■4代目では急速充電付のEVを開発し、1976年の大阪国際見本市に出展
軽商用車のダイハツ・ハイゼットシリーズが2020年11月で60周年を迎えました。
1960年11月に登場した初代は、高度経済成長期に大ヒットモデルだった軽三輪自動車ミゼットに続き、同社初の軽四輪自動車(360㏄)として発売されたモデルです。当時の軽四輪自動車のイメージを刷新する斬新なデザインが話題を集め、積載性だけでなく、居住性にもこだわっていたのが特徴。1961年にはボンネットバンタイプも発売され、「ビジネスとレジャーを結ぶニューファミリーカー」を掲げ、一家に1台のマイカー時代を支えたとしています。
2代目(トラック)は、経済成長に合わせてハイゼットの需要が著しく伸長していた中、荷台をフルに使えるタイプへのニーズに応え、フロントエンジンのキャブトラックとして投入されました。エンジンを座席下に配置することで、荷室とキャビンを拡大し、1965年にはハイゼットカーゴの元になるキャブバンタイプが発売されています。
4代目は1971年9月に発売され、積載性、乗り心地、居住性などの向上が図られています。翌72年には、軽ライトバンで初めてスライド式ドアが採用された「ハイゼットスライドバン」を発売し、利便性を向上。
また、この頃のダイハツは、電気自動車に積極的に取り組んでいて、4代目では急速充電システム付きの「クイックチャージ式電気自動車」を開発、1976年の大阪国際見本市に出展しています。
1977年に登場した5代目(トラック)は、排気量、全長、全幅、全高が拡大された新規格軽に対応するもので、ハイゼット55(ゴーゴー)ワイドとしてリリース。翌月にはバンもフルモデルチェンジを受けています。
当時は、公害問題に伴い、高い環境対応が求められていて、同社は非常に厳しい排ガス規制に対応するAB型の550ccエンジンを新開発し、ハイゼットにも搭載しています。
次に軽規格が変わったのは1991年。94年1月のトラック、バンである8代目は、91年の軽自動車規格変更に伴いフルモデルチェンジを受けたモデルです。新開発のEF型660ccエンジンが搭載され、快適な走行性能を実現するとともに、積載性や使い勝手など、全方位で性能を向上。
なお、1980年代からハイゼットの海外生産が始まるとともに、ハイゼットベースの現地専用車がインドネシアやマレーシアで生産されています。
9代目は、1999年1月にトラック、バンが登場しました。安全性の向上を主眼とした1998年の軽自動車規格変更に合わせて、全長、全幅が拡大されています。また車名もハイゼットトラックに変更。取り回しのしやすいフルキャブスタイルを踏襲しながら、新国内衝突安全基準をクリアしたトップクラスの安全性を実現していました。
また、新開発エンジンが採用され、環境性能と走りも向上しています。バンもハイゼットカーゴに名称を改め、運転のしやすさや快適性を追求され、セミキャブスタイルに変更されています。なお、イタリア人デザイナーであるジウジアーロ氏によるデザインも話題を集め、トラック同様、安全性や走行性能を向上していました。
そして現行型となる10代目は、バンが2004年12月に発売。トラックとは別のプラットフォームに生まれ変わっています。新工場のダイハツ車体(現ダイハツ九州 大分(中津))工場の最初の生産車種です。
デザインが刷新されるとともに、クラストップのロングホイールベースなどで走行安定性が向上。また、2017年のマイナーチェンジを機に予防安全機能「スマートアシスト」が採用されています。
2014年登場の現行型、10代目のトラックは、じつに約15年ぶりのフルモデルチェンジになり、積載性や使い勝手の良さなどを全面的に改良が施されています。また、近年注目の高まる女性ユーザーに着目し、農林水産省の進める「農業女子プロジェクト」に参画し、豊富なカラーバリエーションなど、従来にない装備が多数用意されています。
2018年には一部改良を受け、予防安全機能「スマートアシスト」も採用されています。
現在のハイゼットシリーズは、農林水産業を中心に使用されているハイゼットトラック、配送業や小売業などを中心に使用されているハイゼットカーゴ、プラットフォームの異なるウェイクの商用版・ハイゼットキャディーの3モデルで構成されていて、これまでの累計生産台数は約740万台に上っています。現在の総保有台数は約220万台だそう。
「はたらくクルマ」として長い間に渡って愛用され、近年ではキャンピングカーのベース車など、趣味の相棒としても支持されています。
(塚田 勝弘)