目次
●タイヤを交換した前後で何がどう変わった!?
クルマのタイヤは、経年による硬化や、走行による摩耗など、日々劣化していきますが、その変化を毎日の運転の中で日々感じ取っていくのは、なかなか難しいもの。
しかし、新しいタイヤへ交換すると、路面のざらつきが減って乗り心地が改善したり、ロードノイズが静かになったりと、どなたでも感じることができる明確な性能変化が起こります。
今回、ちょうどタイヤが摩耗限界となった筆者のクルマを用いて、タイヤを交換した前後で筆者が感じた変化について、レポートしようと思います。
また、「クルマ業界のご隠居」両角岳彦氏のアドバイスのもと、新しく購入したタイヤのポテンシャルを探っていく「タイヤの味見」も実施。前編後編の2記事にわたって、その様子をご紹介していきます。
■新タイヤは、ミシュランパイロットスポーツ4!!
クルマは、2013年式のシトロエンDS3スポーツシック、1.6L 直4ターボの6速MT車です。かわいい黄色のボディに17インチのホワイトホイールを履くフランス製3ドアハッチバックのボディ、どこにいっても目立ちます。
ちなみにこのクルマ、WRCにてセバスチャン・ローブが連勝を重ねていたころの、WRカーのベースとなったモデルでもあります。90年代からWRCが大好きだった筆者にとって「一度は乗ってみたいクルマ」の一台であり、縁があって1年ほど前に手に入れました。
装着していた某国産製のタイヤはサイド部がひび割れており、すでにタイヤの寿命を迎えていた状況でした。その影響もあり、タイヤ交換前はロードノイズが酷く、ステアリングホイールやシートからもザラザラした振動を感じました。
突起乗り越し時の突き上げの強さも気になっていましたが、こちらはクルマ本来のサスセッティングの影響も考えられるため、新タイヤへ交換して改善できるか!? 楽しみにしておりました。
選んだリプレイス用タイヤは、ミシュランのパイロットスポーツ4(以下PS4)。このタイヤを選んだ理由は、このクルマが欧州製のコンパクトカーであったこと(欧州製タイヤとの相性が良いはず)、また、スポーツタイプであるDS3本来の性能を引き出すため、ウェットもこなせるスポーツ系タイヤがよかったこと、などです。
タイヤに深い知見のある両角氏にも相談し、最終的には最新のミシュランタイヤを装着してみたい、という個人的な欲求が高まったことが、決定要因です。
■ファーストコンタクトで実感!!
空気圧は、クルマ指定の前後240kPaでセット。走行後の温度上昇による内圧上昇も加味し、冷間時の数字で管理することとしました。
4輪を新タイヤへと交換し、30km/h程度の低速でもすぐに分かる「音の静かさ」と「路面とのタッチの柔らかさ」。
酷いレベルだったロードノイズは7割ほどに低減した印象です。道路の継ぎ目やマンホールの乗り越し時の音も、「ダンダン」から「タンタン」という軽快な音へと変化していました。
突起乗り越し時の突き上げもマイルドになり、ショックが半分程度になりました。45扁平としては、PS4はかなり柔らかいタイヤだと感じます。と、ここまでは、フレッシュなタイヤによる「想定の範囲内」の恩恵。ここからが驚きでした。
■高速直進性が明確に高まった!!
低速(30km/h以下)での走行時、ステリアリングからの反力は少し弱くなりました(1割ほど軽くなった)。タイヤのサイドウォールがこれまでよりもたわむ感じがあり、これまで感じていた、硬いトレッドゴムを地面へ擦り付ける印象が無くなりました。
また、操舵力がやや軽くなったおかげで、据え切り操舵が楽になりました。
中速(60km/h程度)まで上げると、ステアリングのセンター付近がよく分かるような操舵反力があり、直進性が増しているのが明確に分かります。高速(100km/h程度)まで上げていっても、直進性の高さは保ったまま。
依然としてタイヤ全体が柔らかい印象はありますが、サイドウォールが左右によれる印象は全くなく、高速直進時の安心感が高まったのは非常に良い点です。これまでは、必死にステアリングを持っていたのに、PS4に履きかえたあとは、高速巡行が楽になりました。
■鼻先の動きに「落ち着き」が出たことで、安心感の高いハンドリングに変化
操舵応答性は、以前よりも、ややマイルドになった印象です。低速から中速の範囲での鼻先の動きは、ステアリング操作のあと、わずかなタメの後に反応します。
以前と比べたら相対的には「遅れ」とも言えますが、このクルマの場合はこれまでが「キビキビ」し過ぎていたため、直進性の低さにつながっていました。一般道をメインに走行している限りでは、落ち着きがある新タイヤの方が、適切な応答性に感じます。
また、高速走行時に強めのレーンチェンジをしてもリアタイヤの踏ん張りがきき、リアの追従性がしっかりとしました。ただ、以前に比べて「改善」という程でもなく、「少し味が変わった」程度の印象です。
こうして、タイヤの皮むきがてら約1カ月かけて1000kmほど慣らし運転を行いました。ここから今回の主題でもある「タイヤの味見」をしていきます。(後編に続く)
(文:自動車ジャーナリスト吉川賢一・写真:エムスリープロダクション鈴木祐子)