすぎるとブロックの剛性がダウンして、ドライ性能はもとより、氷上性能も損なうことがあります。
「アイス・ナビ8」のサイプは、ウルトラ・NAVIブレードと呼ばれる立体構造のサイプを採用。高いエッジ効果を確保しつつ、ブロックの倒れ込みを防止しています。
コンパウンド(トレッドゴム)はベース部分に変形、発熱を抑える高剛性ベースコンパウンドを採用。表面のコンパウンドは極小分散シリカを採用し、路面への密着性をアップしたエキストラ・コンタクト・コンパウンド・プラスとして氷上性能を向上しています。
●雪上、氷上、ウェット、ドライ、どこでも安全な性能を発揮
試乗はFFのプリウスで、一般道にて行いました。圧雪路でのフィーリングはかなりいいものでした。スタッドレスタイヤは、雪道や氷上でいかに止まるか?がひとつの勝負どころですが、「アイス・ナビ8」はそこをきっちりクリアしています。
圧雪路で強いブレーキを踏むと、まずはグッとしっかりした減速感を感じます。この最初の減速感はすごく大事で、これがないと「ヤバイ、止まらないかも」とドライバーがパニックになることがあります。その後、ABS領域に入っていきますが減速感は変わらず最後にはググッと停止してくれます。
停止するためのブレーキングではなく、減速するためのブレーキングでも扱いやすいペダルフィールを持っていて、的確に求める速度に合わせることができます。雪がかなり踏み固められ、圧雪のなかでもかなり条件が悪いと思われるような路面でもブレーキフィールは確かなもので、十分に高い性能であることが確認できました。
コーナリングについても同様で不満を感じるようなグリップダウンはありません。普通の速度で走っている限りは、十分なグリップを発揮し安心してドライブできます。
2年ほど前に先代のアイス・ナビ7にも試乗していますが、そのフィールを思い出してみてもさらにアップしている印象(絶対比較はしていませんが)です。VSCとTRCをオフにして下り勾配のコーナーで無理なコーナリングをすれば、それなりに横滑りは起こしますが、その発生はつかみやすいもので、デバイスのないクルマ(なんてものは最近はありませんが)であっても使いやすいだろうなというフィーリング。
しかし、このフィーリングを出しておくことでデバイス付きのクルマでも使いやすいタイヤとなるのです。発進や加速についてもまったく問題はなく、フカフカの新雪が積もった駐車場にクルマを入れても安心して前に進めました。
ドライの舗装路でも腰砕け感はなくしっかりとした印象で、このまま夏タイヤとして使ってもいいのではないか?と思わせるほどのものでした。
途中、雪解け水が流れ出したウエット路面もありましたが、ウエットが苦手という印象もなし、高速道路での静粛性も高く快適。あらゆる路面に対応していることが確認できました。
サイズは155/65R13~275/35R19まで豊富に用意されています。
(文:諸星 陽一/写真:小林 和久)