ホンダ、ヤマハ、カワサキそしてスズキは、いかにして国内4大2輪車メーカーと成ったか?【スズキ100年史・第6回・第1章 その6】

自転車にエンジンを搭載する形で始まった2輪車は、事業として比較的取り組みやすいため、戦後150を超えるメーカーが製造に取り組みました。特に静岡県の浜松市には数多くのメーカーが起業し、その中にはスズキのほか、ホンダとヤマハもありました。

本田宗一郎が始めたホンダは、1949(昭和24)年に「ドリームD型号」、ヤマハ発動機の創業者川上源一のヤマハは1954(昭和29)年に「YA-1(通称赤トンボ)」、カワサキは前身の川崎航空機工業から1953(昭和28)年に「川崎号」を発売。いずれも市場で高い評価を得て、ここから日本4大メーカーへ向けた第一歩を踏み出したのでした。

第1章 始まりは鈴木式織機、そして2輪車への挑戦

その6.国内4大2輪車メーカーの誕生と成り立ち

●日本における2輪車の幕開け

国産初の市販2輪車は、1909年(明治42)年の「島津モーターNS号」です。それ以前にも2輪車は製造されていましたが、輸入部品を組み立てたレベルで、純粋な国産2輪車とは言えませんでした。その後、宮田製作所の「アサヒ号」、日本内燃機の「ニューエラ」「くろがね号」など、多くの2輪車が市販化されました。大戦中は、ハーレーを模倣した三共内燃機の「陸王」に代表される大型2輪車が、主として軍用として生産されました。

大戦後には、エンジンを補助動力としたエンジン付自転車の需要が急速に伸びたため、日本中で2輪車メーカーが乱立しました。そのような中、スズキを含めた国内4大メーカーのホンダ、ヤマハ、カワサキが2輪車事業に参入しました。

以下に、スズキのライバルメーカー3社の誕生と成り立ちについて紹介します。

●ホンダ

ホンダは、本田宗一郎によって創立された本田技術研究所を起源に1948(昭和23)年に設立されました。本田宗一郎は、戦後まもない1947(昭和22)年、自転車に取り付ける「A型エンジン」を製品として発売しました。

HONDA A型(1947年3月)
ホンダA型エンジン(1947年3月)
HONDA A型(1947年3月)
ホンダA型エンジン(1947年3月)

直後に本格的な2輪車の製造にも取り組み、1949(昭和24)年に「ドリームD型号」の生産を開始。排気量98ccの空冷2ストローク単気筒エンジンを搭載して、最高出力3PSで最高速度50km/hを発揮しました。

ホンダ初の本格的バイク「ドリームD型号」
ホンダ初の本格的バイク「ドリームD型号」

続いて、1952(昭和27)年発売の白いタンクに赤いエンジンカバーが特長の「カブF型」がヒット。

カブF型
カブF型

その後、1958(昭和33)年にデビューした世界的な超ロングセラー「スーパーカブ」などの成功を基盤に、1963(昭和38)年に4輪車事業に参入したのでした。

スーパーカブ
大ヒットしたホンダの「スーパーカブ」

●ヤマハ

楽器メーカーの日本楽器製造は、戦時中は軍用品のプロペラを製造していたため、戦後も工場や工作機械はしばらく進駐軍に接収されていました。やっと接収が解除された1953(昭和28)年、川上源一社長は工作機械技術を活用して、2輪車事業へ参入しました。

1954(昭和29)年初めて生産した「YA-1(通称、赤トンボ)」は、第3回富士登山レースで初出場ながら圧倒的な強さで優勝し、優れた性能と洗練されたスタイリングで爆発的な人気となりました。

これで自信を持ち、その年に2輪車部門が日本楽器製造から独立し、現在の「ヤマハ発動機」が誕生したのです。

ヤマハYA-1
ヤマハYA-1

●カワサキ

カワサキ初の2輪車は、1953(昭和28)年に川崎航空機工業が生産した「川崎号」です。川崎航空機工業は、川崎重工の一部門で戦時中は主に戦闘機を製作していましたが、終戦とともに自動車やバス、エンジンの開発を行っていました。

スクーター型バイクの「川崎号」は、排気量58.9ccの2ストロークエンジンを搭載して最高出力2PS、最高速度は45km/hを発揮。性能は優れていましたが、2輪車メーカーが乱立していた時代に販売ネットワークを持たなかった川崎航空機工業では、販売を十分伸ばすことはできませんでした。

本格的にカワサキの2輪車が有名になったのは、大排気量2輪車を製造し始めた1960年代に入ってからです。

川崎号
川崎号

(文:Mr.ソラン 写真:ホンダ、ヤマハ、川崎重工業)

第7回につづく。


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第1章 始まりは鈴木式織機、そして2輪車への挑戦

その1.始まりは鈴木式織機製作【第1回・2020年8月1日公開】
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その3.エンジンを搭載した自転車からスタート【第3回・2020年8月3日公開】
その4.本格的2輪車の開発とレース参戦【第4回・2020年8月4日公開】
その5.世界最高峰レース「マン島TT」の制覇【第5回・2020年8月5日公開】

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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