トートバッグが原点? 縦目のユニークスタイル、三菱・ミラージュ ディンゴ【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第6回】

■三菱のニュージャンルエントリーモデル三菱「ミラージュ ディンゴ」

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第6回は、まったく新しいジャンルとして「SUW」を打ち出した、ユニーク顔のマルチコンパクト三菱・ミラージュ ディンゴに太鼓判です。

ディンゴ・メイン
初代ミラージュの六角断面を再現したというボディ

●初代ミラージュの個性を踏襲

環境負荷など、今後のクルマのあり方について方向転換を模索していた三菱は、1998年に新たな企業スローガンとして「いいもの ながく」を提唱。新しい車種シリーズの第1弾として同年に発表されたのが、ミラージュディンゴです。

新しいスローガンの基本思想を打ち出した「SUW(スマート・ユーティリティ・ワゴン)」として、セダンでもワンボックスでもオフローダーでもないボディは、ミラージュの全長の中でフラットフロアを実現する、全高1635mmのパッケージとしました。

ディンゴ・サイド
居住性のよさを感じるビッグキャビン

デザインテーマは「イノベイティブ・コンパクト」とし、初代ミラージュの六角断面を再現したといいます。これを反映したかのようなフロントランプは変則多角形で、ボディの高さに対応した縦長形状が他にない独特の表情に。

フロントフェイスは、そのランプとともに広い平面を作っているのが特徴。さらに、左右フェンダーからバンパーにつながる大きなカタマリの流れが、この平面を包み込んでいるのも実にユニークです。

サイド面でも、確かな足回りを表現するこの分厚いフェンダーがひときわ目を引きます。ブリスター形状も兼ねるこのフェンダーは、同時に背高のボディに安定感を与える役割もあるようです。

ディンゴ・リア
フロントに準じたリアランプが特徴的

キャビンは水平基調の素直なもので、直立したリアピラーとともに居住性の高さを示します。また、六角断面を表す明快なキャラクターラインもキャビンと平行に走っており、実にスッキリとした表情です。

●肩肘を張らないクルマを目標に

リアではランプをフロントに準じた形状とし、さらにフェンダーとバンパーに囲まれた独特の表現もフロントと同様。リアパネルにはキャラクターラインがそのまま回り込んでいて、このボディが、基本的には極めてシンプルな構成であることを伺わせます。

ディンゴ・インテリア
2トーンの肉厚なパネルは質感が高い

インテリアのデザインテーマは「走るリビングルーム」。濃色の上部は乗員を外敵から守り、淡色の下部は人を包み込む2トーンの配色が特徴。また、一体成型の厚みを感じるインパネは質感の高さを誇っています。

もともとは、何でも気楽に入れられるトートバッグに車輪をつけたイメージが基本コンセプトだったそう。「クルマはしばらく、これでいい」のキャッチコピーのとおり、そうであればもっと素直なデザインでよかったのでは?と思えます。

初代RVRのヒットもこのクルマを後押ししたようですが、そのRVRの2代目も少々過剰表現気味でした。その「クセ」が三菱らしいと言えそうですが、ミラージュ ディンゴのクセは決して万人向けではなかったようです。

■主要諸元 ミラージュ ディンゴ(4AT)
形式 GF-CQ2A
全長3885mm×全幅1695mm×全高1635mm
ホイールベース 2440mm
車両重量 1180kg
エンジン 1468cc 直列4気筒DOHC16バルブ
出力 105ps/6000rpm 14.3kg-m/3500rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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