世界戦略車スイフト誕生!ヨーロッパテイストのスポーティなコンパクトカー、高い評価を受ける【スズキ100年史・第28回・第6章 その5】

軽自動車は日本独自規格のクルマですが、スズキは軽自動車だけでなく、世界で通用するコンパクトカーの開発にも力を入れています。
最初のコンパクトカーは、GMと共同開発した1983(昭和58)年の「カルタス」ですが、本格的な世界戦略車は2004(平成16)年デビューの「スイフト」です。

欧州車のトレンドを意識した洗練されたスタイリングと、軽量かつ高剛性を両立させたボディ構造が特長。パワフルかつ低燃費なエンジンとスポーティで力強い走りが高い評価を受け、2005(平成17)年の「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

第6章 燃費競争の終焉と新たな技術への挑戦

その5.スズキの本格世界戦略車「スイフト」

●GMとの提携から始まった世界戦略車

1981_初代カルタス
1981_初代カルタス

スズキ初の小型乗用車は、少量生産の「フロンテ800」を除くと、1983(昭和58)年に登場した「カルタス」です。

「カルタス」は、1981(昭和56)年にスズキがGMと資本提携し、共同開発した最初のコンパクトカーです。

スズキとGMの提携は、1970年代に起こった排ガス規制強化やオイルショックなどの影響で、燃費の良いコンパクトカーの必要性に迫られていたGMと、世界進出、とりわけ米国進出を狙っていたスズキの思惑が一致したことによって締結に至りました。

1986_カルタスGT-i
1986_カルタスGT-i

それ以前からスズキは小型車の開発を進めており、GMの助言を受けながら完成したのがカルタスでした。カルタスは、FFの3ドアハッチバックボディに、排気量1.0Lの3気筒エンジンを搭載。1986(昭和61)年には、パワーアップしたDOHCエンジン搭載の「カルタスGT-i」が登場、モータースポーツで大活躍して存在感を示しました。

その後もモデルチェンジしながら、2002(平成14)年まで生産を続けました。日本での人気はいまひとつでしたが、海外では車名を変更して販売され、特に米国では低価格コンパクトカーとして大ヒットしました。

●「カルタス」から「スイフト」へ変貌

2000_初代スイフト
2000_初代スイフト

カルタスは、欧州では「スイフト」と名乗っていましたが、国内で初めて「スイフト」が登場したのは2000(平成12)年です。

カルタスの後継車として、排気量1.3Lのエンジンと4ATのパワートレインを搭載した5ドアハッチバックでした。しかし、軽の部品を流用して低価格に抑えたため、初代は軽自動車のイメージから脱却できませんでした。

2004_2代目スイフト
2004_2代目スイフト

専用部品に設計し直して軽のイメージを一掃したのが、2004(平成16)年発売の2代目スイフトです。
計画段階から世界戦略車として開発され、国内外で「スイフト」と認知されたこの2代目こそ、スズキの実質的な世界戦略車第1号と位置付けられています。

 

●スイフトの技術特徴

2010_3代目スイフト
2010_3代目スイフト

2004年デビューの2代目スイフトは、世界戦略車として欧州車を意識した洗練されたスタイリングでした。

排気量1.3Lと1.5Lの4気筒VVT(可変バルブタイミング機構)エンジンを搭載し、軽量かつ高い剛性のボディとトーションビーム式リアサスペンションによって、スポーティで力強い走りを実現しました。

2005(平成17)年に、欧州車と真っ向勝負できるダイナミックな走りと実用燃費の良さが評価され、「日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞Most Fun」と「RJCカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。これにより、一躍スポーティなコンパクトカーとしてトップグループに割って入りました。

2017_4代目スイフト
2017_4代目スイフト

2010(平成22)年には3代目となり、モデルチェンジしながら進化を続けているスイフトですが、現在の4代目もパワーアップした高次元のスポーティな走りで人気を得ています。さらに、マイルドハイブリッド「S-エネチャージ」システムによる燃費向上や自動ブレーキ(AEB)、誤発進抑制、車線逸脱警報機能(LDW)、ハイビームアシスト機能などの予防安全機能も充実させています。

(文:Mr.ソラン 写真:スズキ)

第29回に続く。


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第6章 燃費競争の終焉と新たな技術への挑戦

その1.軽自動車燃費競争の勃発【第24回・2020年8月24日公開】
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その3. 燃費競争の終焉【第26回・2020年8月26日】
その4. 予防安全技術「スズキセーフティサポート」【第27回・2020年8月27日公開】

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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