マツダ初のバッテリーEV・MX-30の航続距離、なぜ200kmと「短め」なの?

■「ライフサイクルアセスメント」の考えに基づく設計思想

以前お伝えしたように、マツダの市販車として初めて本格的に市場投入されるピュア(バッテリー)EV・MX-30の生産が宇品第1工場で開始されています。すでに欧州では先行予約が開始され、日本でも年内には発表されるのではないでしょうか。

マツダ MX-30
欧州仕様のマツダMX-30

マツダの電動化戦略は、ローカルエミッションという局面においてのみCO2排出量ゼロを強調するのではなく、油田から車輪までを意味する「Well-to-Wheel」に基づいています。

これは、クルマが走行中に排出するCO2(ローカルエミッション)だけでなく、燃料の採取や精製、EVの場合は発電に伴うCO²排出量も対象とする考え方。

マツダ MX-30
MX-30は、RX-8と同様に観音開きドアを採用

また、同社では、ピュア(バッテリー)EV、フューエルセルEV、プラグインハイブリッド(ガソリン/ディーゼル)、ハイブリッド(ガソリン/ディーゼル)そして純ガソリン、ディーゼル車などを含めた「マルチソリューション」という考え方に基づき、10年後の2030年時点でも内燃機関を積む車両が90%を占めていると予測しています。

マツダ MX-30
リヤには「e-SKYACTIV」のロゴが入る

■Mazda2にもマイルドハイブリッド仕様を追加!?

英国マツダの発表によると、マツダはEVでもライフサイクル全体(ライフサイクルアセスメント)でCO2排出量を削減するためには、バッテリーのサイズが重要であると考えているそう。

マツダ MX-30
MX-30の前後ビュー

また、バッテリーの大きさや重量はハンドリングや俊敏性、ドライバーのクルマに対する愛着を高める上でも重要な要素となると捉えています。

本格的なピュアEVとして市販される「Mazda MX-30」は、35.5kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載され、航続距離は約124マイル(約200km)です。なお、リーフ(62kWh搭載車)はWLTCモードで458kmとアナウンスされています。

マツダ MX-30
マツダMX-30のバッテリー容量は、ライフサイクルアセスメントの考え方に基づき決定されたという

さらに、マツダは、ピュアEVのMazda MX-30だけにとどまらず、Mazda3、Mazda CX-30、Mazda2にマイルドハイブリッドシステムを標準装備し、電動化戦略の一環として2021年初頭にイギリスに導入するとアナウンスしています。

すでにMazda3、CX-30のSKYACTIV-X搭載車が発売されていて、同仕様には、24Vリチウムイオン電池が搭載され、マイルドハイブリッドシステム「M Hybrid」が組み合わされています。今回の発表では、Mazda2にも同マイルドハイブリッドシステムが搭載されると予想できます。

マツダ MX-30
MX-30のインテリア

Mazda MX-30は、先述したように、モーターと35.5kWhのリチウムイオン電池を搭載し、航続距離は約124mile(約200km)。最大6.6kWの交流充電と125Aのコンボ充電に対応した直流急速充電が装備されます(欧州仕様)。

完全電気自動車「MX-30」は、スパーク制御圧縮点火式ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」をはじめとする高効率燃焼エンジン技術の開発と共に、「適切な動力源を適切な場所に適切なタイミングで供給する」というマツダの理念の一環として、排出ガス測定のための「Well-to-Wheel」アプローチが採用されています。

マツダ MX-30
MX-30のリヤシート

EVと搭載されるバッテリーについては、ライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2排出量削減の必要性を考慮することが重要としています。LCAとは生産に必要な原材料の採取から廃棄に至るまでのライフサイクル全体の環境負荷を、Well-to-Wheelの排出量に加えて測定する手法。

マツダ MX-30
マツダ MX-30のラゲッジスペース

マツダと工学院大学が行ったLCAの研究では、小型のバッテリーを搭載したEVは、ディーゼルエンジン車に比べてライフサイクル全体でCO2排出量が少ない傾向にあることが明らかになったそう。

そのため、マツダは「MX-30」のバッテリー容量35.5kwhは、顧客の航続距離の平均をまかない、安心して使える距離であり、LCAの観点からもCO2排出量を最適にバランスさせていると判断したようです。

マツダ MX-30
MX-30のシフトレバーまわり

加えて、車両全体の軽量化を図ることで、現在の多くのEVでは実現できていないハンドリングの良さや俊敏性を目指したとしているのは、マツダらしい特徴でしょう。

マツダ MX-30
MX-30のメーターパネル

システム最高出力は145PS・最大トルクは271Nmで、FFのMX-30は、0-62mph(約0-100km/h)を9.7秒でクリア。MX-30に搭載されている新技術「e-SKYACTIV」は、リチウムイオンバッテリーとモーターに、マツダの人間本位の開発思想から生まれた技術を組み合わせたものとしています。

マツダ MX-30
MX-30のセンターディスプレイ

スムーズで静粛性に優れたシームレスなオール電化走行を実現するとともに、ドライバーの意思に素早く正確に反応するダイレクトなステアリングフィールを得ているそう。

また、床下に搭載される高電圧バッテリーのサイズは、資源採取からバッテリー廃棄までのライフサイクル全体でCO2排出量を最小限に抑えるために慎重に選定されたとしています。

(塚田勝弘)

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この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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