タイヤの摩耗とは?路面との摩擦によって表面が擦り減る現象【バイク用語辞典:ホイール・タイヤ編】

■どのように摩耗するかは、運転の仕方や走行パターン、タイヤの種類などによって異なる

●摩耗が進行すれば、グリップ力が低下してスリップなどのリスクが増大

タイヤは、路面との摩擦力によって回転してバイクを動かします。したがって、走行距離とともにタイヤの摩耗が進行して表面のトレードパターンの溝が浅くなり、スリップなどによって大事故を起こすリスクが高まります。

タイヤの摩耗とそれによって引き起こされる危険な現象について、解説していきます。

●タイヤに求められる性能

タイヤは、クルマの性能や安全、快適性を実現する重要な部品です。

具体的に要求される性能としては、直進安定性、操縦安定性、ドライ&ウェット走行安定性、低燃費、乗り心地、静粛性、長寿命などが挙げられます。

濡れた路面や雪路・凍結路では、路面との摩擦力が小さくなり、タイヤのグリップ力が低下して、クルマの操作性が悪化します。一方で、通常の路面でもタイヤ自体が摩耗して表面のトレッドパターンの溝が浅くなると、同じようにグリップ力が低下してスリップなどが発生しやすくなります。

●タイヤの摩耗

タイヤの主成分は天然ゴムなので、走行により路面との摩擦によって摩耗します。また、走行せず放置していても乾燥による材質劣化によって柔軟性が消失したり、ひび割れを起こします。

トレッドパターン例
トレッドパターン例

タイヤの表面には、いろいろなトレッドパターン(溝)が刻まれており、グリップ力を高めて駆動力や制動力を確保しています。それ以外にも、旋回性能や排水性能、振動吸収、静粛性にも大きく影響します。摩耗によりトレッドパターンが浅くなれば、タイヤ本来の性能を発揮できなくなり、走行性能とともに走行安全性が大きく悪化します。

摩耗の状況は、運転の仕方や走行パターン、タイヤの種類などによって異なります。一般に平坦でまっすぐな道を走ることが多ければタイヤの中央部が平らに摩耗し、コーナーを曲がることが多ければタイヤの端の部分が摩耗しやすくなります。またタイヤの空気圧が低いと、タイヤの摩耗が中央部だけでなくサイド付近まで進行します。逆に高い場合は、中央部に偏った偏摩耗が発生し、操安性能が不安定となり危険です。

このように重要な役目を担うタイヤは、法令でトレッドの溝深さが1.6mm以下になると交換することが義務付けられています。そのため、タイヤには溝の残りの高さが1.6mmの位置にスリップサインと呼ばれるマークを埋め込んでいます。スリップサインが現れたら、すぐにタイヤを交換しなければいけません。

●摩耗によって起こる危険な現象

タイヤの摩耗が進行すると、スリップが発生しやすくなり操縦安定性が著しく低下しますが、以下の現象によって大事故を起こすリスクも高まるので注意が必要です。

・ハイドロプレーニング現象

ハイドロプレーン現象
ハイドロプレーン現象

水溜りのある路面を低速で走行する場合、路面の水はトレッドパターンによって上手く後方に排出されます。しかし、摩耗が進んだタイヤでは高速走行で水の排出が間に合わなくなり、タイヤと路面の間に水膜が発生します。

この現象をハイドロプレーン現象と呼び、タイヤのグリップ力が消失し、クルマが制御困難になります。

・スタンディングウェーブ現象

スタンディングウェーブ現象
スタンディングウェーブ現象

走行中のタイヤは、路面の接触部は変形、路面から離れるとすぐに復元、これを繰り返します。ところが、空気圧不足のタイヤや摩耗が激しいタイヤでは高速走行で変形の復元が間に合わなくなり、トレッド表面が波打つスタンディングウェーブ現象が起こります。

これによりトレッド表面が剥がれ、最悪の場合はタイヤバーストを起こしてしまいます。


バイクの足元を支えるタイヤは、日頃から摩耗具合や空気圧をチェックすることが大切です。運転の仕方によりますが、安心なのは一般的なメーカーのタイヤ交換推奨時期の3~5年、走行距離1万~2万kmを目安に交換することです。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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