■アウトランダーとほぼ同じPHEVシステムを搭載。電動化時代への道を開くモデル
三菱自動車のクーペSUV「エクリプスクロス」が新型にモデルチェンジしています。
フロントマスクは、同社のダイナミックシールドというデザインフィロソフィーに基づき、「Daring Grace(大胆にして、優雅)」というコンセプトによる生まれたもので、通常ではヘッドライトに見える部分はシグネチャー、ヘッドライト本体はバンパーの左右に埋め込まれているというのは、デリカD:5やeK Xに通じるものでブランドの統一を感じさせます。
テールゲートも従来型のダブルウインドウからシングルウインドウタイプとなり、大きくイメージを変えています。インテリアでもセンターディスプレイが7インチから8インチに拡大するなど、確実にアップデートされています。
オーディオシステムについても、高音質を追求した「ミツビシパワーサウンドシステム」を上級グレードに設定。フロントにアルミ蒸着グラスファイバー製スピーカーとカーボン製コーンを採用したミッドツイーターを、リヤドアにはツイーターを同軸に配置したコアキシャル2Wayスピーカーを搭載するという本格的なものです。
このように、新型エクリプスクロスは従来モデルと完全に別物となっているように感じますが、基本となる1.5Lガソリン直噴ターボモデルの車両型式は同じで、あくまでもマイナーチェンジ。いわれてみればドアの形状などは変わっていませんし、インパネの骨格も同様です。
とはいえ、スタイリングの鮮度アップはかなりのもので、フルモデルチェンジに相当するほど魅力を高めているといえるでしょう。
新型エクリプスクロスのパワートレインは、その1.5Lガソリン直噴ターボと2.4Lアトキンソンサイクルエンジンに2つの大型駆動モーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)の2タイプ。
従来モデルではアドブルーを用いるクリーンディーゼルの設定がありましたが、時代ニーズに合わせてかディーゼルは廃止となっています。
PHEVのシステムは、世界一売れているプラグインハイブリッド車であるアウトランダーPHEVから受け継いだもので、16.4km/Lのハイブリッド燃料消費率(WLTCモード)や、65.0kmのEV走行換算距離(JC08モード)といったスペックは同一です。フロント60kW、リヤ70kWの最高出力を持つ駆動モーターも同じものとなっています。
そうであれば価格帯もさほど変わらないと思いがちですが、PHEV同士で比べるとエクリプスクロスはアウトランダーより50万円以上安くなっています。
具体的には、エクリプスクロスPHEVの価格帯は384万8900円~447万7000円、アウトランダーPHEVの価格帯が436万4800円~529万4300円。装備や仕様は異なりますが、いずれも衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM]や車線逸脱警報システム[LDW]といった先進安全装機能は標準装備しています。
「世界で一番売れている三菱自動車のプラグインハイブリッドを味わいたい」というユーザーにとってはうれしいニューモデルの登場といえるでしょう。
さらに三菱自動車の発表によれば、エクリプスクロスPHEVはハンドリングの楽しさを追求して、前後駆動トルク配分制御などを作り込んでいるといいますから、軽快な走りも楽しめそうです。
ただし車両重量については、エクリプスクロスPHEVは1900~1920kgとなっていて、アウトランダーPHEVの1900~1930kgとさほど変わりません。むしろグレードによってはエクリプスクロスPHEVのほうが重いくらいです。
ボディサイズでいうと、エクリプスクロスPHEVは全長4545mm・全幅1805mm・全高1685mm、アウトランダーPHEVは全長4695mm・全幅1800mm・全高1710mmですから、小さいボディのエクリプスクロスPHEVが重いというのは、それだけがっしりしたボディを持っているともいえそうです。
このあたりが、三菱自動車が自信を持つハンドリング性能に寄与しているのでしょう。その性能は公道でも味わうことができるのか、試乗する日が楽しみな一台です。
(自動車コラムニスト・山本晋也)