軽自動車は日本独自規格のクルマですが、スズキは軽自動車だけでなく、世界で通用するコンパクトカーの開発にも力を入れています。
最初のコンパクトカーは、GMと共同開発した1983(昭和58)年の「カルタス」ですが、本格的な世界戦略車は2004(平成16)年デビューの「スイフト」です。
欧州車のトレンドを意識した洗練されたスタイリングと、軽量かつ高剛性を両立させたボディ構造が特長。パワフルかつ低燃費なエンジンとスポーティで力強い走りが高い評価を受け、2005(平成17)年の「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
第6章 燃費競争の終焉と新たな技術への挑戦
その5.スズキの本格世界戦略車「スイフト」
●GMとの提携から始まった世界戦略車
スズキ初の小型乗用車は、少量生産の「フロンテ800」を除くと、1983(昭和58)年に登場した「カルタス」です。
「カルタス」は、1981(昭和56)年にスズキがGMと資本提携し、共同開発した最初のコンパクトカーです。
スズキとGMの提携は、1970年代に起こった排ガス規制強化やオイルショックなどの影響で、燃費の良いコンパクトカーの必要性に迫られていたGMと、世界進出、とりわけ米国進出を狙っていたスズキの思惑が一致したことによって締結に至りました。
それ以前からスズキは小型車の開発を進めており、GMの助言を受けながら完成したのがカルタスでした。カルタスは、FFの3ドアハッチバックボディに、排気量1.0Lの3気筒エンジンを搭載。1986(昭和61)年には、パワーアップしたDOHCエンジン搭載の「カルタスGT-i」が登場、モータースポーツで大活躍して存在感を示しました。
その後もモデルチェンジしながら、2002(平成14)年まで生産を続けました。日本での人気はいまひとつでしたが、海外では車名を変更して販売され、特に米国では低価格コンパクトカーとして大ヒットしました。
●「カルタス」から「スイフト」へ変貌
カルタスは、欧州では「スイフト」と名乗っていましたが、国内で初めて「スイフト」が登場したのは2000(平成12)年です。
カルタスの後継車として、排気量1.3Lのエンジンと4ATのパワートレインを搭載した5ドアハッチバックでした。しかし、軽の部品を流用して低価格に抑えたため、初代は軽自動車のイメージから脱却できませんでした。
専用部品に設計し直して軽のイメージを一掃したのが、2004(平成16)年発売の2代目スイフトです。
計画段階から世界戦略車として開発され、国内外で「スイフト」と認知されたこの2代目こそ、スズキの実質的な世界戦略車第1号と位置付けられています。
●スイフトの技術特徴
2004年デビューの2代目スイフトは、世界戦略車として欧州車を意識した洗練されたスタイリングでした。
排気量1.3Lと1.5Lの4気筒VVT(可変バルブタイミング機構)エンジンを搭載し、軽量かつ高い剛性のボディとトーションビーム式リアサスペンションによって、スポーティで力強い走りを実現しました。
2005(平成17)年に、欧州車と真っ向勝負できるダイナミックな走りと実用燃費の良さが評価され、「日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞Most Fun」と「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。これにより、一躍スポーティなコンパクトカーとしてトップグループに割って入りました。
2010(平成22)年には3代目となり、モデルチェンジしながら進化を続けているスイフトですが、現在の4代目もパワーアップした高次元のスポーティな走りで人気を得ています。さらに、マイルドハイブリッド「S-エネチャージ」システムによる燃費向上や自動ブレーキ(AEB)、誤発進抑制、車線逸脱警報機能(LDW)、ハイビームアシスト機能などの予防安全機能も充実させています。
(文:Mr.ソラン 写真:スズキ)
第29回に続く。
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