■スバルが考える「パフォーマンス×アドバンスド」とは?
2020年10月15日、スバルは二代目となる新型「レヴォーグ」を発表しました。
新たなデザインフィロソフィ「BOLDER」を採用した新型のデザインの意図はどこにあるのか? さっそくチーフデザイナーの中村氏に話を聞きました。
── 最初の質問です。新型の造形テーマである「パフォーマンス×アドバンスド」の意図を教えてください。
「レヴォーグが継承した歴代のレガシィでは、性能に対する信頼がとても大きかった。走るワゴンの血統はやはりスバル独自のものであるとして「パフォーマンス」を掲げました。一方、「アドバンスド」は新しい技術を惜しみなく投入し、スバルが自信を持って送り出す商品の造形を示しています」
── 当初「Dynamic×Solid」のフィロソフィに沿って進めていたところ、コンセプトカーである「ヴィジヴ・ツアラーコンセプト」を見て仕切り直したと聞きます。
「はい。もともと「Dynamic×Solid」は、街中でクルマを見たときに一瞬でスバル車と分かって欲しいと、2013年から取り入れた思想です。それが一巡し、次を模索している中でツアラーコンセプトが発表されました。そこで、単に「スバル車」ではなく、各車種の個性を強める手法としてその要素が使えると判断したわけです」
── それが「BOLDER」ですね。しかし、似たようなワゴンのコンセプトカーを別チームが並行して制作するとは珍しいですね。
「同じチームだと量産化の要件など余計なことをあれこれ考えてしまい、結果アピールも弱くなってしまうんですね。やはり頭の中を切り分けないといけない。これまでのコンセプトカーもずっとそうやってきたわけです。まあ、それでも今回はコンセプトカーを量産化することになったので当初は戸惑いもありましたが、いまはとてもよい判断だったと思います」
── そのツアラーコンセプト自体のテーマはどこにあったのですか?
「雑味を考えず、純粋無垢な造形としてツーリングワゴンを表現することですね。レヴォーグとはサイズも異なるし、量産車としては不可能な造形もありますが、その立体感のある佇まいが特徴でした。そこで、まさに立体的なグリルや張り出した前後フェンダーを初期案に反映させました」
── その「BOLDER」を、今後もスバル車のフィロソフィとして採用しようと考えたのはなぜですか?
「各車種の個性をどう打ち出すかは私たちの「宿題」でもあったんです。もちろん、ヘキサゴン形のグリルやCシェイプと呼ぶランプといった共通の要素はありますが、さらに明確さが欲しい。そこで、高速で長距離を走っても疲れない、乗員を守るように絞り込んだキャビン、ボディ全体を包み込み、カタマリ感を生み出す豊かなフェンダーなどが次の「進化」になり得ると考えました」
── グリル周辺はたしかに立体的になりましたが、ツアラーコンセプトでは前後を太く貫通するようなより強い勢いが特徴です。
「スバル車は、水平対向エンジンとAWDのメカニズムをどう表現するかが造形の軸で、従来のコンセプトカーがまさにそうでした。その中で、レヴォーグのように前傾姿勢を強調する車種と、フォレスターのようにより水平基調を示す車種をどう作り分けるか? この新型ではそのヒントとして今後の方向性を示したわけです」
── 最後に。最近のスバル車は各車種で佇まいが近似していて、この新型も含め根本的に大きく変わった印象があまり感じられません。たとえば構造的な制約などがあるのでしょうか?
「たとえば衝突性能対応では、とくに顔周りの肉付け具合などがどうしても似て来る傾向はあります。また、先のヘキサゴングリルとCシェイプ形のランプがあればスバル車になる、という思い込みも多少あったかもしれません。ただ、今回「BOLDER」を立ち上げてみて、デザインの善し悪しの見極めなど、かなり手応えを感じています。常に100点満点は難しいですが、今後はさらに個性を確立させるよう、攻めたデザインにチャレンジしたいですね」
── なるほど、共通のフィロソフィを持ちながらの個性化を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(インタビュー:すぎもと たかよし)