日本初の量産軽自動車スズライトの誕生にはヤナセの梁瀬次郎が関わっていた？【スズキ100年史・第8回・第2章その2】

公開日 2020/08/08 10:03
更新日 2024/10/20 12:16
著者 Mr. ソラン

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鈴木道雄社長は、戦前から４輪の自動車事業に参入することを決心して、試作車まで製作していました。その夢が叶ったのが、1955（昭和30）年に発売した日本初の量産軽自動車「スズライト」でした。

「スズライト」は、限られた規格の中で最高速度80km/h以上を超える性能と大人４名が乗車できる室内スペースを確保した完成度の高い軽自動車でした。

ここから、日本独自の規格をもつ軽自動車の歴史が始まったのです。

第2章　軽自動車のパイオニアとして足跡

その2．量産初の軽自動車「スズライト」

●自動車事業への想いは戦前から

鈴木道雄社長の自動車への熱い想いは、戦前の1936（昭和11）年まで遡ります。豊田自動織機が自動車部を設けて自動車事業への方向転換を進めている動きに触発され、1936（昭和11）年に娘婿の鈴木三郎に自動車の研究開発を命じたのでした。

技術者であった鈴木三郎は、購入した英国の小型車「オースチン」を分解調査し、試行錯誤を繰り返しながら、何と1939（昭和14）年には、ほぼ自社製部品で構成された試作車を完成させてしまいました。専門家がいなかった割には、出来上がった試作車はかなり優秀なレベルであったと言われています。出来上がった試作車に乗り込んだ鈴木道雄社長は満足した表情を見せ、すぐに現在のスズキの本社（浜松市）の地に本格的な工場を建設しました。

しかし、忍び寄る世界大戦の暗い影によってクルマの開発はやむを得ず中断。新工場は、砲弾や機関銃を生産する軍需工場へと様変わりしてしまいました。

●試作車で箱根山登り

エンジン付自転車のヒットによって業績が回復した1953（昭和28）年、鈴木式織機は重役会で小型自動車の開発に着手することを決定。これからは必ず軽自動車が国民に普及すると判断したからです。

すぐに参考車として欧州の小型車3台を購入して開発をスタートさせ、1954（昭和29）年9月には試作車が完成しました。また、それ以前の6月には社名を「鈴木式織機」から「鈴木自動車工業」に改め、本格的な自動車事業への参入を内外へ宣言しました。

1954（昭和29）年10月、2台の試作車は性能を評価するため、箱根の峠を目指しました。箱根の急坂を登り切ることができれば日本中どこでも問題なく走れるという実績ができるため、当時は箱根の登山コースが耐久信頼性を評価する基準となっていたのです。

試作車は何とか県境の峠を自力で越え、そのまま東京に向かいました。当時輸入車の販売を行っていた梁瀬自動車（現・ヤナセ）の梁瀬次郎社長に試作車の評価をしてもらうためでした。社長の試乗評価は、「これは売れる、すぐに売り出しなさい」というもので、開発チームにとってはこれでいけるという大きな自信になったのでした。