■クロスオーバーSUVの充実がトレンド。ヤリスクロスの登場でトヨタSUVのラインナップは盤石の体制になる
乗用車の基本はクロスオーバーSUVといっても過言ではない時代へ向かっているのを実感します。
トヨタがハリアーやヤリスクロスといったクロスオーバーSUVのフルモデルチェンジやニューモデルの登場を発表するのと同タイミングで、グランドツーリングセダンであるレクサスGSの生産終了を発表したのは偶然ではないはずです。多くのユーザーがSUVに価値を認める時代になっているといえます。
ですから、トヨタのコンパクトカーであるヤリスのアーキテクチャを使ったクロスオーバーSUV「ヤリスクロス」が生まれるのは自然な流れといえますが、そのボディサイズを見るとヤリスクロスの登場は必然であったと感じられます。
国内向けのトヨタの現行+発売予定SUVの全長を並べてみましょう。
ライズ:3995mm
ヤリスクロス:4180mm
C-HR:4385mm
RAV4:4610mm
新型ハリアー:4740mm
全長だけがクラス分けの基準というわけではありませんが、欧州で多く使われるセグメント分けでは全長がひとつの基準となっていますから、こうして比べる意味はあるはずです。
そして見比べてみるとわかるのですが、以前はライズとC-HRの間が妙に広がっていたのです。ヤリスクロスが登場したことで、15~20cmのステップでクロスオーバーSUVのラインナップが並ぶことになります。ヤリスクロスの登場により、ぽっかりと抜けていた選択肢が現われたといえます。まさに市場が求めていたサイズのSUVが登場するというわけです。
ヤリスクロスの登場により、ライズやC-HRの市場を喰ってしまうという指摘もありますが、そうとはいえないことも、この全長差は示しています。たしかに、まったくカニバリ(「食いあい」の意)しないとはいいませんが、ライズでは物足りない、C-HRでは大きすぎると感じているユーザーが飛びつくサイズは、カニバリというよりもSUV市場の拡大につながると考える方が自然でしょう。
そして、ヤリスクロスは意外にオフロード性能も期待できるディメンションであることがアナウンスされています。欧州向けのニュースリリースでは、ヤリスクロスの最低地上高はヤリスの30mm高になると発表されています。ヤリスハイブリッドの最低地上高は145mm(FF)、160mm(4WD)ですから、単純に30mmを足すと175~190mmのロードクリアランスを確保していることになります。都市型SUVでは180mmも確保しておけば十分というトレンドですから、ヤリスクロスの走破性は平均的なレベルを満たしていると予想されるのです。
(自動車コラムニスト・山本晋也)