目次
■スロットルで吸入空気量を絞り、わずかな燃料供給で成立するアイドルは外乱に弱い
●主な原因は、ガソリンと吸気の量が変動、点火火花のエネルギー低下など
アイドルは、エンジンの出力とフリクションが釣り合った状態でエンジンが安定して回転を持続する状態です。要求される吸入空気量が少なく、それに応じた供給ガソリンも少量なので、どちらかの量が変動するとアイドル回転が不安定になります。
信号待ちなどでライダーが不安に感じるアイドル不調について、解説していきます。
●アイドル不調とは
バイクのアイドル回転数は、燃費や振動騒音を考慮して1000rpm程度に設定されます。アイドル時には、スロットル開度を全閉に近いわずかに開いた状態に絞り、それに応じた少量のガソリンを供給します。そのため、何らかの原因で吸気量やガソリン量が変動したり、点火不良などの影響を受けると回転変動が発生します。回転変動が大きいと、エンストする場合もあります。
最新の電子制御を採用しているバイクでは、回転数の変動を見ながら空気量と噴射量を調整してアイドル回転を安定させるフィードバック制御を採用しているモデルもあります。しかし、キャブレター仕様車や初期の噴射弁仕様車では、このような制御は採用してないのでアイドル回転は様々な外乱によって変動してしまいます。
●アイドル不調になる原因
・ガソリン供給不良
噴射弁仕様の場合、先端の噴口にカーボンが付着して適正な噴射量が噴射されないことがありますが、この場合はアイドルだけでなく全域で問題となります。噴射弁そのものが原因でアイドルが不調になる可能性は低いです。
一方、キャブレター仕様車ではアイドル不調になることがあります。その原因で代表的なのは、キャブレター内の燃料通路の詰まりです。これは、キャブレター内の残存ガソリンがタール状に変質してパイロットジェット通路を塞いでしまう現象です。
応急的な処置としては、キャブレターのパイロットスクリューの押し込み量の調整によって吐出量を増減させ、同時にエアスクリューでスロットル開度を変更してアイドル回転を安定させます。それでも安定しない場合は、キャブレターを分解してパイロットジェット通路を洗浄するしかありません。
・点火火花のエネルギー低下
バッテリが上がり気味の場合は、オルタネーターの発電量が少ないアイドル時には点火エネルギーが低下します。点火火花が弱くなると、燃焼が不安定になってアイドルが不安定になります。また、点火プラグがカーボン付着や燃料過多でカブリ気味の場合も、アイドル不調になります。
・吸気量の変動
エアクリーナーのエレメントが詰まると、吸気量が減少してアイドル不調の原因となります。また、マニホールドの接合部のガスケットが劣化するなどして、そこから空気を吸ってしまうと空燃比が薄くなって不安定になります。
●アイドル不調時の対応
アイドル不調になった場合、まず何が原因か見つけるのが大切です。
ユーザー自身が、キャブレターのパイロットスクリューとエアスクリューで調整を行う、点火プラグを抜いて洗浄する、吸気系に漏れがないかをチェックすることは可能です。しかし、ユーザーで解決できなければ、できるだけ早く整備業者に依頼すべきです。
アイドル不調を放置したまま走行し続けると、エンストを起こすリスクがあるので非常に危険です。交差点などのアイドル待ちで、エンジンが止まるのではないかとハラハラしながら運転するのは、精神的にも良いことではありません。
(Mr.ソラン)