日産・ローレル 5代目、四角四面なボディは格調高き高級サルーンの証【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第9回】

■NISSAN直線基調デザイン時代のハイオーナーカー

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第9回は、欧州調から一転、アメリカンな直線スタイルに変貌したハイオーナーサルーン・日産ローレルの5代目に太鼓判です。

ローレル・メイン
先代と大きく異なる直線基調のスタイル

ライバルのトヨタ・マークIIがチェイサー、クレスタと兄弟を増やして攻勢を掛ける中、より高級なサルーンを目指してスタイリングを大幅に方向転換。そうして1984年に登場したのが5代目のローレルです。

●販売のメインはハードトップボディ

「華麗で格調高いダイナミックなスタイル」をデザインテーマとしたボディは、先代と同一のホイールベースながら全長をわずかに延ばし、高い存在感と広い居住空間を目指したもの。

ボディタイプも先代同様にセダンとハードトップの2種ですが、個人オーナーに対する販売のメインはもちろん、ハードトップボディです。

ローレル・セダン
セダンはグリルを始めよりフォーマルに

フロントでは、重厚感のある2段構造のグリルが特徴。12個の四角い枠を並べたグリルと角型のランプのカッチリした組み合わせ、そしてほとんとスラントしていないノーズがこのクルマのスタイル全体を物語ります。

サイド面も直線基調の水平ラインで構成。キャビンは、ハードトップでも意外に天地が高く広いガラスエリアを持ち、余裕のある室内を表現。一直線のキャラクターラインと長方形のドアノブがボディの「四角さ」をより強調します。

ド平面かと思いきや、実はそれなりに張りのあるボディのサイド面は、ボディを1周する太いサイドプロテクターとの組み合わせで、意外にスッキリした表情も見せます。一方、2トーンのボディカラーでは応接間的な独特の高級感を演出。

ローレル・リア
大型のリアランプが80年代らしさを表現

リアビューでは、フラットな面の低い位置に置かれた大型のランプとガーニッシュが強い安定感を生み出しています。この大型ランプと一体成型バンパーとの組み合わせが、実に80年代らしい雰囲気を感じさせます。

●インテリアも直線基調で

インテリアでは、本革調のソフトパッドなどによる高品質感が自慢のようですが、デザイン的にはすべてがボディ同様、直線基調であり、とりわけ「絶壁」と表現された逆スラントのインパネが特徴的です。

ローレル・インテリア
ボディ同様直線基調のインテリア

「乗る人の感性に訴える最高級オーナーサルーン」という開発コンセプトは、先代のヨーロッパ調から一転、実にアメリカンなスタイルへ変貌させました。当時の日産は、6代目の”トラッドサニー”や、7代目ブルーバードなどの「直線ボディ」が溢れていたのです。

それは欧州指向の先代ローレルなどが販売的に不振だったことの反省があったようですが、スマートなスタイルで躍進するライバルに対し、カーデザインとしては少なからず後退してしまった時期と言えるかもしれません。

■主要諸元
ローレル 4ドアハードトップ ターボメダリスト

(パワー・エコノミー自動切換式スーパートルコン)
形式 E-GC32
全長4675mm×全幅1690mm×全高1390mm
ホイールベース 2670mm
車両重量 1390kg
エンジン 1998cc V型6気筒OHCターボ
出力 170ps/6000rpm 22.0kg-m/4000rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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