【ママチャリの闇?】現代の多くのシティサイクルは新車でも「整備不良」状態で、無駄に疲れることが判明!?

■意外なところに潜んでいた疲れの要因

●ペダルの回転、渋くないですか?

シティサイクル(ママチャリ)をお持ちのかた、試しに自分の自転車のペダルを指ではじいて回してみてください。漕ぐんじゃないですよ。ペダル部分だけを回すんです。

クルクルクルっと何回転も回ればOKです。でも1回転もしないで止まってしまうような場合、あなたの自転車のベアリングは整備不良の状態で、漕ぐときに無駄な体力を使わされています。

実はいま、こんなシティサイクルが非常に多いのです。

このことに気づいたのは、家のシティサイクルのペダルを交換したときでした。

ボクは34年前に買ってもらったブリヂストンのシティサイクルを持っています。いまはおもに中学生の息子が乗っていますが、その自転車のペダルが壊れたので、ホームセンターで新品のペダルを1000円ちょっとで買ってきて交換しました。

34年前のペダル
34年前に買ったシティサイクルの純正ペダル。壊れてしまって異音が出ます。もっとも、これでも問題なく漕ぐことはできました。

作業は、ペダルレンチがあればそれに越したことはないですが、15mmのスパナかモンキーレンチがあれば大丈夫なことも多いでしょう。固く締まっていたら、浸透潤滑剤を噴いてひと晩置いておくと効果的です。それでも固かったら、レンチの端をプラスチックハンマーなどでコンコン叩くのもおススメです。

必要な工具はそれくらいです。なお、左のペダルは逆ネジになっているので気をつけてください。

ところが、作業が終わってペダルを新品に交換した自転車に乗ってみた息子が「漕ぐのが重くなった(怒)!」というのです。乗ってみると、たしかに重い。まるでチェーンを張りすぎた自転車のように、アソビやガタを感じない代わりに、抵抗も大きいのです。

そこで、ペダルを手で回してみて気づきました。渋い!! 少しクリック感すらあります。指で勢いよく回そうと思っても、せいぜい半回転でピタッと止まってしまいます。

現代のペダルは回らない
どんなに勢いよく回そうと思っても、半回転で止まります。事実上ブレーキがかかっているような状態です。

そこでもう一度、外したばかりの古いペダルに戻してみました。こんどは「シャーッ」と軽く回ります。漕ぐのも元通り軽くなりました。

右のペダルはすでにベアリングが崩壊しかかっていて、軸方向にガタもあるし、漕ぐたびに「キーコ」と音が鳴るのですが、それでも軽く回ってくれます。

よく回る34年前のペダル
34年前の純正ペダル。めちゃくちゃよく回ります。もう崩壊しかかっていますが。

「買ってきたペダルは不良品か?」と思った私はホームセンターに行き、展示されている新品の自転車のペダルを片っ端から回してみました。すると、軽く回るのは電動アシスト自転車くらい(おそらく価格が高いので、ちょっといいペダルを使っているのでしょう)。電動アシストでないほとんどのシティサイクルは同様にペダルが渋いのです。

そう。私が買ったペダルと同じくらいの渋さでした。

そのあと自転車量販店に2件ほど行って、展示車両のペダルを回してみましたが、ペダルの渋さはほぼ同様でした(全体的に少しだけマシな量販店もありました)。

「ということは、新しいペダルも、最初動きが渋いだけで、少し使えば慣れてきて回転が軽くなるのかな」と考えた私は、家のシティサイクルをもういちど新品のペダルに戻しました。息子は不満そうでしたが、しばらくナラシをさせることにしたのです。

しかし、1週間ほど使っても、ペダルが軽くなった感じはしませんでした。部品を新しくして以前より疲れるようになったのでは本末転倒です。ちょっと腹が立ってきました。

そこで、こんどはハードオフやトレジャーファクトリーといった中古ショップに行き、そこに並んでいる中古自転車のペダルを回してみました。

すると、中古シティサイクルのペダルも、依然としてやっぱり渋かったのです。MTBやスポーツ車などは、軽く「シャーッ」と回るものも少なくありませんでした。でもほとんどのシティサイクルは、ホームセンターの新車と同様、1回転もしないで止まってしまいます。

知り合いの自転車のペダルも回させてもらいましたが、やはりかなりの確率で渋かったのです。

一定以上の年齢のかたはご存じでしょう。30年前はシティサイクルももっと高価でした。今みたいに1万円前後のものが主流なんてことはありませんでした。ブリヂストンやミヤタといった国産メーカーがほとんどだった時代、おそらく部品もほとんどが国産だったでしょう。

それから時は流れ、無名ブランドの安い輸入自転車が主流となるなかで、コスト削減のしわ寄せがペダルのベアリングに及んでいるのではないでしょうか?

そして、現代のママチャリ乗りの多くは、知らないあいだに、30年前のママチャリ乗りよりも無駄に体力を使わされているのです。これはちょっとショッキングでした。

●ペダルひとつに「さすが国産!」とうなされた!

いっぽうで、息子の友だちが買ってもらったばかりのブリヂストンの自転車は、現代のシティサイクルとしてはめずらしく軽くペダルが回りました。

「じゃあ、うちの自転車はどうしよう?」と思ったところで気になったのは、よく回る古いペダルに入っていた『MKS』というロゴです。ググってみると、三ヶ島製作所という会社で、現在日本で唯一の自転車ペダルのメーカーのようです。

ホームセンターで売られているペダルはこのMKS製ではありません。それどころか、店頭でも街中でも、シティサイクルでこのMKSのペダルを見ることはほとんどありません。

私が34年前の自転車に乗り続けている理由は、このブリヂストンの自転車、なんかフィーリングがいいのです。変速機もない安いシンプルなシティサイクルですが、フリクションロスが小さいような気がして、高校生だった当時から私は気に入っていました。

そこで私は当時の純正ペダルのメーカーであるこのMKSに賭けてみることにしました。MKSでは意外とママチャリ用のペダルも複数ラインアップされているのですが、ネットで見つけた『G-6000』というモデルを買ってみました。なんとAmazonで964円。ホームセンターのペダルより安く買えました。ちなみに、シティサイクル用のペダルというものは規格が同じで、古今東西ほとんどどれでも適合するそうです。

MKSペダル
MKS(三ヶ島製作所)のペダルを装着。ぜんぜん高価じゃありません。もしシティサイクルのペダル交換をするなら、こういうものを選ぶべきです。

数日後、送られてきたMKSペダルを手で回してみました。「クルクルクルッ」。さすが、ちゃんときれいに回るではありませんか! これぞ国産といったベアリングの感触でした。さっそく自転車に取り付けたところ、息子も「もとの軽さに戻ったー!」と喜んでおりました。

●“現代のペダル”の問題は、ベアリングの調整不良だった

よく回るMKSペダル
MKSペダルはよく回りました。国産シティサイクルが本来の性能を取りもどした瞬間です。

しかし、釈然としないのは“現代のペダル”です。自転車に詳しい友人が「新品だったらグリスは問題ないだろうから、玉当たりの調整が不良なのでは?」とアドバイスしてくれました。

で、よく見ると、ペダルの先端側にはキャップがあって、調整することも可能なようです。そこで試してみることにしました。

ペダルのキャップを外す
キャップは細いマイナスドライバーなどで簡単に外すことができます。
ペダルのベアリング
中はこのような感じ。ロックナットは12mmでした。これはソケットツールがあれば緩めることができます。

ひょっとすると玉当たりがキツすぎるのではないか? ゆるめればベアリングの渋さは解消できるのではないか? そう思ったわけです。

ロックナットを外す
まずはソケットレンチでロックナットを緩めます。
玉当たりを調整する
ロックナットの奥に玉当たり調整用のネジがあります。これはラジオペンチで回すことができました。

玉当たり調整用のネジは15mmだったようで、私は15mmのソケットを持っていないのでどうしようかと思いましたが、キツく締まっていないので、ラジオペンチで簡単に回すことができました。

そして、玉当たりを緩めた結果…「シャーッ」。最初は不良品かとも思われたペダルは軽く回りました。

ベアリング調整すればよく回る
最初「粗悪品じゃねえか!」と思ったペダルも、ベアリングの調整をするだけで見事に作動するようになりました。

そう。粗悪品というのとはちょっと違って、調整がきちんとされていなかったのです。おそらく、組み立ての際のトルク管理がちゃんと行われていなくて、キツく締めすぎているのでしょう。

玉当たり調整は、けっこう微妙な作業です。緩めすぎると回転は軽くなりますが軸方向にガタが出る。ガタが出ない範囲で軽く回るようにしたいところですが、ホントに30度とか45度とか回すだけで大きく変わります。

調整してはペダルを回してみて、というのを繰り返してちょうどいいところを探ります。ちょっと面倒ですが息子と一緒にやったら、けっこう楽しい作業でした。

というわけで、今回3つのことがわかりました。

1つめは、現代のシティサイクルの多くは、ペダルのベアリング調整が不良で、無駄に体力を使わされている。

2つめは、MKSのようなちゃんとしたメーカーのペダルを使えば、快適な仕様になる。

3つめは、あるいはペダルのベアリングの玉当たり調整をすれば、渋さは解消できる。もしかしたら、自転車屋さんでも相談すれば対応してくれるかもしれません。

抵抗の大きいペダルを漕ぎながら「ママチャリはこんなもんでしょ」と思っていた人もいるかもしれませんが、ちゃんと調整されているペダルとそうでないペダルとでは、モノは同じでも漕いだときの重さが明らかに違いました。

全国のママチャリオーナーの皆さん、目覚めてください! ペダルが「整備不良状態」の自転車にそのまま乗っているのはもったいないですよ!

まめ蔵

この記事の著者

まめ蔵 近影

まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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