スカイライン400R徹底試乗。シートはお尻スッポリ、視界も良好!【新型車インプレッション2/3(内装編)】

■インテリアには遊び心があと一つ欲しかったかも…

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●標準のスカイラインと基本的には同じ
●ツインディスプレイである必要性とは?
●高級感漂うフロントシート
●ライバルたちは遥か先へ進んでいる

●標準のスカイラインと基本的には同じ

インテリアに関して、標準のスカイラインと400Rのデザインは基本的には同じです。

赤いステッチが入った本革ステアリングホイールや、本アルミフィニッシャ―、本革の専用スポーツシート、クロームメッキ+ダーククリア塗装のパドルシフトなど細かな部分は変更されていますが、クルマに乗り込んだ瞬間の高揚感は、標準車とさほど変わらない、という感想でした。

スカイライン400R
ステアリングホイール、シフトノブ回り、本革シートへ赤いステッチラインが入り、ピリリと引き締めることできています。シートに入れられたキルティング模様は、400Rのみの特別感を感じられます

派手なスポーツモデルのアピールを望んでいたわけではありませんが、やや地味にも感じます。インテリアにも「400R」のロゴを入れるなど、ファンが喜びそうな遊び心があと一歩、欲しいところです。

スカイライン400R
赤いステッチが入った本革ステアリングホイールや、本アルミフィニッシャ―、本革の専用スポーツシート、クロームメッキ+ダーククリア塗装のパドルシフトなど細かな部分は変更されている400Rです。

運転席からの視界は良好。ダッシュボード上に視界を阻害する造形物がなく、ウィンドウラインも高くはありません。欧州車メーカー系と比べると、スカイラインの方がドライバーの腰位置は高く思えましたが、スポーツセダンと謡うわりにはアイポイントが高く、クルマの周囲が良く見えるので、余計にそう感じたのでしょう。

スカイライン400R
計器類はオーソドックスなタコメーターと速度表示メーター。できることならば、400R専用に最高速度の上限表示を変えたり、カーボン調のフィニッシュにしたりなど、あと一工夫が欲しかったところです。

●ツインディスプレイである必要性とは?

上段の8インチモニターは主にナビゲーションモニターとして、下段の7インチモニターは各種のコントロール用として用いられます。上下を合わせれば、かなりの面積になるタッチディスプレイですが、使い勝手が良いとは思えませんでした。

スカイライン400R
上段の8インチモニターは主にナビゲーションモニターとして、下段の7インチモニターは各種のコントロール用として用いられます。下段の方が、面積は大きく見えますが、太いベゼル(枠縁)のため、タッチ有効範囲はさほど広くありません

上段のナビゲーションは、昨今の欧州車系セダンや、トヨタなどの国産セダンと比べて、1世代以上、遅れている印象です。9インチ、10インチが当たり前になった昨今のディスプレイの状況では、日産が誇る新型セダンとしては心許なく感じました。

また、2段目のタッチディスプレイに、オーディオ操作やそのほかの各種設定の機能をふり分けたことで、効率的になったかというと、そうとも言えません。

運転中に頻繁に行う操作は、エアコンやナビゲーション、オーディオのボリューム操作であり、低い位置にある2段目のディスプレイで操作するタイミングはほとんどありません。

これならば、上段へ9インチもしくは10インチクラスの幅広ディスプレイを一基設置して、そこにすべて集約した方が使い勝手は良いのではないでしょうか。しかも視線の動きも少なくて済みます。

スカイライン400R
エアコンやナビゲーション、オーディオのボリューム操作はボタンで操作ができるので、運転中に2段目のディスプレイで操作するタイミングはほとんどないです。

国産セダンの雄「クラウン」も、2020年10月の商品改良でデュアルディスプレイからハリアーのような大型ディスプレイ一基のタイプへと更新しました。電装系やインパネのデザインを改修するのは、相当な覚悟(もしくは大きなクレーム)がないとできないものですが、それを行ってきたということは、「操作が分かりにくい」といったユーザーの声が届いたのでしょう。

●高級感漂うフロントシート

フロントドアを開くと、パッと目に入ったのがダイヤキルティングという模様の400R専用のフロントシートです。写真のブラック本革にレッドステッチの他にも、ホワイト本革にレッドステッチというバリエーションもあります。こちらの方が、よりセクシーな高級感があるように見えるので、選択してみても面白いでしょう。

スカイライン400R
ダイヤキルティングという模様の、400R専用のフロントシート。レッドステッチも入りスポーティです。

座り心地も良く、スポッとはまったお尻がずれないようなシート形状です。ただし、座面の高さはあまり下には下がりません。筆者的には、もう少し下に沈み込むようなドライビングポジションが好みですが、小柄な方でも良い視界が確保されているともいえます。

スカイライン400R
1列目の席よりも、一段高い場所に座っているような視界のため、後席からの視界はなかなか良いです。

後席シートにもダイヤキルティングの模様が入ります。1列目の席よりも一段高い場所に座っているような視界のため、後席からの視界はなかなか良いです。

ヘッドクリアランスもコブシ一つ以上あり、しかも、サイドのガラスエリアが広いため、クルマの外側から見るよりも明るくて開放的です。足元も広く、快速セダンの後席で行くロングドライブは、十分に快適でしょう。6:4分割可倒式のトランクスルーにもなるので、いざとなれば大物の荷物も積み込めます。

スカイライン400R
9インチのゴルフバッグが4個搭載可能な荷室エリアです。
スカイライン400R
6:4分割でトランクスルーにもなります。

ちなみに、筆者は以前、ステーションワゴンタイプの自車でキャンプに出かけたところトラブルに遭い、急遽、代車として手配していただいたセダンに荷物を移し替えて、キャンプに向かったことがあります。

「絶対無理だろ…」と思いながら荷物を積み込んでいったのですが、割とすんなりと入りました。トランクスルーにした時のセダンの荷室容量は舐めてはいけない!と感じました。

●ライバルたちは遥か先へ進んでいる

ベースとなるV37型スカイラインの使い勝手は、高級セダンとして及第点だとは思いますが、ライバルたちは遥か先へと進んでいるのは事実です。そうした中で、スカイライン400Rを買いたくなる特徴は何か? それは、「良いものを買ったと納得ができる特別感」が仕込まれていることです。冒頭に書いた通り、遊び心があと一つ欲しい部分もあります。

ですが、400Rの魅力は当然、「走り」にあるはずです。最後の記事では、その「走り」にフォーカスし、魅力とあと一歩ほしいところについてレビューしていきます。

(文:自動車ジャーナリスト・吉川 賢一/写真:エムスリープロダクション・鈴木 祐子)

<主要諸元>
スカイライン400R 2WD
■全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm
■ホイールベース:2850mm
■車両重量:1760kg
■駆動方式:前輪駆動
■エンジン:VR30DDTT(DOHC・筒内直接燃料噴射V型6気筒)
■排気量:2.997L
■最高出力:298kW(405ps)/6400rpm
■最大トルク:475Nm(48.4kgf・m)/1600-5200rpm
■サスペンション:前/独立懸架ストラット式
後/独立懸架マルチリンク式
■タイヤ:前/ 245/40RF19
後/ 245/40RF19
■WLTCモード燃費:10.0km/L
■最小回転半径:5.6m
■燃料・タンク容量:無鉛プレミアムガソリン・80L

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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