F1のレギュレーションとは?公平に競争するための競技規約と技術規約【自動車用語辞典:F1の技術編】

■競技規約は出場者やレース内容など、技術規定はF1マシンの構造について規定

●最近は、スピードだけでなく安全性能や環境性能についても配慮して規定

F1(フォーミュラ・ワン)は、世界各地のサーキットで年間21戦、参戦10チーム(2019年)で競う最高峰の国際自動車レースです。最先端技術を結集したクルマのレースですが、何でもありではなく厳しいレギュレーション(規約)で規制されたレースです。

基本的なレギュレーションや対応技術について、解説していきます。

●F1のレギュレーションとは

モータースポーツは、すべてFIA(国際自動車連盟)が統括し、各国はその傘下にあるASN(各国の管理団体)が統括しています。日本のASNは、JAF(日本自動車連盟)が務めており、国内のモータースポーツをすべて運営しています。

F1は、自動車レースの中で最高峰のカテゴリーですが、公平に競争するために厳しいレギュレーションがあります。レギュレーションには、スポーティングレギュレーション(競技規約)とテクニカルレギュレーション(技術規約)があり、FIAが毎年シーズン開始前に改訂して内容を発行します。

スポーティングレギュレーションには、主催者と出場者の規定やレース内容の規定などが、テクニカルレギュレーションにはF1マシンの構造に関する詳細な規則が記述されています。

以下に、主要なレギュレーション(2019年)の概要について紹介します。

F1マシン
F1マシン

●パワーユニット

パワーユニットは、1.6L V6 ターボエンジンにERS(エネルギー回収システム)を組み合わせます。エンジンは、排気量だけでなく各部のサイズや材質、最高回転数(15,000rpm)や直噴噴射システムまで詳細に規定されています。

現在F1エンジンを供給しているのは、ホンダ、メルセデス、フェラーリ、ルノーの4メーカーです。

ERSは、MGU-K(運動エネルギー回生装置)とMGU-H(排気熱回生装置)で構成されています。回生量には制限がかけられ、1周あたりの使用量も制限されています。

1レースで使用できるエンジンの燃料量110kg、瞬間的な燃料流量も100kg/hに制限されているので、できるだけ少ない燃料で高出力を実現することが要求されます。エンジンとMGU-Kのモーターの合計出力は、1000PSに近いレベルです。

●ギヤボックス

ギヤボックスは、パドルシフトを使ったセミオートマチックトランスミッションです。内部構造はMTと同じで、8速とリバース1速に規定されています。変速時のクラッチ操作は不要です。

ドライバーは、同じギヤボックスを連続6戦使用しないといけません。故障して交換が必要になったら、ペナルティが発生します。

●重量

マシンとドライバーを含めた最低重量は743kgです。当然ながら軽い方が有利なので、この最低重量に限りなく近い重量に設定します。

通常は最低重量を下回る軽量化を進めた後に、車両バランスを再チューニングしながら最低重量になるように設定します。

●タイヤ

タイヤは、FIAが指名した公式サプライヤのピレリより供給されます。

5種類のコンパウンド(ゴムの柔らかさなどのゴム質)のドライタイヤと、2種類の雨天用インターミディアムタイヤおよびウェットタイヤが供給されます。

1回のレースで使えるドライタイヤは13セットです。コンパウンドは、まずピレリが1セットずつ3種類(合計3セット)を指定します。残りの10セットについては、ドライバーが自由に3種類のコンパウンドから選ぶことができます。

●レースの長さ

レースは、世界各地のサーキット(日本は鈴鹿サーキット)で開催されるので、全長の長さはさまざまです。各サーキットで走行距離305kmを超える最小周回数が設定され、周回数以外にもレースは最大2時間まで、中断がある場合はその時間を含めて最大4時間までと規定されています。


F1マシンは、サーキットを速く走ることだけを考えて設計された、走りに特化したクルマの象徴的な存在です。

しかし、1994年のアイルトン・セナの死亡事故をきっかけに、スピードを抑える方向でレギュレーションが強化されています。スピードだけでなく、安全性能や環境性能についても配慮する方向に向かっています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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