目次
■MBDの目的は、試験や検証実験を減らして開発期間を短縮すること
●システムや機能部品の現象を数理モデルで表してシミュレーションを実施
自動車メーカーは、試作車数を減らして開発期間を短縮するため、多様な制御にモデルベース開発(MBD:Model Base Development)を積極的に活用しています。
制御開発の中核となっているモデルベース開発について、解説していきます。
●従来のシステム開発
クルマには、さまざまな部品やシステムを作動させるために100個前後のマイコン(ECU)が搭載されています。センサーから得られた情報をもとに、マイコンの制御プログラムによってさまざまなシステムを作動させます。
したがって、制御プログラムの仕様書(テキストやフローチャート)の量は、クルマ全体で膨大となります。
従来の制御開発では、まず仕様書に基づいてソフトウエア設計(基本設計から詳細設計)を行い、プログラムを作成します。
その後、単体テストやモジュールテスト、総合テストが行われ、さらに実機を使って仕様書通りに作動するのかを検証していました。
この検証は、ハードウエアに合わせて何回もやり直すので多大な工数と時間がかかります。また、それぞれの工程の検証は、人が行うためエラーや漏れが出る、個人の技量に依存するという問題が起こります。
●モデルベース開発とは
モデルベース開発とは、実際にクルマで起こる各機能部品の現象を数理モデルで表して、コンピューターでシミュレーションを繰り返して、制御やシステムを作り込む開発手法です。
従来の開発方法に対して、大幅な開発期間の短縮とソフトウエアの品質を向上させることができます。
紙の仕様書の代わりに制御の流れを仕様モデルで表現して、システム設計の十分な検証を行った上でソフトウエア設計に移り、そこでも検証を繰り返すことで完成度を高めます。その後、自動生成機能によってソースプログラムを作成して実機に書き込み、制御対象のシステムと接続して検証します。
最終的には、システム全体を実車で検証してプログラムを完成させます。
●モデルベース開発のメリット
モデルベース開発のメリットは、以下の通りです。
・仕様モデルは物理現象を数式で表現するため、紙の仕様書に比べて情報が正確に伝わり、解釈の違いによる誤解が生じません。また、シミュレーションに使うことができるので、仕様検討の段階で、制御の流れの妥当性を確認できます。
・基本設計や詳細設計などのソフトウエア設計でも、シミュレーションによる検証を繰り返すことでソフトウエアの信頼性を高めることができます。
・ソフトウエア設計によって出来上がったモデルは、自動でコーディング(ソースコードに変換)してハードウエアに実装します。自動生成なので、実装担当者のスキルに依存せず、ミスも発生しづらくなります。
・ソフトウエアの検査に必要な環境をモデル化すれば、実機でなくても検査ができます。実機でないとソフトウエアの検査ができない従来方法に対して、早い時期に検査ができます。これにより、大幅な開発期間の短縮と開発コストの低減ができます。
多種多様なユーザーや市場の要望に応えるため、クルマの開発サイクルの短期化が求められています。そのような中で自動車メーカーは、制御開発の工数と時間が大幅に短縮できるモデルベース開発に積極的に取り組んでいます。
モデルベース開発の導入によって、開発工数が半減したという報告もあり、今後のさらなる改良と展開に期待するところ大です。
(Mr.ソラン)