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■三元触媒による排ガス低減技術よりコストがかからないので低価格帯のバイクで採用
●2次空気供給システムだけでは排ガス規制に適合できないので触媒と組み合わせる
2次空気供給装置は、エアクリーナーから新鮮な空気を排気ポートに供給して、燃焼しきれなかった未燃HCやCOを再燃焼するシステムです。主として低速低負荷領域のHCとCOの排ガス低減技術として、多くは触媒技術と組み合わせて用いられます。
比較的安価な排ガス低減技術として採用されている2次空気供給装置について、解説していきます。
●2次空気供給装置の狙いは
1998年に初めてバイクの排ガス規制が施行され、2006年にはさらに規制値が強化されました。その対応技術として、すでに自動車で普及していた電子制御の燃料噴射システムと三元触媒を組み合わせた排ガス低減技術がバイクでも採用されるようになりました。
一方で、低コストで対応する2次空気供給装置も一部モデルで採用されました。
排ガス規制が強化される前は、始動性やスムーズな加速といったドライバビリティを優先して、空燃比の設定は理論空燃比よりもやや濃くする、リッチに設定にしていました。しかし、リッチ混合気で燃焼すると、酸素が不足するため燃え残った燃料のHCや不完全燃焼のCOが排出されやすくなります。
これを解決するのが、高温の排ガスに再度新気(酸素)を供給して酸化させる2次空気供給装置です。触媒技術が普及する前に採用され、現在も一部の安価なモデルで触媒と組み合わせて採用されています。
●2次空気供給装置の構成
2次空気供給装置は、排気の脈動を利用して新気を排気ポートへ導入する簡単な仕組みです。空気をエアクリーナーから排気ポートへ供給する電磁制御弁と、排気ポートから排出ガスがエアクリーナー側に逆流するのを防止するリードバルブで構成されています。
2次空気が導入される位置が重要で、排ガス温度が十分高い排気弁近傍に導入しないと排ガスの酸化反応は進みません。また、高速回転の減速時に新気が導入されると、排気管で未燃HCの急激な燃焼に起因するアフターバーンが発生することがあるので、2次空気の供給は電磁制御弁で制御しています。
かつてはキャブレター仕様でも採用例はありますが、より効果を高めるためにはECU(エンジンコントロールユニット)による電子制御によって、エンジン回転数やアクセル開度、冷却水温、吸気温などの情報から電磁制御弁を制御することが効果的です。
●2次空気供給装置の適用例
2006年以降の排ガス強化に対応するため、バイクも自動車同様三元触媒を使った理論空燃比のフィードバック制御によって排ガス低減を行っていますが、一部のモデルでは2次空気供給装置も採用しています。
2次空気供給装置単独で排ガス規制には適合できないので、次のように触媒と組み合わせて採用するのが一般的です。
・通常の運転では、三元触媒と理論空燃比のフィードバック制御を行いますが、低回転低負荷(アイドルを含む)は理論空燃比の運転が難しいので、この運転領域については2次空気供給装置を利用してCOとHCを低減します。
・一部の小型バイクやスクーターでは、酸化触媒と還元触媒と2次空気供給装置の組み合わせで排ガス規制に対応しています。このとき、フィードバック制御は行いません。
2次空気供給装置は、HCとCOの低減には有効ですが、NOxは低減できません。したがって、現行の排ガス規制には単独で対応できません。自動車でも、かつて2次空気供給装置を採用した事例がありましたが、触媒技術やエンジン制御技術の進化のため、現在採用例はありません。バイクでも、近いうちに消え去るかもしれません。
(Mr.ソラン)