学生の柔軟な発想とフットワークの軽さが収穫。三菱自動車が進める産学協同プロジェクトの成果とは?

■学生の柔軟なアタマで思い浮かぶ近未来のカーデザインとは?

2021年6月14日、三菱自動車は専門学校HALカーデザイン学科(東京・大阪・名古屋)との産学協同プロジェクトの実施をリリースしました。

三菱・メイン
産学共同プロジェクトによるスケッチの一例

今回はこれらのプロジェクトを運営するデザイン本部の吉田氏と、講師を務める4人の若手デザイナー諸氏に、あらためて産学の概要を伺ってみました。

●クルマ離れではなく、意識の変化

── はじめに、近年の三菱自動車の産学協同プロジェクトはイタリアのTAD(Trensportation And Design)、専門学校HAL、多摩美術大学、東北芸術工科大学などで行われていますが、その経緯と目的を教えてください。

取り組み自体は4年ほど前からですね。もともとは、各大学等で教鞭をとっている当社のOBから声が掛かったことがきっかけです。近年、とくに若年層には『クルマは道具』という意識が高く、以前のように愛着を持つ対象になっていない。カーシェアなどがいい例ですけど、そうした状況の中で企業が教育に参画し、事業としてカーデザインの普及を狙ったわけです。

三菱・授業風景1
専門学校HALでの授業風景

── いわばクルマの「意識離れ」ですね。では、プロジェクトはどのように進められているのでしょう?

各学校ごとに設定されたテーマに基づいてコンセプト設定を行い、そこからスケッチ製作に進みますが、それぞれの特徴に合わせて対応を考えています。また、コロナ禍のため、昨年からは基本的にオンラインによる講義形式となっています。

たとえば、専門学校HALでは2030年のEVをテーマとして自由な発想への展開を期待しつつ、そこに至るコンセプト提案に重きをおいています。一方、多摩美術大学との授業では2030年のモビリティをテーマとしつつ、スケッチ展開やスキルを重視した内容としています。

── 現役デザイナーによる指導の中で、学生にはどのような変化があると感じていますか?

当初はコンセプトとスケッチが噛み合っていない例が目立ったのですが、講義を進める中で次第にマッチするようになりましたね。また、デジタルツールでは比較的簡単に「それらしい」絵が描けてしまうのですが、最近はしっかり立体を意識したスケッチになっています。

学生からは個性的なアイデアが多く出されるのですが、それをリアリティのある提案に落とし込めるようになったと感じていますね。

三菱・授業風景2
多摩美術大学での授業風景(その1)

●新鮮な学生視点の発想

── 逆に、このプロジェクトが講師の皆さんに与えた影響はありますか?

学生視点の発想、たとえば10年後にはもうコロナは収束しているのではなく「共存」しているといった想定にハッとさせられたり、先にも触れましたが、進化するデジタルツールへの対応に感心します。

手描きスケッチはいまでも重要ですが、一方で液晶タブレットを使ってササッと描いてしまうフットワークの軽さには刺激を受けます。自分たちが学生の頃とずいぶん違うなぁと(笑)。

三菱・授業風景3
多摩美術大学での授業風景(その2)

── 講師の皆さんもリフレッシュされているようですね。では最後に今後の計画について教えてください。

現行のプロジェクトは9月末で一旦終了となります。今後はデザイン学校に限定せず、いろいろな共創の可能性を探りたいですね。また国内に限らず当社の事業中核地であるASEANも含めた地域も検討したいと考えています。

── ASEANは市場としても重要ですからユニークなプロジェクトができぞうですね。本日はありがとうございました。

【語る人】

三菱・デザイナー1
吉田 裕司氏

三菱自動車工業株式会社
東京デザイン部 デザインマネジメント&コミュニケーショングループ
マネージャー
吉田 裕司氏

三菱・デザイナー2
(写真右より)齋藤 聞人氏、山本 樹氏、杉田 燎氏、三品 有輝氏

デザイン・戦略部 エクステリアデザイングループ
(写真右より)齋藤 聞人氏、山本 樹氏、杉田 燎氏
デザイン・戦略部 インテリアデザイングループ
(写真左)三品 有輝氏

(インタビュー・すぎもと たかよし