43年前の新車が今でも買える!何度も生産終了の危機を乗り越えたその変更点の歴史とは?【ヤマハSR400ファイナルエディション試乗/概要】

■オーソドックスという個性

SR400
SOHC空冷4ストローク2バルブ単気筒399cc。このシンプルなエンジンこそがSR400の核心です。

しばしば「個性的」という言葉は、風変わりで突拍子もない様子をあらわす「エキセントリック」という言葉と混同されます。でも、このSR400 Final Editionの、古典的で端正なルックスと、そこにあふれる揺るぎない個性に目を奪われた人ならば、それが見当はずれな感じ方だとすぐにわかることでしょう。

SR400は、1978年の初期型発売以来、スタイルの変更を頑ななまでに拒み続け、2021年の今となっても発売当初とほとんど変わらない姿を保ったまま、幅広い年齢層のライダーから支持され続けているヤマハの名車です。

SR400
ヤマハ伝統の音叉マークとともにフューエルタンクを飾るのは「Final Edition」の文字。万感胸にせまるSRライダーも多いはず。

SOHC空冷4ストローク399ccのビッグシングルは、いわずと知れたSR400のアイデンティティ。キックペダルを引き出し、ステップに立ち上がって右足を深く一気に踏みおろし、冷たく眠っているエンジンに火を入れる……ちょっと面倒ともいえるあの儀式こそ、ライダーのプライドと高揚感をこのうえもなく掻き立てるSR400の魅力そのものといっていいかもしれません。

●独特の歴史をもつ美しきビッグシングル

SR400
軽やかな走りは初期型発売当時から変わらないSRの持ち味です。

1978年の初期型SR400は、もともとビッグオフローダー XT500のエンジンを400ccにスケールダウンして搭載したマシンでした。今でこそクラシックなスタイルが目をひき、レトロ感いっぱいのSR400ですが、当時はむしろ軽量で運動性の高い正統派スポーツバイクとしてライダーたちに歓迎されたのです。

初期型と、それから半世紀近く経って発売された2021年型を見比べても、ほとんど違いがわからないSR400。でも各部は少しずつマイナーチェンジを受けています。

SR400
クラシカルなスポークホイールは、SR400の柔らかなライディングフィールを支える要素のひとつです。

たとえば初期型はスポークホイール仕様でしたが、1982年のSR400SPではキャストホイールを採用。ところがそのためか、販売数は激減します。ユーザーからの強い要望もあって、その後のSR400はずっと初期型と同じスポークホイールを採用し続けてきました。

SR400
初期型同様のディスクブレーキながら、現行SR400にはドリルドローターが採用されています。

フロントブレーキは、初期型はディスク式でしたが、1985年には、なんとドラム式に変わります。一見、退化とも思える変更でしたが、当時の技術ではディスクと比べても制動力に大きな違いがなかったことや、なによりもSR400のスタイルにはドラムブレーキがぴったり合っていたことから好評となり、ドラムブレーキのSR400は、2001年の保安基準見直しで再度ディスクブレーキを搭載するまで、16年もの長きにわたって愛され続けました。

●時代と戦い続けた孤高のマシン

SR400
半世紀近い時の流れを、SR400はその信念とともに走り続けてきました。

そしてじつは、変わることのないSR400の孤高のスタイルを象徴するあのシングルエンジンこそが、もっとも激しく時代の変化にさらされた部分でもありました。2001年、強化された自動車排出ガス規制に対し、SR400はエアインダクション・システムを装備して対応。しかし、さらなる規制強化で2008年にいったん生産を終え、すぐさまフューエルインジェクションを搭載した2010年型として舞い戻ってきました。

ところが2017年には再び規制強化で生産中止の危機に追い込まれてしまいます。それでもチャコールキャニスターなどの追加で対応を果たし、2019年型が発表されました。しかし来年2022年に適用される二輪車排出ガス規制への対応はついにかなわず、名車SR400は、このファイナルエディションをもって、惜しまれながらその歴史に幕を下ろすこととなったのです。

SR400
ライダーという生き物にぴったり寄り添う乗り物。冷たい機械のはずなのに、SR400にはそんな温かい息吹が感じられます。

現代社会の環境性能への要求は、やがてバイクの動力をエンジンから電気へと変えてゆくことになるのかもしれません。静かでクリーンな動力は歓迎されるべきですし、電動化によってバイクの利便性・安全性がいっそう高まることも期待できます。

でも、そのいっぽうでSR400の「トントントン……」というあの独特のフィーリングを電気モーターで生み出すことは、少なくとも当分の間は至難のわざか、もしかすると、もはや見果てぬ夢なのかもしれませんね。

(文:村上 菜つみ/写真:高橋 克也)

【ヤマハ SR400 Final Edition 主要諸元】

型式:2BL-RH16J
発売年:2021
発売月:3
仕向け・仕様:国内向けモデル
全長 (mm):2085
全幅 (mm):750
全高 (mm):1110
ホイールベース (mm):1410
最低地上高(mm):130
シート高 (mm):790
車両重量 (kg):175
最小回転半径(m):2.4
乗車定員(名):2
燃料消費率(1)(km/L):40.7
測定基準(1):国交省届出(60km/h走行時)
燃料消費率(2)(km/L):29.7
測定基準(2):WMTCモード値
原動機型式:H342E
原動機種類:4ストローク
気筒数:1
シリンダ配列:単気筒
冷却方式:空冷
排気量 (cc):399
カム・バルブ駆動方式:OHC(SOHC)
気筒あたりバルブ数:2
内径(シリンダーボア)(mm):87
行程(ピストンストローク)(mm):67.2
圧縮比(:1):8.5
最高出力(kW):18
最高出力(PS):24
最高出力回転数(rpm):6500
最大トルク(N・m):28
最大トルク(kgf・m):2.9
最大トルク回転数(rpm):3000
燃料供給方式:フューエルインジェクション
燃料タンク容量 (L):12
燃料タンク・リザーブ容量 (L):2.2
燃料(種類):レギュラーガソリン
満タン時航続距離(概算・参考値):488.4
エンジン始動方式:キックスターター式
点火装置:フルトランジスタ式
点火プラグ標準搭載・型式:BPR6ES
点火プラグ必要本数・合計:1
搭載バッテリー・型式:GT4B-5
バッテリー容量:12V-2.5Ah 10HR
エンジン潤滑方式:ドライサンプ式
エンジンオイル容量※全容量 (L):2.4
エンジンオイル量(オイル交換時)(L):2.0
エンジンオイル量(フィルタ交換時)(L):2.1
推奨エンジンオイル(SAE粘度):10W-40
クラッチ形式:湿式・多板
変速機形式:リターン式・5段変速
変速機・操作方式:フットシフト
1次減速比:2.566
2次減速比:2.947
変速比:1速 2.357/2速 1.554/3速 1.190/4速 0.916/5速 0.777
動力伝達方式:チェーン
スプロケット歯数・前:19
スプロケット歯数・後:56
チェーンサイズ:428
標準チェーンリンク数:130
フレーム型式:セミダブルクレードル
キャスター角:27°40′
トレール量 (mm):111
ブレーキ形式(前):油圧式ディスク
ブレーキ形式(後):機械式リーディングトレーリング
ブレーキオイル適合規格:DOT 4
懸架方式(前):テレスコピックフォーク
フロントフォークタイプ:正立フォーク
フロントホイールトラベル(mm):150
懸架方式(後):スイングアーム式
ショックアブソーバ本数(後):2
リアホイールトラベル(mm):105
タイヤ(前):90/100-18
タイヤ(前)構造名:バイアス
タイヤ(前)荷重指数:54
タイヤ(前)速度記号:S
タイヤ(前)タイプ:チューブタイヤ
タイヤ(後):110/90-18
タイヤ(後)構造名:バイアス
タイヤ(後)荷重指数:61
タイヤ(後)速度記号:S
タイヤ(後)タイプ:チューブタイヤ
ホイールリム幅(前):1.85
ホイールリム幅(後):2.15
タイヤ標準指定空気圧(乗車定員時・前):2.00
タイヤ標準指定空気圧(乗車定員時・後):2.25
ヘッドライト定格(Hi):60W/55W
ヘッドライトタイプ(Hi):H4
スピードメーター表示形式:アナログ
メーター表示:エンジン回転計:有
車両装備:ハザードランプ:有
車両装備:センタースタンド:有

メーカー希望小売価格:60万5,000円(税込)

【関連リンク】

SR400 Final Edition Official Site
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/sr400/

村上菜つみさんがヤマハ・SR400 Final Editionで出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2021年10月号(9月6日発売)に掲載されています。
モトチャンプ2021年10月号