ジムニーとワゴンRの良いとこ取り、軽自動車クロスオーバー「ハスラー」はどうやって生まれた?【スズキ100年史・第29回 最終回・第6章 その6】

2014(平成26)年にデビューした「ハスラー」は、「ジムニー」のオフロード走破性と「ワゴンR」の居住性を融合させた「軽のクロスオーバー」という新たなジャンルを確立。広い室内空間とどこでも走行できる走破性を実現し、販売開始から1年経たず累計台数は10万台を超える大ヒットになりました。

さらに、次世代の環境技術「スズキグリーンテクノロジー」や安全技術「スズキセーフティサポート」を装備して燃費と安全性を高めていることも評価され、その年の「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

第6章 燃費競争の終焉と新たな技術への挑戦

その6.新たなジャンル軽クロスオーバーを確立した「ハスラー」

●ハスラーのコンセプト

1973型_初代ジムニー
1973型_初代ジムニー

「ハスラー」のコンセプトは、「ジムニー」のオフロード走破性と「ワゴンR」の居住性を融合させ、どこでも気軽に楽しく走れる実用性の高い軽自動車とすることでした。

1970(昭和45)年にデビューしたジムニーは、ラダーフレームや頑丈な前後リジットアクスル、高低2速のトランスファーを備えた本格的な4輪駆動システムを採用。軽自動車ながら本格的なオフロード走破性を実現した軽クロカン車で、現在もモデルチェンジを繰り返しながら進化し続けています。

1993_初代ワゴンR
1993_初代ワゴンR

1993(平成5)年にデビューした「ワゴンR」は、狭い軽自動車というイメージを払拭する背の高いハイトワゴンという新しいジャンルを開拓。今や軽自動車市場は、このハイトワゴンと、さらに車高を上げたスーパーハイトワゴンが80%前後のシェアを占めています。

この2つの人気モデルの特長を融合させることで、さらに新しいジャンル「軽のクロスオーバー」が誕生しました。

●「ハスラー」デビュー

2014_初代ハスラー
2014_初代ハスラー

「ハスラー」は、2013(平成25)年の東京モーターショーで新しいタイプの軽自動車として衝撃的なデビューを飾り、翌年の2014(平成26)年1月に発売されました。

コンパクトなボディながら広い室内空間を確保し、どこでも走行できるオフロード走破性を実現したハスラーは、販売開始から1年経たず累計台数は10万台を超える大ヒットになりました。さらにアイドルストップやエネチャージなどの低燃費技術と自動ブレーキなどの予防安全技術の採用、使い勝手の良さが高い評価を受け、その年の「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

初代ハスラー計器盤
初代ハスラー計器盤

当時は、トヨタハリアーやホンダヴェゼル、スバルXVなどのクロスオーバーSUVが大ブームを起こしていたことも、ハスラーの人気を後押ししました。

●ハスラーの技術特徴

ハスラーはワゴンRのプラットフォームを流用し、上もの(うわもの)は専用部品を使用。骨格には重量比で40%にもおよぶ高張力鋼板を使用して、軽量化と高い剛性を両立しました。

エンジンは、最高出力64PSのターボエンジンと52PS のNAエンジン、トランスミッションはCVTと5MTの2タイプを設定。CVTには減速エネルギー回生の「エネチャージ」、停車前減速で車速15km/h以下になるとエンジンを停止する「新アイドリングストップシステム」を採用して燃費向上を図っています。

2020_2代目現行ハスラー
2020_2代目現行ハスラー

さらに、先進予防安全技術「スズキグリーンテクノロジー」を採用。レーザーレーダーで前方車両を検知して衝突を回避する自動ブレーキやペダル踏み間違による事故を回避する誤発進抑制機能が装備されています。

その他、アンダーステアとオーバーステアを制御する「ESP(車両走行安定補助装置)」や急ブレーキ時にもステアリング操作で障害物が回避できるようサポートする「EBD(電子制御動力配分システム)付4輪ABS(アンチロックブレーキシステム)+ブレーキアシスト」などの安全運転技術も充実しています。

そして、2020(令和2)年にはモデルチェンジした2代目「ハスラー」が登場。初代からのキープコンセプトながらも、パワートレインのパワーアップや燃費技術、予防安全技術の充実によって、初代からの人気を維持し、3ヶ月から4ヶ月の納車待ちになっています。

(文:Mr.ソラン 写真:スズキ)


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その3. 燃費競争の終焉【第26回・2020年8月26日】
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この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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