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■ナチス政権下の国民車構想に基づき設立された国策企業が起源
●生産1号車のタイプ1(ビートル)は世界で最も売れたクルマとして有名
フォルクスワーゲンの2019年の販売台数は、トヨタとルノー・日産・三菱連合を抑えて4年連続世界第1位でした。アウディやポルシェ、ベントレーなどを傘下に収め、トヨタグループと競う全方位の大規模メーカーです。
ナチス政権下で国策企業として誕生したドイツメーカーのフォルクスワーゲンの、これまでの歩みについて解説していきます。
●会社概要と業績
・会社名:フォルクスワーゲンAG
・代表取締役会長:ヘルベルト・ディース
・創立:1938年
・資本金(2018.12現在):12億8300万ユーロ
・従業員数(2018.12現在):連結65万5000人
・販売台数:1,098万台(2019.1~2019.12)
●起源
フォルクスワーゲンの起源は、1937年ナチス政権のもとに国策企業として誕生しました。
アドルフ・ヒトラーが掲げた「国民車構想」に基づき、「KdFワーゲン」から自動車の生産を始めました。KdFワーゲンの設計者は、かの有名なフェルディナント・ポルシェです。
戦後、1945年にKdFの名称を「タイプ1」に改め生産を再開。愛称ビートルと呼ばれ、世界展開して、海外生産分も含めると2000万台以上生産する大ヒットになりました。
●メーカーとしての歩み
タイプ1は、「カブトムシ」の愛称で人気を博して超ロングヒットになりましたが、フォルクスワーゲンの確固たる地盤を固めたのは、1974年に登場したゴルフです。ゴルフは、FF2ボックスで実用性が評価されて世界中で大ヒット、アウディを筆頭にその後も数々の自動車メーカーを買収してワーゲングループとして巨大化しました。
フォルクスワーゲンは、創業当初から積極的に新しい技術、特に燃費改良に取り組みました。直噴エンジンやクリーンディーゼル、最近ではダウンサイジング直噴ターボエンジンを他社に先行して採用してきました。
しかし2015年に、米国で発売中のディーゼルエンジンの排ガス制御に不正なプログラムが組み込まれていることが判明。ほとんどのディーゼルエンジンで不正が見つかって世界的な大問題となり、欧州でシェアが高いディーゼル車の販売が停滞しました。
●往年の代表的なモデル
フォルクスワーゲンがクルマの生産を再開した1945年のタイプ1は、空冷の水平対向4気筒エンジン搭載のRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトを採用していました。
・1970年、水冷4気筒エンジンを搭載したFF車K70を発売
・1973年、中型セダンのパサート発売
・1974年、FF2ボックスのゴルフとスポーティクーペのシロッコを発売
・1975年、ボトムレンジを担ったポロを発売
・1976年には、世界中で大人気となったゴルフのスポーティグレードのGTI(グラウンド・ツーリング・インジェクション)が登場
・1979年、ゴルフの3ボックスであるジェッタを発売
●最近の代表的モデル
1980年はポロ、ゴルフ、パサートといった主要車種のモデルチェンジが続きました。1988年にスポーツクーペのコラードを登場させ、実用性だけでなく、高い質感のクルマづくりにこだわりました。
・1998年、人気のモデル1をモチーフにしたニュービートルが登場
・2002年、上級志向のプレミアムSUVトゥアレグ発売
・2018年、ゴルフとポロ、up!にGTIを設定してスポーティ仕様を追加
フォルクスワーゲンは、タイプ1(ビートル)やゴルフ、ポロのような大衆車メーカーのイメージが強いですが、この20年間にさまざまなブランドを傘下に収めて、大規模自動車メーカーに成長しました。
2015年のディーゼル車の排ガス不正発覚以降は、ディーゼル車よりもEVとPHEVの電動化に積極的に取り組んでいます。
(Mr.ソラン)