単にスクエアなボディじゃない。メルセデス・ベンツ「GLB」の意外なデザインとは?

GLB・メイン
スクエアなボディが好評とされるスタイル

すでに国内市場でも多くのSUVを用意するメルセデス・ベンツが、9車種目として導入したのが今年6月に発表した「GLB」です。

先行していた「GLA」とは異なる性格を与えられたデザインの特徴はどこにあるのか。あらためて検証してみたいと思います。

●長いキャビンがスタイルの要

GLAの兄貴分としてホイールベースを100mm拡大したボディは、それでも全長4640mmと、ギリギリ取り回しのよさを維持したサイズに収めています。これを、3列シートの7人乗りとしたことがGLBのスタイルの要だと言えます。

「スクエア」とされるスタイルは、まず多人数乗りのための長いキャビンが大きく影響しています。この全長で3列シートを実現するために、Aピラーを立ち気味とし、ルーフもリアまで水平に延ばすのはごく自然な成り行きです。

四角いと言いつつ、たとえばフロント先端のサイドビューが直立なのは、実はSUVに限らずほとんどの車種で一緒の話。さらに左右の絞りもあまり変わらないものの、やはり縦に長い大型のグリルと柔らかな角型のランプが四角いイメージを作っているようです。

GLB・サイド
3列シートを実現する長く大きなキャビン(欧州仕様車)

バンパー左右のエアインテークはSUVらしく大型ですが、AMGライン仕様も含めて光りモノがなく、程良い落ち着き感があります。中央のグリルにはメルセデス・ベンツのSUV共通の「ツインルーバー」が目立っていますので、とくに貧相な顔になっていません。

ボンネットフードには、Aピラーから流れる外側のラインと、その内側の2本の計4本のラインが走っています。これはGLAとほぼ同じ表現ですが、少々強過ぎるかなといった印象で、光の具合によってはかなり目立ちます。もちろん、SUVのタフさを意識したわけですが…。

ボディサイドは豊かな面の張りが特徴だとプレスリリースで謳われています。が、実はフロントランプからリアまでの高い位置に引かれたキャラクターラインが、一旦パネルを「折り返す」ことでそれを実現しています。

これは、広いパネルの張りを強調する場合のお約束的手法ですが、さり気ない処理が大人のデザインを感じさせます。

GLB・リアフェンダー
キックアップしたベルトラインは豊かなフェンダーに寄与(欧州仕様車)

サイド面では、ベルトラインの後端をキックアップさせているのも大きな特徴です。これは長いキャビンにリズムを与えることが想像されますが、ちょうどその下のリアフェンダーの張り出しへのスムーズな流れを作るためだとも思えます。

また、逆三角形型のリアピラーは、大きなキャビンが凡庸に感じられないよう変化を与えていると思えるほか、同時に、上半身を軽く見せる効果があるようにも見えます。

●単なる四角いボディではない

GLB・リアビュー
意外に丸いリアガラスが特徴

リアパネルは、スクエアとされるボディの中では、かなり曲線を使った丸っぽいリアガラスが意外なところです。これを見ると、ボディ全体を単に四角く見せようと考えているわけではないことが分かります。

また、その流れにあるのかは分かりませんが、リアランプの形状が若干曖昧であるのも意外な点です。フロントを意識すればより四角いイメージにする方法もあったと思いますが、「こういう形」と呼べない微妙な形なのが少々気になるのです。

余計なラインを使わず、豊かな面を強調したメルセデス・ベンツの新しいデザイン言語は、このGLBにもしっかり生かされています。

プレスリリースには「Gクラスからのインスピレーション」とありますが、そんな単純な話ではなく、全体をスクエアに感じさせながら、実は曲線と曲面がかなり練り込まれているスタイリングであるといえそうです。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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