80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第27回は、大衆車メーカーとして初めて挑んだ、個性的な上級リアルスポーツ・クーペに太鼓判です。
■先達に準じたシルエット
初代と2代目のシロッコでスポーティな一面を示したVWは、スーパーチャージャーの採用など、より高性能かつ上級なスポーツブランドイメージの拡充を模索。同社初のリアルスポーツとして、1988年に登場したのがコラードです。
基本的なシルエットは、ジウジアーロによる初代シロッコのイメージを強く残しますが、ベルトラインのS字カーブが強調されることで、よりスポーティかつ抑揚のある上質なボディを表現します。
キャビンはコンパクトですが、ブラックアウトされたBピラーにより広さを感じさせるサイドウインドウが特徴。太い台形のリアピラーは、ハッチのカットラインを回り込ませることで重さを払拭。これもまた初代シロッコに準じた表現です。
強い張りを持ったサイドボディには、ピークを示すキャラクターラインが前後に走り、シンプルな面に表情を提示。また、バンパーの高さに合わせた細いプロテクターもシンプルですが、サイド面の引き締め役をしっかりこなします。
ジェッタに似た端正なフロントグリルと、長方形のランプで構成されたリアパネルは、リアルスポーツでありながら、あくまでもゴルフをベースとしたVW車であることを明快に示します。その上で、大型のコーナーランプなどがスペシャルな雰囲気を演出。
■実用性とスポーティの融合
インテリアは、ボディ同様スポーティさとVWらしい機能性がミックスされたインパネが特徴的です。そこに、立体的なドア内張りやシートなども含め、上級車らしい丁寧な作り込みのよさが見られます。
スタイリングは、2代目シロッコに引き続きVWのデザイン・センターで行われました。ベースとなった2代目ゴルフの仕事を見れば、当時の社内デザイナーがいかに力を付けてきたかが分かります。
リアルスポーツとして、たとえばリトラクタブルランプを用いた、より低く広いボディにしなかったことには賛否があったようです。しかし、要所に量産車的な表情を持たせたからこそ、この個性的な上級スポーツカーになり得たと筆者は考えます。
●主要諸元 VW コラード G60 (5MT)
全長4050mm×全幅1685mm×全高1330mm
車両重量 1190kg
ホイールベース 2470mm
エンジン 1780cc 直列4気筒OHC Sチャージャー
出力 160ps/5600rpm 22.9kg-m/4000rpm
(すぎもと たかよし)