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■個性爆発!? 日産・NXクーペをじっくり見てみよう!
80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返るグッドデザイン太鼓判:個性車編シリーズ。第2回目は、若者狙いに振り切った超カプセルボディのコンパクトクーペ、日産・NXクーペです。
●セダンとは別モノのボディパネル
1990年、日産は好評だった6代目の「トラッドサニー」をモデルチェンジ。これに伴い、クーペモデルであったRZ-1の実質的な後継として市場に送り込んだのが、オールニューモデルのNXクーペです。
セダンと同一のホイールベースながら、70mm短く・10mm広く・65mm低くなったプロポーションは、コンパクトクーペとして良好なもの。セダンが高級化を目指したことに沿い、「ファッショナブルなスポーティクーペ」というコンセプトを掲げたNXクーペもまた、デザイン品質を上げることを標榜しました。
そこで、RZ-1がセダンのイメージを共有していたのに対し、NXクーペはイメージをまったく別方向に変更、思い切り若者狙いに振り切りました。「タイムマシンかもしれない」というキャッチコピーのとおり、曲面主体のボディになるほどセダンの面影はありません。
楕円をモチーフとしたフロントランプの形状自体も特徴的ですが、バンパーに埋め込んだ表現はさらにユニーク。ボンネット上に引かれた滑らかな切り込みのラインによって、フロントの強い曲面構成が際立ちます。
サイドビューでは、ルーフもまた緩やかな曲線を描きますが、ボディ後端まで一直線に引かれたベルトラインが、一方でシャープなウエッジシェイプ基調を付加します。このテールゲートが同時期のZ32型フェアレディZに似ているのは偶然とか。
サイドボディはシンプルな張りのある面で構成されますが、ボディを1周するブラックのモールを筆頭に、光モノのないモール類がボディの引き締め効果と、さらに独特のプラスティッキーな未来感も醸し出します。
●斬新な北米スタジオ案を採用
リアはやはり楕円型の大型テールランプがボディに溶け込み、スポイラー一体型のリアゲートの効果もあって、強い一体感を得ています。さらに、左右のランプを結ぶゲートの切り込み線がアクセントになっているのも見所。
一方、ここまで独自の外観を持たせながら、インテリアはセダンと共通なのが実に残念なところ。もちろん、インパネは肉厚で高い質感を持っているのが救いですが、テーマの「ファッショナブル」さは見られません。
80年代後半から90年にかけては、日産が迷走から失地回復し、多くの商品が高い評価を受けた上り調子の時期。そこで、デザインチームがユニークなNDI(北米スタジオ)案を採用したのも納得できます。
ただ、北米のようにセクレタリーカー需要のない日本市場で、このタイムマシンに例えた未来派クーペに多くの引き合いはありませんでした。勢いに乗った日産の提案は、ユーザーの「受け皿」を少々越えてしまったのかもしれません。
■主要諸元 NXクーペ Type S(5MT)
形式 E-EB13
全長4140mm×全幅1680mm×全高1310mm
車両重量 1050kg
ホイールベース 2430mm
エンジン 1838cc 直列4気筒DOHC
出力 140ps/6400rpm 17.0kg-m/4800rpm