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■空力特性の向上によりコーナリングが上質かつしなやかに
近年のホンダ車は、サスペンションがしなやかに動くフランス車にも近い乗り味を持つモデルが主流になってきています。それに対し、ホンダの純正コンプリートカーブランド、ホンダ アクセスが手がけるModulo Xは、ドイツ車にも近いしっかりしたドライブフィール。以前、ステップワゴンのModulo Xを試乗した際にも同様の印象を抱いたのですが、今回、フリードのマイナーチェンジを受け、同様にModulo Xも独自の変更が行われたということで、試乗をして改めてキャラクターの違いを実感することができました。
●ドライバーの独りよがりにならない絶妙さ
ホンダアクセスが手がけるModulo Xは、フリードのようなコンパクトなミニバンであってもドライビングにこだわり、だからと言って一人ドライバーだけが満足するような仕上がりにはなっていません。この「ドライビングと快適さのバランス=さじ加減」のどちらが多いかで、モデルのキャラクターも変わります。これまでのモデルも含め、“ドライバーの独りよがり”になりすぎない塩梅の絶妙なところが、Modulo Xの個性であり特徴でもあるのです。はじめはもう少し分かりやすいキャラクター=「コーナリングマシンを目指しました」みたいなガチガチのガチなモデルを想像していたのですが、ステップワゴンで見方が変わり、ミニバンの役割を意識した質を高めるモデル開発が行われているんだな、と認識を改めました。
開発背景については、Modulo開発アドバイザーである土屋圭市さんの言葉をお借りしようと思います。
「ホンダ車のオーナーさんたちはハンドリングにうるさいお客さんが多いでしょ。だからノーマルでは物足りない、1ランク上のドライブフィールを持つクルマを用意して『これでどーだ!』って提案したいんだよ」と土屋さん。プロのレーシングドライバーとしてガチガチのガチなレーシングカーを操る一方で、ご自身も良質/上質なロードカーにこだわる土屋さんのさじ加減が、Modulo Xの開発に活かされているのです。
ベースモデルに対し、Modulo Xがチューニングおよび変更を手がけているのは、専用サスペンション、外観のエアロパーツおよび専用のビームライトやLEDフォグライト、アルミホイール。インテリアでは専用の本革巻ステアリングホイールやピアノブラック調インパネ、シート表皮など。Modulo Xのボディサイズは全長のみ+25mmの4290mm。操縦性がベースモデルと異なるモデルを所有する歓びが感じられ、機能性にも繋がるデザインと、視覚や感触、乗り味までを追求した上質感が得られるモデル開発が、Modulo Xの開発コンセプトです。
●空力特性が向上し、旋回姿勢への移行がスムーズに
新型ではコーナリングを強化。しかもサスペンションは結果的に変更せず、空力=エアロパーツの変更や追加によってそれが行われています。ちなみにインテリアではシート表皮が従来モデルのモカのファブリックからブラックのプライムスムース×スエード調に変更、LEDのマップランプ、ルームランプ、ラゲッジルームランプなども新採用となります。
個人の趣味として、最近のミニバンの押し出しの強いイカつい系のスタイリングは大人が乗るのに少々気が引けます。そんな私でも違和感を抱かずにスッと近づき、乗り込める愛嬌もある表情。
注目すべきは専用エアロバンパーに設けられた“実効空力デバイス”と呼ばれる3つのフィン。フロントの専用エアロバンパーの両サイドには“エアロフィン”が装着されました。これが旋回姿勢へスムーズに移行させ、なおかつホイールハウスから発生する気流の乱れを抑制します。結果、しなやかで上質なコーナリングが可能になるのです。さらにフロントエアロバンパー下面に箱形の“エアロスロープ”を設定。これが車体の下を流れる空気に速い流れを生み、直進安定性を強化するとのこと。そしてフロントエアロバンパー前端(左右)にも“エアロボトムフィン”を装着。ホイールハウス内を通る風の流れをスムーズにし、内圧を低減、サスペンションの動きを向上させ、ひいては乗り心地にも貢献しているのです。
フリード Modulo Xは1.5L +モーターに7速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせたハイブリッド、同様の1.5Lエンジンのパワー/トルクをアップさせてCVTを組み合わせたCVT(トルクコンバーター付)の2モデルをラインナップ。ベース車は昨年秋にマイナーチェンジを行いましたが、走行性能についてはCVTにステップダウンシフトが追加(ガソリンモデルのみ)されたこと以外、大きな変更はありません。
●タイヤ1〜2本分違うオン・ザ・レール感
試乗はガソリンモデルで高速道路のSAからスタート。本音を言えば、内装色は以前のモカのほうが好みでした。ただインテリアがブラックに統一&変更され、シートもサイドにスムースな素材を取り入れたので、乗り降りがし易く、おそらく摩擦に対しても素材のダメージが少なくなっているのでしょう。座面や背もたれの中央には滑りにくいスエードを採用し、立体的な形状と素材でホールド性も保たれています。
走り出して海上に架かる長い橋を通っているとき、「今日は風がないのかな」と横風に意識が向いたのは直進安定性に安心感を抱いたから。ステアリングの付け根あたりの剛性感もはっきりと感じられます。ステアリングホイールを軽く握っているだけでスムーズな巡航走行が可能でした。
インターチェンジを降りるランプウエイでスッキリとしたオン・ザ・レール感も得られました。フロントタイヤでラインを取るとリアタイヤがそれに追従し一体感が得られるのです。実はこれは郊外のワインディング路を走るような速度域でも「ベース車はタイヤもう1本分くらい外に膨らもうとしなかったっけ? エアロってこんな速度でも働くものなのかな?」と思いながら、ステアリング操作とボディが一体となって走るModulo Xのステアリングを一瞬見つめたくらいです。
ハンドリングは、これが当たり前だったのではと思うほど。足回りが「どうだ、どうだ」と主張するわけではなく自然なので、これがフリードそのもののデフォルトセットなのではないか、と思ったくらいです。ステアリングフィールもほどほどに重めでボディはカッチリとした印象が強まり、ボディ全体の印象と足下の剛性が手元に上質な印象とともに伝わります。ちなみにタイヤは標準モデルと同じダンロップのエナジーセーバー。タイヤサイズも車高も変わりない。こういうところも親近感を抱くところだと思いませんか?