ハイト系ワゴンの「お約束」は必須!? 日産ルークスに見る軽自動車のマーケティングを考える

●ベーシックでシンプルな「標準車」と、上質で迫力の「カスタム」という「お約束」

緊急事態宣言解除後も自粛が続く中、日産自動車は発表間もない軽のスーパーハイトワゴン「ルークス」に関するオンライン・プレゼンテーションを2週に渡って実施しました。そのうち、5月25日に行われた2回目はデザインとマーケティングがテーマでした。

ルークスのデザインについては、以前本サイトでデザイナー・インタビューを掲載しましたので、今回はマーケティングについて考えてみます。

ルークス・メイン
ハイウェイスターは日産独自のVモーショングリルで迫力顔に

ルークスに限定した話ではありませんが、ユーザーの軽自動車に対する動向は「ファーストカー」としての所有率が年々増加、用途も「趣味やレジャー」が「買い物」に次ぐ2位にアップしています。一方、購入者層は「子育て世代(末子幼児)」が全体の24%と最多なのは想定どおりでしょう。

ただ、購入層をよく見ると、実は子供が大学生から社会人となる「子育て卒業層」も22%と意外に多くなっています。また、今回のプレゼンでは触れられませんでしたが、快適性が向上している最近の軽自動車には、登録車から乗り換える「ダウンサイザー」も多いと聞きます。

ルークス・スタンダード
スタンダードは薄いグリルで上品さと親しみを追求

そこで今回考えたいのは、そうした幅広い購入層に対し、軽のハイトワゴンあるいはスーパーハイトワゴンの「お約束」的な商品企画の是非についてです。

つまり、ベーシックでシンプルな「標準車」と、上質で迫力の「カスタム」という「お約束」です。

ルークスの場合も、小顔の外装に樹脂素材中心の内装である「スタンダード」に、Vモーション顔全開の外装に革巻きステアリングなど上質内装の「ハイウェイスター」という展開で、ターボ車の設定やアルミホイールの標準装備も後者のみです。

ただ、先のように子育て卒業層やダウンサイザーといった購入層を考えると、高い質感や余裕の走り=ドヤ顔で黒っぽいカスタムのみという「お約束」は少々疑問です。つまり、趣(おもむき)の異なる2パターンを用意するのはいいとして、そこに装備の差を設ける必要はないのでは?という疑問が生じます。

今回、プレゼンの際に質問を投げ掛けてみたところ、マーケティング担当者からは「多様な要望に応えたい」ことと同時に「低価格な商品を求めるニーズにも応える」必要があるとの回答がありました。ただ、それも2パターン各々で同じグレードを設ければ、どちらの要望にも応えられるのでは?と思われます。

ルークス・インテリア
ハイウェイスターの内装は上質な素材と濃色の内装でクールなイメージに

そもそも、軽自動車自体が窮屈な規格に縛られていて、かつスーパーハイトワゴンなど車型までカテゴライズされている中、さらに商品企画にまで「お約束」を持ち込むというのは、いささか類型的に過ぎる気がします。

何と言っても日産は軽の開発については後発組。従来の固定概念や「お約束」にとらわれない、もっと自由な商品企画、展開があってもいい気がします。いっそのこと、軽規格変更の旗振り役になってもいいくらいなのかもしれません。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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