レアアースとレアメタルとは?モーター磁石やリチウムイオン電池に不可欠な希少金属【バイク用語辞典:材料編】

■ネオジムやジスプロシウムなど「レアアース」はモーターの磁石に使用

●リチウムやコバルト、ニッケルなど「レアメタル」はリチウムイオン電池で利用

バイクにも徐々に電動化の波が押し寄せ、本格的な電動バイクも商品化されました。電動化技術でキーとなるのが、駆動モーターやリチウムイオン電池です。これらに活用される希少な金属がレアアースとレアメタルです。

希少で重要な役割を担うレアアースとレアメタルについて、解説していきます。

●レアアースとレアメタルとは

バイクでは、用途や目的に応じて多種多様な金属が使用されます。

レアメタルとレアアース
レアメタルとレアアース

大別すると、鉄やアルミのように産出量が多くて大量に使用される「ベースメタル」、触媒などで使用される白金やパラジウムのような「貴金属」、そのほか産出量が少なく抽出が難しい電動化技術に欠かせない「レアアース」と「レアメタル」があります。

・レアアース
元素の周期表で希土類に属する17種類の希少な金属です。とくに駆動モーターの永久磁石で使用するネオジムやジスプロシウム、テルビウムは貴重な物質です。

・レアメタル
工業製品で多用されながら、産出量が少なく入手が困難な希少な金属です。経産省が安定供給の確保が政策的に必要として定めた31種類の金属で、リチウムやニッケル、コバルト、白金などはリチウムイオン電池や触媒などに利用されます。上記の17種のレアアースは、レアメタルに含まれます。

●電動バイク用駆動モーターで使われるレアアース

バイクでもクルマでも電動車の駆動用モーターとしては、小型軽量で効率が高い永久磁石同期モーターが主流です。永久磁石同期モーターは、ローターに永久磁石を使い、周りのステーターはコイルを巻いた電磁石で構成します。コイルに3相の交流電流を流すことによって、回転磁界が作られ回転します。

永久磁石同期モーターの構造
永久磁石同期モーターの構造

ローターの永久磁石には、磁力の強いネオジムや添加するジスプロシウム、テルビウムのレアアースを使用します。ただし、これらのレアアースは産出量が少なく中国に集中しているため、コストと調達のリスクがあることが課題です。

この課題を解決するため、レアアースの量を減らす、使わない、あるいは磁石を使わないモーターの開発が進められています。トヨタは、ネオジムの使用量を半減した新型磁石を開発、ホンダもジスプロシウムとテルビウムを使わないネオジム磁石を実用化してHEV用モーターに採用しました。

●リチウムイオン電池で使われるレアメタル

リチウムイオン電池は、エネルギー密度(Wh/kg)が鉛蓄電池の3~8倍程度、単位質量あたりの出力密度(W/kg)は2倍近くあり、電動車には不可欠な2次電池です。容量が大きいということは小型軽量化できることを意味し、電動バイクだけでなく通常のガソリンエンジン搭載のレーシングマシンや市販のスーパースポーツモデルなどでも採用されています。また、標準仕様の鉛バッテリをリチウムイオン電池に交換してカスタム化するライダーも増えています。

リチウムイオン電池の原理
リチウムイオン電池の原理

リチウムイオン電池は、正極にリチウム系材料、負極にカーボン系材料、電解質としてリチウムイオンを含む電解質を用います。正極と負極の間をリチウムイオンが移動することによって、充電や放電を行いますが、正極と負極、電解質の組み合わせで様々な種類があり、性能が異なります。

特に正極材料には、リチウム以外にもコバルト、ニッケルなどのレアメタルを使うので、どうしてもコストが上がってしまいます。レアメタルを使わない技術も研究されていますが、それでも今なお電池コストは電動化を進める上で大きな障壁になっています。


レアアースとレメタルは、地球上にわずかしか存在しませんが、他の金属に添加したり混ぜ合わせることで、性能を向上させたり特別な性能を発揮したりする貴重な金属です。しかし、希少なだけにコストと調達のリスクが付きまとうため、代替技術や使わない技術の開発が急がれています。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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