●2020年7月の新車販売は登録車が前年比79.6%。軽自動車は前年比98.9%まで復活
新型コロナウイルス(COVID-19)の収束が見えません。重症者の比率が低いという指摘もありますが、新規の感染者が日々増えている状況です。お盆の帰省を控えるといった動きもあったり、小学生などは短い夏休みをステイホームで過ごすことになっていたりしています。
そんなわけで経済的にもコロナ以前の状態に戻りきってはいません。自動車販売についても緊急事態宣言の頃ほどひどい状況ではありませんが、数字を見るとまだまだ前年比を下回っています。自販連の発表した2020年7月の登録車新車販売台数は23万9355台で前年比79.6%にとどまっているのです。
一方、全軽自協が発表した同じく2020年7月の軽自動車新車販売台数は15万6991台で前年比98.9%。ほぼ前年並みになっています。
つまり軽自動車を軸にしているメーカーから復活しつつあると考えられます。軽自動車でも前年並みに戻っているブランドもあれば、まだまだ沈んでいるブランドもありますが、前年同月比が100%を超えているのはスズキ、ダイハツ、マツダの3社となっています。
日産は92.8%、ホンダは86.2%と前年並みの勢いを取り戻せずにいます。とくに日産は3月に新型スーパーハイトワゴン「ルークス」をフルモデルチェンジしたばかりですから、前年比で100%を超えたいところでしょう。
では、軽自動車では何が売れているのでしょうか。勢いを感じさせるのはダイハツが新ジャンルとして投入した「タフト」と、そのライバルと目されるスズキ・ハスラー。
とくにハスラーは前年比217.2%と売れに売れています。タフトが出たことで軽SUV市場が活気づき、相乗効果でお互いに売れている状況になっているといえます。ちなみに、7月の販売台数でいうとタフトの6300台に対してハスラーは8831台とじつはリードしていたりします。
スズキの軽自動車をリードするのはスーパーハイトワゴン「スペーシア」です。販売台数は王者N-BOXに次ぐ1万3338台で前年比を超えてきました。じつはN-BOXは1万6222台も売れているのですが、前年比では67.5%と昨年の勢いを取り戻せていません。もしかすると、軽自動車のトップ入れ替わりの可能性も? と思ってしまうような状況になっています。
とはいえハイトワゴン・カテゴリーではスズキの「ワゴンR」は苦戦中。ハイトワゴンだけのランキングを見ると、ダイハツ・ムーヴ、ホンダN-WGNに次ぐ3位となっています。ここでの数字の差が、軽自動車全体のシェアでダイハツがリードしているひとつの要因になっているといえます。
いずれにしても、スズキとダイハツという軽自動車に強いメーカーはいち早く復活しているといえます。それが社会全体の経済的な部分に起因しているのかどうか安易に関連性をいうわけにはいきませんが、少なくとも数字は「ちいさなクルマ」から売れ始めているといえそうです。
実際、登録車のほうのデータを見てもスズキとダイハツの2社だけは前年比で100%を超えているのです。
2020年7月の登録車販売をメーカー別に見た場合、スズキは9862台で前年比108.9%。ダイハツは4133台で前年比140.5%。スズキの登録車でいうと、スライドドアの「ソリオ」が3430台で前年比111.6%、本格クロスカントリー4WDの「ジムニーシエラ」が2099台で前年比337.5%と売れているのが、そうした数字につながっているといえます。
ダイハツでは、コンパクトSUVの「ロッキー」が好調です。2019年11月にデビューしたモデルですから前年比のデータはありませんが、ロッキーの販売台数は2595台。同社における登録車販売の半数以上を占めているのです。
ジムニーシエラやロッキーが売れているということは、単純に廉価なコンパクトカーが売れているとはいえません。比較的、手頃なプライスゾーンでこだわりを感じられるクルマをウィズコロナ時代の市場は求めているといえそうです。
実際、登録車のランキング上位を見ると、トップはトヨタ・ヤリスですが、2位はロッキーの兄弟車であるトヨタ・ライズで1万2283台も売れています。
コロナ対策としてマイカーを持ちたいという話を耳にすることも増えていますが、ウィズコロナの状況でも新車を買えるような経済状況にあるユーザーにはSUV的な、どこかこだわったクルマを求めるマインドがあるのかもしれません。
(自動車コラムニスト・山本晋也)