売れまくりのRAV4 PHVが、18.1kWhという大きなバッテリーを搭載するワケ【週刊クルマのミライ】

■グローバルに各国の基準をクリアするために大きなバッテリーが必要だった

2020年6月に発売されたトヨタRAV4 PHVが人気です。

なにしろ公式ホームページにおいて『現在、ご注文を一時停止させていただいております』と明記しているほどで、その理由については『新規搭載のバッテリーの生産能力を大幅に上回るご注文をいただいております』と書かれています。

たしかにRAV4 PHVは、メーカー希望小売価格469万円~539万円という価格帯がバーゲンプライスに見えるほど大きなリチウムイオンバッテリーを積んでいます。

RAV4PHV走り
18.1kWhというコンパクトEV並みのバッテリーを積むことでEVモードでの航続可能距離は95km(WLTCモード)に達する

そのスペックは、総電力量18.1kWh、容量51Ah、総電圧355.2Vというものでセル数でいうと96個を搭載しているのです。

プラグインハイブリッド車の中にはもっと控えめなバッテリー搭載量としているクルマもありますが、これだけ積んだことでWLTCモードでのEV走行可能距離95km、システム最高出力225kW(306PS)という魅力的な性能を実現したといえますし、コストパフォーマンスに優れたスペックを実現したからこそ、多くのユーザーがRAV4 PHVを求めるという結果になったといえます。

RAV4PHVメカニズム
床下に搭載するバッテリー総電力量は18.1kWh。フロントの2.5Lエンジンは最高出力130kW、モーターは前134kW・後40kWのスペックとなる

とはいえ、日本市場の感覚だけでいえば、こんなにバッテリーを積まなくとも十分に商品性はあるように思えます。

RAV4  PHVの場合は外部充電した電力を使い切って、通常のハイブリッドカーのように運用したとしても22.2km/Lという十分な燃費性能を持っていますし、日本仕様における95kmというEV航続可能距離はオーバースペックのようにも思えます。なぜ、総電力量18.1kWhというバッテリーが必要だったのでしょうか。

RAV4PHVリア
北米では「RAV4PRIME」の名前で販売される。かの地でのEVモードにおける航続可能距離は42マイル(約67.5km)だ

それはRAV4 PHVがグローバルモデルだからです。

北米市場ではRAV4 PRIMEの名前で販売されていますが、北米仕様のEV航続可能距離は42マイルで、環境性能を求めるカリフォルニア州の基準でいえばTZEV(Transitional ZEV:過渡的なゼロエミッション車)のシルバープラスのランクとなります。

そのほか中国や欧州などの現行規制、そしてモデルライフ内における規制強化を睨んで、バッテリーのスペックは決められるものです。

日本市場でのニーズだけを考えて「もっと小さなバッテリーにして生産量を確保する」というわけにはいかないのです。

もちろんバッテリーを小さくしてしまうと、バッテリーの出力も減ってしまいますからシステム最高出力も減ってしまいます。RAV4 PHVは単に世界各国の環境規制をクリアはするためのエコカーでなく、エコであることは当然として、スポーツカーのような性能を実現するプラグインハイブリッドシステムを目指しています。

その意味でもこれだけの大きなバッテリーは必要だったといえるのです。

RAV4PHVスノードライブ
エンジンを使わないで走行しているときの欠点は暖房が多くの電力を消費してしまうことだが、ヒートポンプシステムの暖房を採用することで、そうしたネガを解消した
RAV4PHV走りイメージ
大きなバッテリーを積むことで一度に出せるパワーも増大。エンジンとモーターをフルに使ったシステム最高出力は225kW(306馬力)にも達する

(自動車コラムニスト・山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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