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●大規模空港は移動距離が長いことが問題点
ターミナルビルなどの施設が大きい羽田や成田などの国際空港は、飛行機に乗るまでの移動距離が長く、行き交う人で混み合っているのが常です。そんな中で、旅行の荷物を持っての移動はとても大変でもあります。特に、高齢者や障がい者、子供連れの旅行客などの中には、移動することが困難な方々もいるでしょう。
これら実験は、そういった方々に、大規模空港内でスムーズかつ快適な移動を提供することが目的です。近年、車いすの自動運転化は、そういった車やバス、タクシーなど既存の交通機関を降りて、飛行機に乗るまでの「ラストワンマイル」、約1km圏内の新しい移動手段として注目を浴びています。
また、一般道と違い、クルマや自転車など他の車両との事故やトラブルが起きにくいのも導入を進めやすい要件のひとつだと言えます。
●空港だけでなく、様々な施設での活用も期待される
もちろん、今までも空港では車いすは用意されていました。ですが、従来の手押しタイプの場合は、車両を押すなど利用者を介助するスタッフや、使用済み車両の回収などに人員やコストがかかります。航空会社では、近年の人手不足や人的コスト削減も見据えて、自動運転車いすの導入を目指しているという背景もあります。
ちなみに、前述のWHILLでは、羽田空港以外でも、北米や欧州など全5カ所の国際空港で同様の実験を行っており、2月には英航空会社ブリティッシュ・エアウェイズがニューヨークのジョン・F・ケネディ空港で試験導入を開始。高齢者や障がいを持つ方などの空港内での移動に関する問題も、今やグローバル化しているようです。
さらに、同社では将来的に病院やテーマパークなど、他の施設での利用も視野に入れています。一方のZMPのRakuRoも、活用先を空港だけに限定していません。ホテルやショッピングセンターなど、やはり様々な施設での利用を視野に入れており、2020年5月より、受注先の企業などへの出荷が開始されます。
空港はもちろん、様々な施設で自走する車いすの姿を目にする機会が増えるのは、そう遠い将来ではなさそうです。
(文:平塚直樹/写真:ZMP、平塚直樹)