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■CO2排出量をゼロとみなせるCO2削減のための有望な代替燃料
●サトウキビなどを原料とするバイオエタノール燃料と植物油などのバイオディーゼル燃料(BDF)の2種類
自動車の環境対応技術に対する燃料からのアプローチとして、もっとも注目されているのはバイオマス燃料です。燃焼して排出されるCO2が、排出量としてカウントされないカーボンニュートラルの再生可能エネルギーだからです。
今後の技術進化への期待が大きいバイオマス燃料について、解説していきます。
●バイオマス燃料の何が注目されているのか
バイオマス燃料とは、再生可能エネルギーの中で動植物から生まれた生物由来の燃料です。最大の特徴は、バイオマス燃料の燃焼で発生するCO2が排出量としてカウントされない「カーボンニュートラル」であることです。
したがって、ガソリンや軽油など、化石燃料に代わる自動車用燃料として、また発電用の燃料として温暖化対策の有力な代替燃料と位置付けられています。
カーボンニュートラルとは、京都議案書で規定されている考え方です。
生物資源を原料とするバイオマス燃料を燃焼させた場合も、当然CO2は発生します。ただし、バイオマス燃料の原料となる植物が、その成長過程で光合成によって大気中のCO2を吸収するため、CO2はプラスマイナスゼロと考え、この場合のCO2は排出量としてカウントしません。
●自動車用燃料としての用途
バイオマス燃料には、バイオエタノール燃料とバイオディーゼル燃料(BDF)の2種類があります。
再生可能エネルギーの中で唯一自然界のカーボンを使う燃料であることから、バイオエタノールはブラジルや米国で、バイオディーゼルは欧州で積極的に使用されています。
・バイオエタノール燃料
原料としてトウモロコシやサトウキビ、小麦などの穀物を使い、これらに含まれる糖分を微生物によって酸化・発酵・蒸留してバイオエタノールを製造します。
ただし、原料のトウモロコシやサトウキビは食料でもあるため、食料用途との競合の問題が発生します。燃料として消費が増えると、食料としての価格が上昇してしまいます。これを回避するため、現在は食料用途のない木材やワラなどセルロース系原料から製造する手法を開発していますが、課題は製造コストです。
ブラジルでは、国策としてバイオエタノールの使用を推進しており、サトウキビを原料としたE85(%)とE100(%)燃料が一般に普及しています。
・バイオディーゼル燃料(BDF)
バイオエタノールが農産物や農林廃棄物をベースにしているのに対して、バイオディーゼルは一般の動植物油脂をメチルエステル化して製造します。原料としては、菜種油や大豆油、パーム(椰子)油などの植物油と廃食用油などを使います。
ディーゼル車のシェアが高い欧州では、菜種油を原料としたバイオディーゼルが根付いています。
課題は、やはり製造コストです。
●発電用燃料としての用途
バイオマス発電は、火力発電と同じ原理で発電します。
バイオマス燃料をボイラーで燃やし、水を加熱して高温、高圧の蒸気を作り、その蒸気の力でタービンを回転させて発電します。
バイオマス発電の燃料としては、固体燃料を用いる場合と気体燃料を用いたガス化による発電の2種類があります。
固体燃料として代表的なのは、樹皮やおがくず、端材などを粉砕圧縮して成形した木質ペレットなどです。気体燃料としては、畜産で生じた家畜の排せつ物をメタン発酵させたメタンガスなどです。
液体燃料は、前述のように主にクルマ用燃料として利用されます。
地球温度化ガスCO2の低減と化石燃料依存からの脱却は、自動車が直面する最大の課題です。それらの解決策として、自動車用と発電用のバイオマス燃料の開発に大きな期待がかかっています。
今後の普及は、バイオマス燃料の原料がすでに別の用途で大きな需要があるため、クルマ用として供給量が確保できるか、また製造コストがガソリンや軽油並みに低減できるかにかかっています。
(Mr.ソラン)