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■環境にやさしいEVのレースなので大都市やリゾート地など公道を閉鎖した市街地コースで開催
●規定バッテリ容量は54kWhで最高出力が250kW、最高速度は280km/hを発揮
世界中でHEV、PHEV、EVなど電動車の普及が進み、特にEVは将来に向けて環境対応技術の切り札と位置付けられています。レースの世界でも、世界各地でEVのレースが行われ始め、その頂点に立つのがフォーミュラEです。
EVをパワートレインとする新しい世界選手権の「フォーミュラE」について、解説していきます。
●FE(フォーミュラE)とは
現在、世界中でHEVやPHEV、EVなどの電動車が急速に普及しています。特に電気自動車EVは、内燃機関に代わる将来の本命パワートレインと位置付けられ、世界中の自動車メーカーが開発に注力しています。
このような中、レースの世界にも電気自動車の大きな波が押し寄せています。すでに世界中で電気自動車のレースが開催され、日本でも日産リーフやテスラなどが参戦しているレースがあります。
これらの電気自動車レースの頂点に立つのが、「電気のF1」と呼ばれるフォーミュラEです。
フォーミュラEは、2014年9月に北京で10チームによる開幕戦が開催され、シリーズがスタートしました。モーターで走行する電気自動車は、排ガスやエンジン音、排気音が出ないので、レースはサーキットでなく大都市やリゾート地など公道を閉鎖した市街地コースで行われます。
すべてのレースは45分+1周のタイムレースで、順位に応じてドライバーとチームにポイントが与えられます。さらにこのポイントの他、最も使用電気エネルギー量が少なかったドライバーとチームには、ポイントが付加されます。
●環境対応を意識した特徴的な試み
ユニークなのは、「ファンブースト」です。
ファンブーストとは、SNSによる観客投票によって上位3名のドライバーに、5秒間だけ30kWの電気エネルギーが与えられる制度です。ドライバーはこのエネルギーを効果的に使って、レース中に前に出るなどの有利な戦略が使えます。
その他にも、環境対応を意識させる試みが行われています。
・100%再生可能な燃料を使用(バッテリ充電用発電機としてバイオ燃料のアルコール系を使用)
・1レース1セットのみで走るリサイクル可能なタイヤを使用
・観戦者は、公共交通機関を利用
●FEのレギュレーション
2017-2018年までの第1世代と、2018-2019年からの第2世代でレギュレーションが大幅に変更されました。
全長(5000→5160mm)/全幅(1800→1770mm)/全高(1070→1050mm)/最低重量(880→900kg)も変更されましたが、最も大きな変更はバッテリです。
第1世代の容量28kWhのバッテリでは1レース(約90km)を走りきれないため、レーシングカーを乗り換えていました。レース途中の短時間でリチウムイオン電池を交換するのは危険だからです。第2世代ではバッテリ容量が約2倍の54kWhとなったため、レース中にクルマを乗り換える必要がなくなりました。
また、最高出力が200kWから250kWに向上し、回生ブレーキ量も増大したので最高速度は225km/hから280km/hまで増大しました。
タイヤはミシュランの公式タイヤ「パイロット・スポーツEV2」を使用、コースや天候などに関係なく、この1種類のみです。
●日産の参戦
日産は電気自動車のフォーミュラカー「e.dams」で、2019年シーズン5から日本メーカーとして初めて、フォーミュラEへの参戦を始めました。
アウディやBMW、ジャガーなど11チームが参戦する中、早速2019年6月に3位、7月には優勝を果たしました。電気自動車に力を入れる日産の電動化技術の実力を証明しました。
多くのファンを熱狂させるF1の魅力のひとつは、エンジンの排気音、爆音ですが、フォーミュラEではそれがキーンというモーター音に代わります。エンジンが大好きな人にとっては、拍子抜けして受け入れられないかもしれません。
ただし欧州メーカーは、より実践的な電気自動車のフォーミュラEに主戦場を移しているようです。
(Mr.ソラン)