■年間5000台規模で売れているN-BOXスロープ車、車いす仕様の専用カタログがあるほど!
2020年1月~12月における販売台数が19万5984台、軽自動車のみならず、登録車も含めて日本で一番新車販売が多いクルマとなったホンダN-BOX。トータルでの新車販売台数としては4年連続、軽四輪車新車販売台数においては6年連続の首位獲得となりました。もはや「日本一売れているクルマ」と聞いても驚かないほどの超人気の定番モデルとなっています。
そんなN-BOXには、カタログモデルとしてスロープタイプ(車椅子仕様)が用意されています。
N-BOXの歴史をさかのぼると、初代モデルがデビューしたのが2011年12月、そして翌2012年7月にはロングテールゲートでラゲッジフロアを超低床にしたN-BOX+が誕生しています。このモデルは、福祉車両目的というわけではなく、農機具やミニバイクなどを積むレジャーユースという位置づけで、スロープもオプション扱いとなっていました。
しかし現行型にフルモデルチェンジした際にN-BOX+はN-BOXと統合されました。そしてアルミ製の伸縮型スロープや車椅子用電動ウインチ、車椅子用シートベルトなどを標準装備したスロープタイプとして進化しました。それまでは福祉車両というとベース車から改造するものというイメージもありましたが、N-BOXについていえばカタログモデルとして福祉車両を気軽に買えるようになったのです。
N-BOXスロープタイプは、一見すると通常シートのクルマと違いはありません。なにしろ標準タイプだけでなく、カスタム仕様のスロープタイプも用意されているほどです。業務用ではなく、ファミリーカー然としている点もN-BOXスロープタイプの特徴です。
福祉車両というと、手すりなどをオレンジ色のカバーで巻いている(白内障でも見えやすいため)ことが多いのですが、N-BOXスロープタイプではアシストグリップはブラック仕上げとなっています。これも業務用ではなく、パーソナルユースらしい雰囲気としている要因のひとつです。
なお、車椅子のまま乗車するときには後席を格納する必要があるのですが、逆に車椅子を乗せないときには通常のN-BOXと同じように後席を利用できますし、ラゲッジについても通常ボディのN-BOXと大差ないほど使いやすいスペースとなっています。「介護にもホビーにも、あらゆるシーンをカバー」する使い勝手の良さも魅力です。
そうしたこともあって、N-BOXスロープタイプは年間5000台の規模で売れています。この数字だけではわかりづらいかもしれませんが、福祉車両としても「日本一売れている」モデルなのです。ちなみに、N-BOXスロープタイプでは購入層の7割が個人ユーザーになっているそうです。高齢な家族が車椅子で移動するようになったときに選びやすいモデルなのです。
しかもN-BOXスロープタイプのラインナップを見ると、ターボエンジンも選べるほどで、標準ボディ・カスタムボディをあわせて6グレードが設定されています。メーカー希望小売価格は162万9000円~223万円(消費税非課税)と、この手の特別なクルマとしては十分にリーズナブルな設定となっているのも人気の理由でしょう。
さらに、今回のマイナーチェンジではスロープタイプも進化を遂げています。わかりやすい部分では、車椅子で乗車した際にステップ部分が当たるところ(後席の背面部分)に厚手のゴムを貼って、車椅子のフレームなどが当たったときにシートが破損しづらいようにしている点があげられます。
こうした改良は、ユーザーからの声をもとにしたものだということで、ユーザーが多いからこそフィードバックも豊富になり、こうして痒い所に手が届くような進化も可能になるのです。
N-BOXの販売台数年間19万台のうちの5000台となると、シェアとしては本当にわずかなといえますが、絶対的な台数として十分に改良できるだけの規模があることで、こうして確実に商品性を上げることができるともいえます。
福祉車両でもナンバーワンなN-BOX、車椅子を利用する家族がいるならば検討する価値アリといえるでしょう。
(自動車コラムニスト・山本晋也)